本論文は、Mayer-Rokitansky-Kuster-Hauser(ロキタンスキー)症候群97名に対して非侵襲性腟拡張療法を実施した報告です。
Fertil Steril 2025; 123: 364(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.09.048
Fertil Steril 2025; 123: 251(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.12.004
要約:2020〜2023年に北京協和医学院病院でロキタンスキー症候群に非侵襲性腟拡張術を実施した97名を対象に、1、3、6、12ヶ月後に膣長を測定し、毎月オンラインで拡張頻度や性生活について質問票調査を行いました。なお、腟拡張術は、実地指導と補足ビデオ(オンラインで利用可能)により学習して頂き、患者さん自らで膣拡張を行いました。性交経験のある場合には女性性機能指数(FSFI)23.45以上を有効とし、性交経験のない場合には膣長6cm以上を有効と判断しました。75名(77%)が有効で、有効に達するまでの日数は91日(71~130日)、拡張前1.0cm(1.0–3.0)だった膣長は、調査終了時に7.0cm(6.0–8.0)に増加しました。性交経験ありの89%(40/45)が有効で、性交経験なしの67%(35/52)が有効でした。また、性交経験なし(7.0cm)よりも性交経験あり(8.0cm)で膣長が有意に長くなっていました。膣長とFSFIスコアの間には弱い正の相関を認めました。無効だった22名の膣長は5.0cmで、性交経験なしの9名は治療の意欲がなく拡張を断念する一方で、4名は膣の外観を「正常」にするため手術を選択しました。ロジスティック回帰分析による腟拡張術の有効性に有意に寄与する因子は、性交パートナーの存在、腟拡張術中の性交、性交パートナーのサポートでした。また、合併症は、腟痛63%、膣出血49%、肛門痛28%、尿路感染症21%、腹部膨満感15%、尿失禁7.4%であり、ほとんどが拡張開始時に発生しました。なお、尿道拡張や膣脱出はありませんでした。
解説:ロキタンスキー症候群は、ミュラー管の発育不全に起因する女性生殖器の疾患で、4,500~5,000人に1人が罹患しています。ロキタンスキー症候群では腟無形成が起こりますが、非侵襲性腟拡張療法(フランク法)は、高い成功率、低い合併症リスク、高い費用対効果から、ロキタンスキーの膣形成の第一選択として推奨されています。本論文は、ロキタンスキー症候群97名に対して非侵襲性腟拡張療法を検討したものであり、77%が有効であったことを示しています。
コメントでは、腟無形成症の女性にとって妊孕性は重要な懸案事項であるとし、将来の子宮移植を含めカウンセリングを行うべきであるとしています。