Q&A1592 採卵率低下&多核受精増加 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 26歳、AMH 8.64、卵管、ホルモン値、抗精子抗体、フーナー全て異常所見なし、精液検査も問題なし。タイミング6周期、クロミッド+人工授精2周期後、体外受精に踏み切りました。

アンタゴニスト法
day3-6 ゴナールエフ150単位
day7-10 hMG75単位
day11ブセレキュア2回使用、E2:2825
day12ボルタレン2回使用
day13に採卵、卵胞数は23個でしたが空胞や未熟があり、採卵数は12個でした。うち1個は変性で11個の成熟卵子を体外受精6個、顕微授精5個、全て受精はしましたが、体外受精3個と顕微授精1個で多核3PNと5PNの異常受精でした。正常受精(体外受精3個、顕微授精4個)を培養し、体外受精での初期胚グレード1を2つ凍結、残り5個(凍結可能なグレード)を胚盤胞まで培養しましたが成長せず。今後初期胚の移植をする予定ですが、想像以上に結果が悪く質問させて頂きます。


①卵胞23個に対し採卵数12個は誘発法が合ってなかったのでしょうか。次回、採卵時はどのような誘発法がいいのでしょうか。
②異常受精が多いように感じます。体外受精での多核は多精子受精、顕微授精では極体放出不全や前核形成異常が多いようですが、胚盤胞まで育てたものもなかったので、そもそも卵子の質が良くないのでしょうか。
③初期胚でグレードが良く凍結できたものは体外受精での受精卵でした。次回採卵時は、1〜2個を顕微授精、他は体外受精でいいかもしれないと医師から説明がありましたが、異常受精も多かった為不安です。培精する際、精子の量を減らすことも可能であると培養土から提案がありましたが、どのような培精方法が適当でしょうか。

 

A おそらく、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)ではないかと思います。

①PCOSの場合には卵子回収率が減り、未熟卵が多くなりますので、この程度の採卵率(12/23)が普通だと思います。私なら、もう少し強い刺激で行いつつ、OHSSを予防します。すなわち、フェマーラ1Tx2日+HMG富士150単位連日投与+ダブルトリガー、トリガー後はカバサール+採卵翌日からフェマーラ1Tx2日+バイアスピリン1Tx7日です。

②確かに異常受精(多核)が多いです。このような場合には、抗セントロメア抗体が見つかることが少なくありません。まず、抗セントロメア抗体の採血をお勧めします。もちろん、卵子の質が良くない可能性もあります。卵子の質の改善には、25-OHビタミンD、テストステロン、DHEASを採血し、不足していた場合には補充することで改善が期待できます。

抗セントロメア抗体が見つかった場合には、プレドニン服用による顕微授精が推奨されます(場合によっては免疫グロブリンも追加)。また、抗セントロメア抗体の有無に関わらず、polscopeを使用した顕微授精が良いと思います。5PNがありますので、精子濃度を減らした体外受精はあまり有効ではないかもしれません。

 

下記の開示を参照してください。

2016.3.29「Q&A1044 ☆抗セントロメア抗体陽性の場合は?