町の本屋さん -25ページ目

幸せのありか

母親のでしゃばりはすごい。
とにかく私に結婚させたくて必死だ。
相手なんて誰でもいいのだ。ぐんと年の離れたおじさんでも。
そんな知らない年上の男と結婚して、その向こうには何があるというのか。
私が夢見る幸せな家庭があるというのか。
身内は私以上に焦っている。
子供を産むことを考えたらもう早くはない。
実際に妹は結婚して二児の母だ。
そして妹が子供を産むたびに母親は心の傷に触れてくる。
結婚なんて簡単にできると思っていた。
人生を連れ添う二人が出会えるのは奇跡的なことなんだと今はそう思う。

幸せのありか

私に追い討ちをかけるように親が見合いの話をもってきた。
「もしもし、薫?」
「お母さん、どうしたの?」
「薫、見合いしないかい?」
「はぁ?何言ってるの?」
「会社の人の息子さん、年は40なんだけど、真面目でいい人なのよ。」「冗談でしょ。」
「あんた、彼氏もいないでしょ。会うだけ会ってみたら?きっと気に入ると思うんだけどね。」
「私にだって彼氏くらいいるんだけど。」
本当は彼氏と呼べるのかわからないけど。
真っ先に拓実の顔が浮かんだ。
「彼氏いるの!?彼氏いるなら早く母さんに紹介しなさい。逃げられないうちに。」
「うるさいな。よけいなお世話だよ!」
「あんた、もう決めないといけない時期なのよ。わかってる?理想を高く持ってもだめなのよ。」「わかってるってば。それだけなら切るよ。」
母親と話をすると、最近は結婚の話題ばかりだ。

幸せのありか

しばらく答えが出せないまま、何も変わらない毎日が過ぎていった。
相変わらず拓実は気まぐれで私のもとへやってきた。
「結婚とか、考えてる?」
と質問をぶつけたこともあった。
「なに?薫、焦ってんの?」
と半ば馬鹿にして言うので私は何も言いたくなかった。
23の男には三十路を迎えた私の気持ちなんてわからない。
周りがみんな結婚していく恐怖。周りがみんな出産していく妬み。
こんな嫌な奴はいないと思うくらい醜くなる。
普通の結婚がこんなに難しいとは思わなかった。
私の幸せは拓実にある?山崎さんにある?
結婚したい。