岡潔の数学教育の考え | 数学を通して優しさや愛を伝える松岡学のブログ

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アドラー心理学的な世界観のコラムやエッセイを書いています

岡潔は数学の研究で卓越した業績をあげた数学者です。


彼は晩年、著作活動に励み、

人生観や心、数学に関する考えを書き綴りました。

ここでは、算数や数学を学ぶ際に大切なことを
岡潔の数学観を通してみていこうと思います。

 

 

 


数学というと、計算や公式のイメージがありますが、
岡潔は次のように語っています。


「ぼくは計算も論理もない数学をしてみたいと思っている。
計算や論理は数学の本体ではないのである」



計算も論理もない数学、、、
かなり衝撃的なフレーズです。

 


計算や論理よりも大事なことって、何なのでしょうか?

 


岡潔の考えを読み解いていこうと思います。

彼は奈良女子大学で数学を教えていた頃、
授業における学生の評価を次のようにしていました。

「判断の基準はこうである。

Cは数学を記号だと考えているもの、
Bは数学を言葉だと思っているもの、
Aは数学はこれらをあやつって自己を表現するが、
主体は別にあるのだ、ということがわかっているもの

 

である」

A、B、Cの三段階評価で、Aが一番良いのですが、


先ほどの、数学が計算や論理と思っている人は 「C」 の評価ということになります。

また、数学が 「言葉としての役割がある」 ことを理解した人が 「B」 の評価となります。

「A」 の評価は、文章の意味を理解するのも難しいですね。

私なりの解釈としては、

数学というのは、まだ見ぬ真理を探究している営みであって、
それを通して自己を表現している。
ただし、(自己の表現とは別に)未知の真理は存在する。

ということが分かった人が 「A」 をいただけるのだと思います。

 

ただしこれは、言葉として理解するのではなく、

数学をすることで体感していないといけないのだと思います。

 



 


このことから、数学を学ぶ際は、

創造性

を大切にすべきなのかなと思います。


誤解を恐れずに、さらに分かりやすく言うならば、


問題を解くときに、すぐに答えをみたり、
解き方を暗記するような学習は、
創造的ではありません。


自分の力でじっくり考えて、
自分自身で解き方を探究する姿勢


というのが、

創造性を意識した学びであり、
数学的なセンスや思考力を育てるのではないでしょうか?

岡潔の言葉から、そんなことを感じます。


彼は 「言葉のおよぶところから、さらに深く進むのが数学」 とも言っています。
本当に深い言葉です。

 

 


 


では、数学をするときに大切な心がまえをみてみましょう。

それは次の言葉に表れていると思います。


「それで私は私の研究室員に

『数学は数え年三つまでのところで研究し、

四つのところで表現するのだ。
五つ以後は決して入れてはならない』


と口ぐせのように教えている」

四歳までの子どもの気持ちで数学をしている、
というのは何とも印象的な言葉です。

無邪気な気持ちで数学を楽しむことが
大切だということが伝わってきます。

 

 

 


岡潔は、算数教育に対しても自身の考えを述べています。

「算数教育は、まだ分からない問題の答え、という一点に精神を凝集して、
その答えがわかるまでやめないようになることを
理想として教えればよいのである」


・まだ分からない問題の答え
・その一点に精神を凝集する
・その答えがわかるまでやめない



まさに、分かるまでとことん考える
という姿勢が重要だと分かります。


私自身、岡潔の次の言葉が好きです。

「本当は机に向かって、本を見ながら、運算しながら勉強するのをやめて、
散歩しながら心の入り口でやるとよいのである。
事実、古来の大数学者はみなそれでやっている」


私もゆったり散歩をしながら、数学を楽しみたいなと思います。

最後に、印象的な言葉を紹介します。

「私は奈良女子大に私の研究室を持っている。
くにから何の援助も受けていないから何の制約もない。

そこの唯一の規約は 『世間を持ちこむな』 ということであって、
もちろん私も守らなければならない。

ここはだから空気が澄んでいる。


ここから眺めていると、世のさまざまの相まではわかっても、
そのにごりの度合いはよくわからない。」

この言葉にあるように、

 

普段から澄み切った気持を持ちたいと私も思っています。

 

 

< 岡潔はスミレの花が好きでした >

 

 

 

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