【レビュー】立川キウイ『談志のはなし』 | 数学を通して優しさや愛を伝える松岡学のブログ

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落語家の立川キウイ氏の著書

『談志のはなし』(新潮新書)を読みましたので、

 

ここにレビューを書かせていただきます。

 

 

< 大学の本屋さん、金高堂書店で購入 >

 

 

本書は、前座16年という異彩は放つ

キウイ氏による満を持した著書。

 

これは言い換えれば、

 

それだけ談志師匠のそばで、

キウイ氏は過ごした落語家さんということ。

 

そんなキウイ氏だけあって、

 

フォーマルな高座ではなく、

日常のリアルな談志師匠を、

 

身近に、優しい文章で、

キウイ弟子の視点で、そっとかいま見ることができます。

 

 

本作を出すにあたり、キウイ氏は、

2年近く文章を吟味していたと聞いて納得。

 

ゆったりした読みやすい文章は、

スッと胸に入ってきます。

 

キウイ氏は、スマホで文章を打って、

編集の方に送っていたと言います。

 

気合を入れてバリバリパソコンで打つのではなく、

スマホでちょこちょこ打っていたというのが、

ゆったりされているキウイ氏らしいと感じました。

 

 

< 談志師匠とキウイ弟子 >

 

 

真打にもなられ、

今はキウイ師匠と呼ばれる立場のキウイ氏ですが、

 

この本には、弟子の頃の思い出が

いっぱい詰まっています。

 

談志師匠の日常の様子が、

手触り感をともなって、生き生きと伝わってくるのが、

本書の最大の魅力ではないでしょうか。

 

 

本書を手に取ると、

談志師匠の言葉が次々に飛び込んできます。

 

「何もしないで一日中、コップならコップ、

それをながめて満足に暮らせたら、こんな幸せなことはねぇ。

でもそれじゃ済まないから、みんな駆けずり回ってんだよな」

 

談志師匠のこの言葉を読んで、

私はハッとしました。

 

日々忙しくあくせく過ごしている私ですが、

心の余裕を忘れているなぁ、

 

と感じました。

 

他にも、

談志師匠は嫉妬について、

 

「己が努力、行動を起こさずに対象となる人間の弱みを口であげつらって、

自分のレベルにまで下げる行為」

 

と教えています。

 

これも本当にそうだなぁ、と刺さりました。

 

自分自身、前を向いて、

 

きちんと行動しよう

しっかり努力しよう

 

と思いました。

 

 

 

 

それでね、、

 

本書を読んでいて、

 

うらやましいなぁ

 

と思うことがありました。

 

私の専門である数学の世界は、

師弟関係があっさりしていることが多いのです。

 

数学とは、、

 

自分でなんらかの問題を見つけ、

自分でじっくり考えて、

自分でその問題を解決する。

 

私が大学院生の頃、

よく言われた言葉。

 

もし、考えて分からなければ、

さらに自分で考える。

 

だから、

 

指導教官に質問することはあまりなく、

手厚く教えてもらうことがないのが理想。

 

結局、

 

弟子が自立して、

立派に巣立っていくことをよしとする風潮がある世界。

 

そんな自由な雰囲気が好きで数学をやっている私ですが、

 

落語家の世界の濃密な師弟関係を聞くと、

 

時には、

「うらやましいなぁ」と感じるのです。

 

 

 

 

ところで、

 

本書の全体的な構成ですが、

4つの章から成っています。

 

それぞれ、

 

一章は春、二章は夏、三章は秋、四章は冬、

 

というように、

一冊でひとつのシーズンを感じるようになっているのです。

 

春のように暖かく

夏のように暑く

秋のように肌寒く

冬のように冷たい

 

めぐりゆく季節を談志師匠と一緒に、

キウイ弟子のナビゲートで感じることができる、

 

そんな情緒を感じる詩的な一冊。

 

 

さらに、

 

それぞれの章や節のタイトル

すべて談志師匠の言葉となっています。

 

そんなことから、

 

目次を眺めているだけでも、

談志師匠の言葉が、次々に目に入り、

胸に染み入ります。

 

 

 

 

100年に一人といわれた天才落語家である立川談志師匠。

 

その生き様は、落語以外の分野の人々にとっても、

学ぶもの、感じるものはあるのではないでしょうか。

 

 

それに、

 

時代的なこともあると思います。

 

昭和の時代と比べると、

良くも悪くもソフトな時代になった令和。

 

たとえば、

 

昭和の熱血教師も、

今だとパワハラ教師になってしまいます!

 

 

 

 

とはいえ、

 

現代の私たちは、

何か大切なものを忘れているような気がしてなりません。

 

昭和から平成にかけて熱く生きた談志師匠に、

今だからこそ学ぶべきものがあると思います。

 

そのためのナビゲーターはキウイ氏。

 

令和の時代にこそ、

読んでほしい価値ある一冊です。

 

 

 

 

 

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