町の本屋さん -3ページ目

幸せのありか

すると携帯電話が鳴りだした。
哲生だ。
ちょっと面倒くさい。
「もしもし。」
「もしもし、薫。今から会えないかな?」
「え゛ー。今から?」
せっかくいい感じでくつろいでるのに。
「うん。出て来れないなら部屋に行ってもいい?」
「いいけど…。散らかってるし。」
遠回りに断ると哲生は少し黙った。
「会いたいんだ。」
切羽詰まった感じだったから断ることができなくなった。
「いいよ。おいで。」
「ご飯たべた?」
「うん、食べちゃった。」
「そっか、わかった。これから行くから。」
「うん。気を付けておいでよ。」
「うん。じゃあ。」
そうして電話は切れた。

幸せのありか

ふぅ。
私はそのままベッドにダイブ。
布団がふわぁっと私を包み込む。
優しい。
私が欲しいのはそんなぬくもり。
夕食も作るのが面倒でコンビニ弁当を買って来た。
ジャージに着替えて、テレビを見ながらだらだら過ごす。
そんな時間が好き。
めいいっぱい仕事した後はこのまま酔いつぶれて寝るだけ。
缶ビールを開けて一人で乾杯する。
干からびそうなくらい渇いた私の中にビールがじわっと浸透する。
一気に飲み干したいのに喉がギリギリ痛くなってビールから口を離した。
「あ゛ーっ。」
と自然に声が出る。
これが私の息抜き。
哲生はこんな女を何て思うのだろう。
あ~男は疲れる。
私は一人の時間を楽しみたいんだ。

幸せのありか

私はとりつかれた様に仕事をした。
余計なことを考える間もない程仕事に集中した。
のめり込んでいくことで自分を取り戻す。
もう少しで一日が終わる。
今日一日面白い程順調に仕事が進んだ。
哲生は哲生で忙しいのか、メールもこない。
その方が今の私にはありがたい。
心地いい疲労感の中に私はいた。
まっすぐ帰って横になりたい。
余計なことは考えず、私は自分のやりたいように動いた。
哲生には連絡を入れず、そのまま家に帰る。