子宮鏡下子宮内癒着剥離術後の妊娠予後 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、子宮鏡下子宮内癒着剥離術後の妊娠予後についての検討です。

 

Hum Reprod 2018; 33: 1847(オーストラリア)

要約:2000〜2014年にオーストラリアの二つの大学病院で子宮鏡下子宮内癒着剥離術を実施した154名を対象に、妊娠予後を後方視的に検討しました。妊娠を目指した124名の検討期間1〜14年での累積妊娠率79.0%(98/124)、累積出産率63.7%(79/124)、累積流産率23.4%(29/124)でした。79名から93人の赤ちゃんが誕生しました。また、出産時情報が明らかであった85名のうち、胎盤形成不全17.6%(15/85)、産後子宮摘出術実施4.7%(4/85)、未熟児29.4%(25/85)でした。

 

解説:子宮内癒着剥離術後の妊娠予後は不良であると考えれれていますが、詳細は明らかにされていませんでした。本論文は、子宮鏡下子宮内癒着剥離術後の妊娠予後について検討した最大規模の報告であり、妊娠や出産に至るものの、胎盤形成不全に伴う合併症が高率に生じることを示しています。従って、ハイリスク妊娠として捉えるべきであるとしています。

 

「子宮内癒着症=アッシャーマン症候群」の治療については、下記の記事を参照してください。

2018.6.13「ヒト骨髄由来幹細胞による卵巣機能の回復:マウスモデル

2016.12.12「アッシャーマン症候群への新たな治療:月経血由来の間質細胞移植

2016.5.11「アッシャーマン症候群や子宮内膜萎縮への新たな治療

2015.12.22「骨髄CD133細胞移植によるアッシャーマン症候群の新たな治療

2013.7.29「骨髄中に卵子の元の細胞があります♡