Q&A1994 ☆子宮内に貯留した液体の見極め | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 1人目を帝王切開で出産し、2人目の治療を始めたところ子宮内に液体が溜まっているとのことで、帝王切開瘢痕部症候群とわかりました。しかし、手術後も状態が変わらず、この春に転院し先生にご相談したところ、子宮内に溜まるのは時期によるとの説明を受けました。いつも排卵前にチェックしていましたが、その時期は溜まるものだと。これまでそのような情報はどの病院でも聞いたことがなくビックリしてしました。同じように悩んでいる方も多いと思います。もう一度仕組みを教えていただけたら嬉しいです。やはり、手術はした方が良かったのでしょうか。

おかげさまで、その後すぐに移植でき妊娠できました。先生に出会えて本当に良かったです。
 

A 帝王切開は、妊娠中の子宮体部の下を横に切開します。妊娠前の子宮では子宮頸部の上部に相当します。さて、本来同部位は、最も細くなっていて、いわば子宮外部と内部のバリケードになっている部分です。帝王切開により、この部分が緩くなってしまうと、子宮頸管から産生される頸管粘液が子宮体部に逆流します。

 

排卵前から排卵までは頸管粘液が多くなりますが、通常はバリケードが機能しているため、頸管粘液は膣内のみに流出します。しかし、帝王切開によりこのバリケードが緩くなっていると、頸管粘液が子宮体部に逆流します。これは、子宮内に貯留した液体をスポイトで採取し、粘性を見れば一目瞭然です(いわゆる伸びおり状態)。子宮内に貯留した液体が頸管粘液でしたら、排卵後あるいは黄体ホルモン使用後には間違いなく消失します。一方、卵管から流れてきた液体や炎症性の液体には粘性がありませんので、これで鑑別ができます。子宮内に貯留した液体が頸管粘液でしたら、帝王切開瘢痕部症候群のオペは不要です。

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。