Q 抗セントロメア抗体が陽性の場合、移植周期にプレドニンは内服をした方が有効ですか。
A 抗セントロメア抗体については、一度まとめておきたいと思います。
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セントロメア(centromere)
セントロメアとは、染色体の中央の部分(center)であり、ペアーの染色体が分かれる際に紡錘糸(染色体を引っ張る糸)が付着する場所です。
抗セントロメア抗体(anti-centromere antibody)
抗セントロメア抗体は、セントロメアに結合するため、紡錘糸が付着できなくなり、ペアーの染色体がうまく分かれないと考えられています。抗セントロメア抗体が結合するセントロメア蛋白(CENP)には、CENP-A、CENP-B、CENP-Cの3種類あることが知られています。
抗セントロメア抗体が関連する疾患
抗セントロメア抗体は、強皮症のうちでも軽症型であるCREST症候群に特異的な抗体として発見されました。重症型の強皮症でみられる抗Scl-70抗体と抗セントロメア抗体は共存することがほとんどないため、強皮症の病型分類の診断に用いられています。
このほか、Raynaud症候群、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、ルポイド肝炎の方にも抗セントロメア抗体がしばしば認められますが、その病態との関連は不明です。
不妊症では、3PNや4PNなどの異常受精が見られる方にしばしば抗セントロメア抗体が見つかることが知られています。
抗セントロメア抗体が陽性の場合の対処法
CREST症候群、Raynaud症候群、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、ルポイド肝炎の方で抗セントロメア抗体が陽性の場合には、それぞれの疾患に対する治療が行われ、抗セントロメア抗体そのものに対する治療は行われません。
不妊症の方で抗セントロメア抗体が陽性の場合には、プレドニンや免疫グロブリン(IVIG)が異常受精の回避に有効であることがあります。抗セントロメア抗体を持っている方が将来上記疾患に罹患するか否かについては明らかにされていません。
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プレドニンは異常受精の回避に有効ですが、正常受精卵(2PN)となってしまえば、移植周期での必要性はないと考えます。ただし、抗セントロメア抗体の有無にかかわらず、着床期には免疫反応を落としておきたいため、私は1週間プレドニンを使用しています。
なお、プレドニンだけでは異常受精の回避ができない方もおられます。そのような場合に、私は免疫グロブリン(IVIG)を用いています。劇的に改善される方がおられます。