町の本屋さん -29ページ目

幸せのありか

今度は何だかいい匂いがして、目が覚めた。
食べ物の匂いで今度は目覚めがいい。
でも頭だけは重かった。
「何を作ってるんですか?」
私は起き上がって言うと山崎さんは
「朝食。」
と言った。
「俺、朝は味噌汁飲みたい人なんだよね。」
と言いながらあつあつの味噌汁を並べていた。
テーブルには、昨日の唐揚げがあんかけに絡まって別の一品として並んでいる。ハムエッグは絶妙な半熟で皿にのっている。
女の私が引いてしまうくらい美味しそう。
「料理、上手なんですね。」
と私が言うと、
「独身が長いからね。」と言った。
この人、女なんていらないな。
と思った。
「さぁ、できたから食べて。食べて。」
と、山崎さんが促すので私は黙って席に着いた。
きっと彼は毎朝、こんな調子で朝ご飯を食べていたのだろう。母親は息子に食べてもらいのを素直に喜んで作ったに違いない。「さあ食べて食べて。」と喜んで促したに違いない。
彼の母親の優しさが目に浮かぶ。

幸せのありか

朝、テレビの音で目が覚めた。
起き上がろにもだるくて起き上がれない。
「おはよう。」
山崎さんが言った。すっかりくつろいでいる。
「山崎さん、全然二日酔いしてないですね?」
私は話すのもしんどい。
「薫ちゃんは重症だね。」
と、山崎さんは笑って言った。
「薫ちゃん、なんか小腹すかない?」
「あ゛ーっ、そうでもない。ちょっと寝ててもいいですか?」
「いいよ。俺、勝手に台所、使ってもいい?」
「どうぞ。好きなように使って下さい。」
あ゛ーしんど。
私はそう思ってまた寝た。

幸せのありか

「悪いんだけどさ、終電の時間すぎたし、泊めてくんない?」
いいだけ酔っ払った山崎さんが調子良く言った。
「えっ!!」
「大丈夫。変なことしないから。」
「…はい。」
山崎さんはごろっとその場で横になって、
「俺、ここでいいから。」
と言った。
「えっ、そこでいいの?床じゃあ痛くない?」
「うんうん、いいの。」
と、山崎さんはめんどくさそうに言う。
私は毛布を取って来ると、もう山崎さんは寝ていた。
この人、ほんとに手を出さないんだ。
ウブなのか、紳士なのか。
いい人なのに、奥手すぎるから33歳になっても独身なんだ。
私は半ばあきれながら思った。
仕方がないので、私もシャワーを浴びて寝ることにした。