精索静脈瘤の治療指針:ASRMの見解 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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精索静脈瘤の治療指針について、米国生殖医学会(ASRM)の見解が発表されましたので、ご紹介致します。

Fertil Steril 2014; 102: 1556(ASRM)
要約:精索静脈瘤は触診でわかるもののみが不妊との関連を認めます。思春期の男性や挙児希望のない若い男性では、精巣のサイズが小さい場合にすぐの治療を考えます。治療には、手術と塞栓術があり、どちらもリスクの少ない手技です。以前から行われていた高位結紮術と比べ、顕微鏡下低位結紮術は再発と合併症のリスクが少ない手技です。多くの研究では術後3~6ヶ月で精液所見の改善が認められます。以上のことから、下記を推奨します。
1 触診でわかる精索静脈瘤があり、精液所見が悪く、女性因子(年齢、AMHも含む)がないか軽度の場合には、精索静脈瘤の治療が勧められる。
2 精索静脈瘤の有無にかかわらず、女性因子(年齢、AMHも含む)のために体外受精や顕微授精が必要な場合には、体外受精や顕微授精を優先する。
3 泌尿器科医の経験と熟練に基づき、男女双方の不妊原因を正しく評価した上で、精索静脈瘤の治療の可否を考える。

解説:精索静脈瘤は精索静脈が拡張し、精巣の温度が上昇するため、精子形成に悪影響をきたすとされる疾患で、健常男性の15%不妊男性の40%に認められます。精索静脈瘤のある男性の多くは妊孕性(妊娠する力)の低下がありますが、不妊男性に最もみられる不妊原因でもあります。しかし、どのようなメカニズムで精子形成を障害するのかについては明らかではありません。様々な論文が発表されており、本論文は、現在までの情報からASRMの見解をまとめたものです。なお、この見解は数年に一度見直されています。