本論文は、PGTで採取する細胞数は妊娠結果に影響を与えないことを示しています。
Hum Reprod 2025; 40: 434(中国)doi: 10.1093/humrep/deaf001
要約:2014〜2024年に北京大学第三病院で単一遺伝子疾患のためPGT-Mを実施し単一胚盤胞移植を行った、605組850周期の妊娠成績を、採取した細胞数別に後方視的に検討しました。採取した細胞数で4群に分類した結果は下記の通り。
採取細胞数 1~5個 6~10個 11~15個 16個以上 P値
234周期 328周期 192周期 96周期
臨床妊娠率 53.4% 55.8% 47.9% 50.0% NS
出産率 42.7% 49.7% 43.2% 43.8% NS
流産率 13.6% 9.3% 9.8% 12.5% NS
NS=有意差なし
解説:PGTでは、胚盤胞から5~8個のTE細胞(胎盤になる細胞)を採取し分析します。細胞数が不十分の場合には検査が不成功に終わる可能性があり、逆に細胞数が多すぎると着床率が低下する可能性があります。これまでの報告では、賛否両論があり決定的な結論は得られていませんが、ほとんどの研究でPGT-Aが対象となっています。PGT-Aの患者さんは、高齢、反復着床不全、男性因子など、胚発育異常につながる病態が含まれているため、PGTで採取する細胞数による影響を正確に反映できていない可能性があります。このような背景の元に本論文のPGT-Mでの検討が行われ、PGTで採取する細胞数は妊娠結果に影響を与えないことを示しています。もちろん、胚盤胞へのダメージを最小限に抑えることと、PGTにおける最大の検出率を達成することのバランスをとることが重要です。