2019.01.16 

一日一季語 初閻魔(はつえんま)【新年―行事】

 

 

こんにゃくに更けし灯影や初閻魔       河野静雲

 

 

夏目漱石の「こころ」、樋口一葉の「にごりえ」にも登場する、源覚寺の「こんにゃく閻魔」。伝説によると、眼病を患った老婆。大王の右目をもらった感謝のしるしとして好物の「こんにゃく」を断ち、それを供えつづけたということです。現代でも参拝時に、こんにゃくをお供えする風習があります。

閻魔堂のお供えのこんにゃくに灯籠の火影が揺れている。閻魔堂がなにやら怖さを伴っているように感じます。

正月16日は初閻魔。「地獄の釜開き」。生者でありながら閻魔さまにお詣りし、お赦しをいただくことで、平穏に暮らしていきたいと願うのでしょう。

 

 

 

【季語の説明】

一月十六日の閻魔の初縁日。この日と七月十六日とは、地獄の獄卒も休むといい、奉公人が休む藪入でもあるため、閻魔堂や十王堂へ参詣することが多かった。諸寺では地獄変相の図や十王図などの画幅を掲げる。十王は冥府(めいふ)で亡者の罪を裁く十の王で、閻魔はその中の一人。

 → 藪入

 

 

 

【例句】

その街に遊女の墓も初閻魔     黒田杏子

ひゆう~と風鳴る日なり初閻魔 井上猴々

六道のどの辻ゆかん初閻魔     山田撫子

初閻魔千住宿場の古着市       蔵田重春

身ほとりの沼潰さるる初閻魔   宮坂静生

 

 

 

閻魔

閻魔大王(閻羅王、閻王)は、大乗仏教の護法天部の一尊です。古代インドのヤマ神が仏法の守護神として編入されたものです。諸病平癒・延命長寿・除災など、息災祈願の際に祈念されます。

道服をまとい杓を持った憤怒相で、多くの補佐官や羅刹などを従えた裁判官風の姿で表現されます。密教では焔摩天として、天衣をまとい人頭幢を執って水牛に乗る天人形で描かれ、護方十二天の一尊として祀られます。

 
日本で編纂された「地蔵十王経」では、死者の霊魂の導き手として地蔵菩薩の化身ともされました。小石川の源覚寺の霊譚より、こんにゃくが好物であるという俗信が全国的に広まっています。地獄の釜の蓋が開くと言われる夏期お盆前後においては、無病息災や滅罪を閻魔さまに祈る祭りが全国各地で行われます。

北千住赤門勝専寺

北千住は日光・奥州街道の一番宿の町。北千住を南北に貫く旧街道から、西に参道が延びるのが、赤門が有名な勝専寺で、ここには寛政元年(1789)開眼の閻魔大王がおわします。江戸時代にはすでに116日の閻魔詣りが知られていたようです。

お参りすれば日ごろの非を許してもらえる上に、万病、特にぜん息、扁桃腺炎などのノドの病気に霊感あらたかといわれています。参詣者は、一把の線香を買いもとめ、堂前の香炉にくべ、立ち昇る線香の煙を頭、ノド、肩など五体にあてて病気回復を祈願する人々が多く見られます。またこの日は、寺の境内、大門通り、山門前の道筋にずらりと百数十店の露店が並びます。

 

こんにゃく閻魔

源覚寺の閻魔さまの右目部分は割れて黄色く濁っています。

それにはこんな言い伝えがあります。

 宝暦年代のころ(1751年〜1764年)、眼病を患った老婆が閻魔大王に21日間の祈願を行ったところ、夢の中に大王が現れ「願掛けの満願成就の暁には、私の両目の内、ひとつを貴方に差し上げよう」と言われたそうです。

満願の日に、老婆の目は治りました。以来、大王の右目は盲目となりました。

 老婆は感謝のしるしとして好物の「こんにゃく」を断ち、それを供えつづけたということです。

このことから、源覚寺の閻魔さまは「こんにゃく閻魔」と呼ばれるようになり、眼病治癒の閻魔さまとして人々の信仰を集めています。

 

 

今日は何の日

藪入り(やぶいり)

    住み込みで働く奉公人たちが実家へ帰る日である116日は、「藪入り(やぶいり)」です。昔は、奉公人たちの休暇は、年に2回でした。小正月である115日とお盆である715日の翌日であったことから、嬉しいことがあった時には「正月と盆がいっぺんに来たようだ」というようになりました。

 

 

初閻魔

    116日は、年が明けて初めての閻魔大王の縁日であることから「初閻魔」と呼ばれています。またこの日と716日は、閻魔賽日といい地獄の釜の蓋が開いて鬼も亡者も休むとされる日です。このことが、奉公人は休暇をもらって故郷に帰るという「藪入り(やぶいり)」という風習に繋がったともいわれています。

 

初聖天

    116日に聖天宮(しょうてんぐう)に初詣することを「初聖天」といいます。「聖天」とは、頭は象、体は人間の姿をした仏法守護神のことで、奈良県生駒市の宝山寺や東京・浅草の待乳山聖天が有名です。男天と女天が抱擁した姿のため夫婦和合、無病息災や現世利益をもたらすと信じられています。これらの寺院には、そのご利益をいただこうと、多くの参拝者が訪れます。

 

念仏の口開け

年が明けて初めて、仏様を祀って念仏をする日。

正月の神様(年神様)が念仏が嫌いであるということから、1216日の「念仏の口止め」からこの日までの正月の間は念仏は唱えないこととされている。

 

主な出来事

754

    唐の高僧・鑑真が遣唐副使・大伴古麻呂に伴われて来朝。5度の航海失敗で失明。

1605

    ミゲル・デ・セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』前巻がマドリードで刊行

1912

    白瀬中尉南極探険隊が南極大陸の鯨湾に到着。

1932

    札幌の大倉山シャンツェで開場式。

1994

    ヴェルディ川崎がJリーグ初代チャンピオンとなる

1994

    伊達公子がニューサウスウェールズ・オープンテニスで海外初優勝。

2006

    東京地検特捜部が証券取引法違反容疑でライブドア本社などを強制捜査。

 

 

 

誕生日の有名人

1103

    鳥羽天皇(宗仁親王) (天皇(74),崇徳・近衛・後白河天皇の上皇)

1927

    川崎展宏 (俳人)

1948

    堀内恒夫 (野球(投手・監督),参議院議員)

1959

    池上季実子 (女優)

 

 

以下の図書、ホームページを参考、引用しています。

(合本俳句歳時記  第四版  角川学芸出版)

 

(カラー図説  日本大歳時記  講談社)

(大人も読みたい こども歳時記 長谷川櫂監修)

( 季語と歳時記の会編著 小学館刊 )

(ウイキペディア)

575筆まか勢)

(俳句のサロン)

    (一般社団法人日本記念日協会)