☆胚盤胞のABCのグレードでは染色体異常の予測はできない | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

近年、胚盤胞の染色体をCGH法で検査できるようになり、新たな知見が得られるようになりました。染色体異常で最も多いのは、染色体の本数の過不足(異数性)です。本論文は、染色体の過不足は、ICM(胎児になる部分)やTE(胎盤になる部分)のグレードとは無関係であり、胚盤胞の大きさ(成長速度)と関連することを示しています。つまり、胚盤胞のABCのグレードでは、染色体異常の予測はできないことになります。

Fertil Steril 2011; 95: 520
要約:500個の胚盤胞のTE(胎盤になる部分)の全ての染色体をCGH法で調べました。56.7%は染色体の異数性(異常)を認めました。胚盤胞のグレードが5&6のものは50%が染色体正常でしたが、グレードが1&2のものは正常染色体が37.5%に留まりました。しかし、正常染色体であるかどうかは、ICM(胎児になる部分)やTEのグレードとは無関係でした。

解説:2013.2.3「胎盤になる部分(TE)が体外受精の妊娠には重要」の論文のデータを加味してみると、胚盤胞移植の際に胚盤胞のグレードで何を重視するかというと、①胚盤胞の大きいもの(6>5>4>3>2>1)②胎盤のグレード(アルファベットの2番目が、A>B>C)③胎児のグレード(アルファベットの1番目が、A>B>C)となります。