米国生殖医学会(ASRM)の機関紙であるFertil Sterilに、精索静脈瘤の特集が組まれましたので、2回に分けて全4論文をご紹介します。
①Fertil Steril 2017; 108: 364(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.06.036.
要約:精索静脈瘤は、陰嚢の蔓状静脈叢が拡張したものであり、以下の3つのグレードに分類されます。
グレード1:立位+腹圧負荷+触診で確認できるもの
グレード2:立位+触診で確認できるもの
グレード3:視診で確認できるもの
精索静脈瘤の頻度は、30年以上前から変わらず、健常男性のおよそ15%にみられます。一方で、第一子男性不妊の男性の45%に、第二子男性不妊の男性の80%に認められます。精索静脈瘤の98.7%は左側にのみ生じ、右側のみは0.2%、両側が1.1%です。精索静脈瘤が男性不妊をもたらすメカニズムについては、次の3つが考えられています。
1 酸化ストレスの増加による精子形成障害及びDNA断片化
2 精巣還流障害による血流低下
3 熱ストレスによるDNA修復能低下
②Fertil Steril 2017; 108: 378(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.07.020.
要約:精索静脈瘤の手術適応は、米国泌尿器協会(AUA)と米国生殖医学会(ASRM)から、夫婦が不妊症であること、女性は治療可能な不妊症であること、男性は少なくとも1項目以上の精液検査異常値があることとされています。手術方法には大きく分けて以下の3つがあり、それぞれ長所と短所がありますが、術式による治療成績には有意差はありません。したがって、術者の得意とするもの、あるいは患者さんのニーズに合わせて行うのが良いでしょう。
1 顕微鏡低位結紮術
2 腹腔鏡下結紮術
3 経皮的塞栓術
解説:①②は教科書的な内容の論文です。精索静脈瘤があっても何ら問題のない男性もおられますが、不妊症の方では治療(手術)を考慮しましょうということになります。治療に関しては、次回の記事でご紹介いたします。
下記の記事を参照してください。
2017.1.14「☆男性不妊の原因」
2016.11.26「精索静脈瘤は手術がお勧め」
2015.1.12「精索静脈瘤の治療指針:ASRMの見解」