町の本屋さん -24ページ目

幸せのありか

拓実が使っていた毛布にくるまって私は拓実の気配を探していた。
拓実のぬくもりを忘れたくなくて、なんとか彼の体温を感じたくて、私は目を閉じる。
でも、何も感じない。
彼はどんな風に笑ってたっけ。
彼はどんな匂いしてたっけ。
彼はどうやって私を抱いていたっけ。
思い出そうとすればするほど薄れていく記憶。
人はこうして忘れていくのかな。
ぼんやり思った。
いい夢を見ていたようだった。夢が覚めてしまうのが惜しくて、また続きを見たくて眠りにつく。きっと眠ったら少しは気分もましになってる。
拓実のことももっと遠くに感じて、そして忘れていくんだろう。

幸せのありか

何回目かにはとうとう圏外になった。
電源、切ったよ。
電源をきりやがった。
意図的に電話にでなかったんだ。
そう思うとだんだん自分が惨めになった。
拓実にとって私は何?
遊び相手。
そんなことは最初からわかっていたのに。
そう思うとよけいに惨めになる。
未来はないってわかっていてどんどん拓実にのめり込んだ、自分が悪い。
拓実はいい男だった。
私の心を満たしてくれるたった一人の人だった。
拓実のことが好きだったんだと思い知らされた。
泣けてくる。
電話にも出てくれない態度に。それでも尚溢れ出る好きっていう気持ちに。

幸せのありか

今日、帰りに山崎さんから誘われた。
明日、ドライブに行かないか、と。
もういい加減答えを出さないといけない。
もうそろそろ拓実とけりをつける時期。拓実が結婚する気がないなら、
別れる。
そう思って私は拓実に電話してみた。
会って、けりをつける。トゥルルルルー、トゥルルルルー、トゥルルルルー…………
電話にでない。
肝心な時は必ずでない。留守電につながった。
「もしもし。薫です。大事な話があるので連絡下さい。」
とメッセージを入れた。
どうせ連絡なんて来ない。私の都合は面倒くさいようだ。
私はまた携帯を鳴らしてみる。
何度コールしても出ない。また留守電になって、同じように伝言を入れて切る。
そしてまた電話をした。何回も何回も何十回も。出るまで携帯を鳴らした。
何回鳴らしても出ない事ぐらいわかっていた。それでも私は意地になって一方通行の携帯を鳴らす。
手が離せなくて出れないのかもしれないって心のどこかで諦めきれないでいた。
一度だって私の電話には出てくれたことなんてないのに。