精索静脈瘤は手術がお勧め | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、精索静脈瘤がある男性は、人工授精、体外受精、顕微授精いずれを行う場合でも、手術が推奨されることをメタアナリシスにより示しています。

 

Fertil Steril 2016; 106: 1338(米国)

要約:男性不妊での妊娠治療において、精索静脈瘤のオペの有無と妊娠治療成績との関係を述べた7論文1241名が抽出され、メタアナリシスを実施しました。なお、2論文ではグレード3の精索静脈瘤のみを手術対象としており、5論文では全てのグレードの精索静脈瘤を手術対象としていました。手術を実施しなかった場合と比べ、手術を実施した場合の治療成績をオッズ比として表示した結果は下記の通り(オッズ比が高いほど手術が有効であることを示す)。

 

妊娠率    オッズ比   有意差

A 乏精子症  1.70    なし

B 無精子症  2.34    あり(P=0.04)

A+B     1.76    あり(P=0.01)

 

生産率    オッズ比   有意差

A 乏精子症  1.70    あり(P=0.04)

B 無精子症  2.20    なし

A+B     1.76    あり(P=0.002)

 

また、人工授精の生産率のオッズ比は8.36であり、無精子症の精子回収率のオッズ比は2.51と有意な改善が認められました。

 

解説:男性不妊は不妊症の約半数に認められ、そのうちおよそ35%の方に精索静脈瘤が見つかります。精索静脈瘤の手術を行うと、精液所見が改善し自然妊娠の可能性が高くなることは知られていますが、人工授精、体外受精、顕微授精の際にも手術が有効なのかについてはデータが不十分でした。本論文は、メタアナリシスにより、これらの場合にも精索静脈瘤の手術が有効であることを示しています。

 

精索静脈瘤は、その程度により3段階のグレードに分けられ、グレード3が最も重症です。精索静脈瘤は、血流障害により精巣温度の上昇を引き起こし、精巣内の活性酸素の増加DNA断片化を増やし、造精機能に悪影響をおよぼすと考えられています。精索静脈瘤の手術により、これらの悪循環が改善され、精巣機能が改善するのではないかとされています。

 

なかなか結果が出ない方は、一度男性外来を受診され、精索静脈瘤の有無を確認し、もし精索静脈瘤があったなら手術を行うこともぜひ検討して欲しいと思います。