Q&A1657 重度の男性不妊で男児2人 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q リプロダクションクリニック大阪にて重度の男性不妊の為、顕微授精にて2人目を妊娠中です。その節は本当にお世話になりました。ただ1人目から女の子を希望していたため、2人目も男の子と分かった為、妊娠出来たことだけで素晴らしいことなのにショックを受けてしまっています。性別を希望するなんて母親失格だなとさらに落ち込んでいます。何とか3人目で女の子がと思っていますが、凍結胚もなく一からの採卵となり時間的にも経済的にも厳しく、次も男の子だったら…と迷っています。

そこでお聞きしたいのですが、重度の男性不妊だと選別する際に男の子の精子を選ぶことが多いのでしょうか。また精子を調整する際にパーコール法で分けたものを使って受精させることは出来ないのでしょうか。もちろんパーコール法でも女の子の確率が低いことは分かっていますが、着床前診断も性別に関しては出来ない中で他に方法もなく気休めでも出来ないかと考えています。
また、重度の男性不妊の場合、長い時間をかけて体質改善や漢方やサプリを用いても、顕微授精から人工受精できるまでに改善することは無理なのでしょうか。

 

A 重度の男性不妊だと選別する際に男の子の精子を選ぶことが多いかどうかについては明らかではありませんが、統計的には否定的です(男女の確率に有意差なし)。顕微授精の精子調整にパーコール法+スイムアップ法が用いられますが、ここでのパーコール法とはパーコールを多重層とした密度勾配法(精子選別に用いる方法)ではありません。もっともパーコール密度勾配法による女の子産み分けは極めて不十分なものです(X精子が52~55%にすぎません)

また、どんなに条件の悪い重度の男性不妊の方でも、自然妊娠があり得ます。顕微授精から人工受精できるまでに精液初見の改善が見られる方もおられます。全てに絶対という言葉はありません。

 

下記の記事を参照してください。
2013.6.20「☆性別の選択(男女生み分け)その1」
2013.6.27「☆性別の選択(男女生み分け)その2」
2014.5.18「☆抗菌剤による避妊から学ぶ、膣内感染防御の巧妙な仕組み」
2014.6.14「☆体外受精、顕微授精による赤ちゃんの男女比」
2014.9.19「Q&A452 精子の重さ」
2014.12.29「☆着床前診断(PGS)したらどうなる?」
2015.4.19「Q&A667 精子無力症で生み分けは?」
2016.5.7「☆精液所見による体外受精妊娠の男女比の違い」

2017.10.12「リン酸カルシウムで男の子の産み分けは?