AMH値により人工授精の妊娠率は変わらない | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、35歳未満ではAMH値により人工授精の妊娠率は変わらないことを示しています。

 

Fertil Steril 2020; 113: 788(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.12.006

Fertil Steril 2020; 113: 758(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.01.030

要約:2001〜2018年に人工授精を実施した35歳未満の方3019名を対象に、AMH<1.0(370名)と1.0以上(2649名)の2群間の妊娠成績を後方視的に比較しました。なお、卵管は子宮卵管造影検査で両側とも開通しており卵管水腫がない方のみとし、かつ調整後の運動精子数が1000万以上を対象とし、子宮内膜症の方を除外しました。卵巣刺激には、クロミッド、レトロゾール、HMGを単独あるいは組み合わせで使用し、少なくとも1つの卵胞が17mm以上になった時点でトリガーとしてhCGを用い、12時間後と36時間後の2回人工授精を実施しました。妊娠判定は、hCG注射後16日目にhCG採血により判定しました(>2IU/Lを陽性と判定)。結果は下記の通り。

 

AMH        <1.0   1.0=<   P

平均AMH      0.57   5.76  <0.001

平均BMI      25.5   26.2   NS

調整後運動精子数  5550万 5440万  NS

初回妊娠判定陽性率 23.0%  24.7%  NS

初回化学流産率   16.5%  17.9%  NS

初回流産率      5.9%  5.7%  NS

初回出産率     17.3%  16.8%  NS

NS=有意差なし

 

また、累積妊娠率および累積出産率も2群間に有意差を認めませんでした。

   

解説:ART治療(体外受精、顕微授精)では、AMH値により卵巣の反応性が異なるものの妊娠成績は変わらないことが知られています。しかし、これまでAMH値による人工授精の妊娠率の違いについての報告はありませんでした。本論文は、35歳未満ではAMH値により人工授精の妊娠率は変わらないことを示しています。

 

コメントでは、後方視的検討であること、卵巣刺激が混在していることについての問題点を指摘しつつ、本論文を高く評価しています。その上で、(ARTと同様に)人工授精の場合にも国家レベルのデータベースを作る時期にきているとしています。