本論文は、ホルモン補充周期において、黄体ホルモン濃度が低下した場合は追加投与すればOKであることを示しています。
Hum Reprod 2021; 36: 1552(スペイン)doi: 10.1093/humrep/deab031
要約:2018〜2020年にホルモン補充周期(P製剤は経膣製剤200mg8時間毎)でPGT-A正常胚移植をする453名574周期を対象に、移植当日のP4値を測定し、P4>10.6はそのまま移植しました(グループ1)。P4<10.6の場合はP 25mgを筋注し、もう一度P4採血を行い、P4>10.6になれば移植し(連日P 25mg筋注投与、グループ2)、P4<10.6の場合は胚移植をキャンセルしました。最終的に、グループ1342周期、グループ2 220周期の妊娠成績を前方視的に検討しました。結果は下記の通り(全ての項目で有意差なし)。
グループ1 グループ2
342周期 220周期
妊娠率 62.3% 64.5%
臨床妊娠率 56.4% 59.1%
妊娠継続率 49.4% 53.6%
出産率 49.1% 52.3%
流産率 12.4% 10.8%
化学流産率 5.9% 5.5%
解説:着床に必要な黄体ホルモン(P4)濃度には様々な見解があり、一致したコンセンサスは得られていません。また、ホルモン補充周期移植において、不足したP4を補充することで妊娠成績が改善できるか否かについての前方視的検討はこれまでありませんでした。本論文は、黄体ホルモン低下の場合に、黄体ホルモン製剤を追加投与すれば妊娠成績は問題ないことを示しています。
黄体ホルモン値(P4)については、下記の記事を参照してください。
2018.9.12「新鮮胚移植における理想的なP4値は?」新鮮胚移植でのOPU+2〜3日目のP4値は18.8〜31.4ng/mL、OPU+5のP4値は47.2〜78.6ng/mLが良い
2018.5.18「一般妊娠治療における黄体期のE2・P4の最小値は?」タイミングや人工授精の際の妊娠可能なP4値は5.6 ng/mL以上
2016.7.5「☆P4が高いと妊娠率が低下し流産率が増加する!?」ホルモン補充周期での凍結胚盤胞移植日のP4値は<20 ng/mLが良い
2015.9.4「☆黄体ホルモン濃度はいくつあれば良い?」着床との関連が示唆されているNCSは、P4値4.0ng/mL以上で出現