成長ホルモンの有効性:メタアナリシス | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、卵巣反応不良の方に成長ホルモン(GH)を投与した場合の有効性に関するメタアナリシスです。

 

Fertil Steril 2020; 114: 97(スペイン、イタリア、ブラジル)doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.03.007

Fertil Steril 2020; 114: 63(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.04.012

要約:2019年までに発表された、卵巣反応不良の方に成長ホルモン(GH)を投与した場合の有効性に関するランダム化試験12論文のメタアナリシスを実施しました(GH群586名、対照群553名)。対照群と比べGH群で、採卵数1.62個、成熟卵数2.06個、移植可能胚数0.76個、臨床妊娠率1.34倍と有意に高くなりましたが、出産率、流産率には有意差を認めませんでした。

 

解説:卵巣反応不良の方に成長ホルモン(GH)を投与した場合の有効性については賛否両論があり、一定の見解が得られていません。成長ホルモン(GH)は卵胞形成から卵成熟、胚発生に関与するとされています。2010年のCochrane Database Reviewでは9論文のメタアナリシスを実施し、GH投与により出産率が5.39倍、臨床妊娠率が3.28倍に有意に改善することが示されました。本論文は、7論文が追加され、不適当だった4論文が除外され合計12論文でのメタアナリシスです。

 

コメントでは、本論文で用いられたのは、卵巣反応不良の定義であるボローニャクライテリアが発表された2012年以降の論文がほとんど(11論文)であることを指摘し、均一な集団での検討であるため、信頼性が高いものと評価しています。しかし、費用対効果なども含め今後の検討が必要です。

 

下記の記事を参照してください。

2020.1.13「臨床関係の付加的治療について

2019.1.4「成長ホルモン(GH)による改善効果は?

2017.12.19「卵巣反応不良の方へ成長ホルモン(GH)は?

2016.4.13「成長ホルモン(GH)の効果は?

2012.11.19「卵巣反応不良の定義:ボローニャ•クライテリア