甲状腺抗体と妊娠糖尿病の関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、甲状腺抗体と妊娠糖尿病の関係を、メタアナリシスにより初めて分析したものです。

Fettil Steril 2015; 104: 665(中国)
要約:甲状腺抗体と妊娠糖尿病の関係に関する20論文メタアナリシスにより分析しました。甲状腺抗体と妊娠糖尿病には有意な関連が認められました。しかし、甲状腺機能が正常の女性では甲状腺抗体と妊娠糖尿病の関連を認めず、甲状腺機能が異常の女性のみで甲状腺抗体と妊娠糖尿病の関連を認めました。なお、妊娠初期の甲状腺抗体陽性者は、妊娠糖尿病の明らかなリスクとは言えませんでした。

解説:先進国では妊娠糖尿病の頻度が1.7~11.6%と報告されており、妊娠中の合併症としては重要な位置を占めています。妊娠糖尿病を経験した女性は、その後の人生で2型糖尿病、高血圧、心血管疾患に罹患するリスクが増加します。このような意味からも、妊娠糖尿病の早期発見や予防策が重要です。最近、甲状腺抗体(TPO抗体、Tg抗体)とインスリン抵抗性の合併が報告され、甲状腺抗体と妊娠糖尿病の関係が注目されています。このような背景のもとに、本論文の検討が行われました。

本論文は中国からのものですが、欧米と中国から甲状腺関連の論文が多いように思います。TPO抗体やTg抗体は、日本の生殖医療ではあまり測定されていませんが、妊娠糖尿病の早期発見という観点からは検査を取り入れる価値があるかもしれません。

下記の記事を参照してください。
2015.9.21「☆潜在性甲状腺機能低下症の取り扱い」
2015.9.18「Q&A823 ☆TSHの変動について」
2015.2.7「TSHの基準値に関する新たな見解」
2013.12.17「☆甲状腺ホルモンとプロラクチン」
2013.5.6「☆甲状腺ホルモンと妊娠」