Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。

 

10回目は、ディアマント(Diamant)号です。TEE創成期グループには含まれていないものの、TEE前史からだと1960年代前半まで遡ることができる長い歴史を有する列車です。その歴史もベルギーとドイツを結ぶ国際TEE列車の第1期、西ドイツ国内TEE列車の第2期と大別されますし、当時のドイツを代表するディーゼル列車、客車列車の両方が運用にはいっていたことと、幻ながらも403系電車列車も運用に入る話もあったという、なかなか面白い逸話も残っていました。

 

列車名の由来は?

オランダ語でダイヤモンドの意味。欧州のダイヤモンド貿易の中心地であり、ダイヤモンド地区があるアントワープの街にちなんでいるそうです。

運行されていた国 西ドイツ、ベルギー(初代のみ)
 

運転時期と区間

 

初代 

1962年にアントワープ〜ボン間のF-Zugとして運転開始

 

1965年5月30日〜1966年5月21日

 アントワープ − ブリュッセル北駅 − ケルン − ドルトムント

 ※TEE 26 は、へルベスタール・ヴィルヴィエ経由 (電化工事による迂回の結果)

 

1966年5月22日〜1968年9月28日

 ブリュッセル南駅 − ケルン − ドルトムント ※北駅も経由

 

1968年9月29日〜1970年5月30日

 ブリュッセル南駅 − ケルン

 

1970年5月31日〜1973年6月2日

 ブリュッセル南駅 − ケルン − ハノーファー

 

1973年6月3日〜1976年5月29日

 ブリュッセル南駅 − ケルン

 

【他列車の車両交換や併結】

1965年5月30日〜1966年5月21日 TEE 25が、TEE 190 パルジファル号とケルン→リエージュ間で併結運転

 

 

2代目 ※TEEブラウエル・エンツィアン号から引き継がれ運行開始

1979年5月27日〜1981年5月27日

 ハンブルク − ハノーファー − ビュルツブルク − ニュルンベルク − ミュンヘン

 

一度は消滅し、1988年からインタシティー列車として再登場

 

 

使用された車両、編成

ディーゼル列車

【西ドイツ国鉄】

VT11.5型特急用ディーゼル列車 

1965年 5月30日 〜 1971年9月25日

編成両数ですが、中間車6両の8連(Pw4ü+4üm+4üm+WR4y+AR4y+A4y+4üm+Pw4ü)という構成でした。このディアマント号用2編成は、ヘルヴェティア号の客車化に伴った空きから1編成、もう1編成はパリ・ルール号との共通運用から捻出されていたようです。

 

 

客車列車

ラインゴルト型客車 

まず初代について。

1971年9月 オープン座席車1両、コンパートメント車2両、食堂車1両の4両編成

1972年5月 オープン座席車1両、コンパートメント車2両、1等車・ビストロ合造車1両の4両編成(食堂車が1等車・ビストロ合造車に変更)。

1973年6月 オープン座席車1両、コンパートメント車1両、1等車・ビストロ合造車1両の3両編成

食堂・ビストロの運営はDSG(ドイツ寝台車食堂車会社)が担当していました。

 

2代目(1979年〜)の編成両数については、コンパートメント車3両、オープン座席車1両、1等車・ビストロ合造車1両の5両編成でした。

 

 

牽引機

【西ドイツ】 

103型(E03)交流電気機関車 

1971年9月以降、2代目も含めて運用にはいっています。

 

【ベルギー】

16型直流電気機関車 

1971年9月以降、ベルギー国内を牽引しています。

 

 

(幻の)電車列車

1974年からブレーメン − ミュンヘン間をインターシティとして走っていた403形電車が運用に入る計画があったようです。TEE列車での運用実績ですが、結果的にはTEE ゲーテ号に試験的投入があったのみ。

 

 

実際の時刻表紙面

【初代】
1969年夏のダイヤ
TEE列車といえば長距離列車をイメージしてしまいますが、ディアマント号は2時間半という「短距離ビジネス特急」だったことがわかります。
手元の時刻表では、すでにアントワープ発着列車はなくなっていました。とはいえ、ケルン発の列車は、ブリュッセルにてアントワープ行の別列車との接続が行われていたようです。
26列車 ブリュッセル南駅発8:00 →ケルン中央駅着10:25
25列車 ケルン中央駅発18:12 →ブリュッセル南駅着20:33
 →25列車はブリュッセル・スカールベーク駅でアントワープ行の列車に接続(TEE列車ではない)
Cooks Continental Timetable August 1969 より
 
 
1972年夏のダイヤ
ケルン止まりだったものを、ヴッパータール、ドルトムントを経由しハノーファーまで延長運転していた時代です。しかしながらその期間は長くは続かず、3年あまりで再度ケルン止まりに戻りました。
43列車 ブリュッセル南駅発8:25 →ハノーファー中央駅着13:56
42列車 ハノーファー中央駅発16:11 →ブリュッセル南駅着21:46
Cooks Continental Timetable May 1972 より
 
 
1975年夏ダイヤ
ハノーファー延長から運転区間短縮し、ケルン発着に戻ったダイヤです。
43列車 ブリュッセル南駅発8:16 →ケルン中央駅着10:39
42列車 ケルン中央駅発19:40 →ブリュッセル南駅着22:03
記事の通りだと、ケルン中央駅でラインゴルト号(上下便)、メルクール号(上下便)と接続すると記事があります。念の為紙面を確認しました。
43列車到着後 ラインゴルト号10:49発(バーゼル行)、メルクール号11:00発(コペンハーゲン行)
42列車出発前 ラインゴルト号19:31着(バーゼル発)、メルクール号19:05着(コペンハーゲン発)
ちなみにメルクール号はデンマークに乗り入れしていた唯一のTEE列車でした(また別項目で取り上げます)。
Cooks Continental Timetable May 1975 より
 
 
【2代目】
1979〜80年冬ダイヤ
一度は消滅したのですが、再度国内TEE列車として復活します。復活にあたっては、ブラウエル・エンツィアン号のルートをTEE列車同士で「引き継ぐ」形になりました。とはいえ、ブラウワー〜号では毎日運転だったのが、ディアマント号では平日のみの運転に変わったのは大きい変化かもしれません。
81列車 ハンブルク・アルトナ駅発7:14 →ミュンヘン中央駅着15:05
80列車 ミュンヘン中央駅発14:50 →ハンブルク・アルトナ駅着22:45
ThomasCook International Timetable January 1980 より
 
 

今回は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

 

 

 

参考資料:

  • Cooks Continental Timetable August 1969 ほか
  • Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年
  • TEE, la légende des Trans-Europ-Express : entre luxe et grande vitesse/Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina/LR PRESSE 2007
  • TEE Zuge in Deutschland/Peter Goette/EK-VERLAG 2008
  • Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009

参考サイト:TEE、Diamant (train)、インターシティー(ドイツ)(ともにWikipedia)、welt-der-modelleisenbahn.com

ページ内写真:Flickrのリンクより

カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by  , Public domain, via Wikimedia Commons