Q&A62 染色体異常の胚の選別 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 胚盤胞になる胚の中で、染色体異常の胚である確率は、どれくらいなのでしょうか。また、胚盤胞にまではならなかった胚は、すべて染色体異常であるとは限らないのでしょうか。
着床前診断をするには、様々な制約、条件がある上、時間がかかるので、それをせずにある程度、染色体異常の胚の選別は可能か(100パーセントではなくでも)教えてください。以前の記事で、適切な時期に適切に分割する胚が良好胚というのがありましたが、これを観察すれば、ある程度、可能ということはいえませんか。グレードは、あくまでの見た目なので、移植してみないと分からないというのが、精神的にも辛いです。

A 現在明らかとなっている染色体異常の確率は、
分割胚:71.4%
胚盤胞(グレード1&2):62.5%
胚盤胞(グレード5&6):50.0%

分割胚:2013.2.9「驚くべき染色体異常頻度」、胚盤胞:2013.3.16「☆胚盤胞のABCのグレードでは染色体異常の予測はできない」ともにすでにブログの記事にしてありますので、参照してください。染色体異常だけが胚の異常なのではありませんから、成長しなかった胚が全て染色体異常であるとは限らないと思います。
これほど異常胚が多いわけですから、形や成長スピードで見分けることは難しいと思いますが、マウスではタイムラプスを用いて分割胚の段階で胚盤胞になるかならないかを判別することはある程度可能です。しかし、これとて染色体異常の有無まではわかりません。染色体異常を鑑別するには、着床前診断が必須となります。

本日の記事「☆胚盤胞の染色体異常」も参考にしてください。