町の本屋さん -10ページ目

幸せのありか

毛布を引っ張り出し私はそのまま床に寝た。
床で寝ると体が痛くなるんだよな。
そう思いながらもベッドには入れない。
拓実のことを想う夜はベッドには寝れない。
一人の夜は気持ちが弱くなって、すべてが嫌になる。
寂しさが波打つように押し寄せてくるんだ。
誰でもいいから、何でもいいから。
そばにいて。
って思う。
いくらそう叫んでも一人は一人。
孤独に耐えるしかないんだ。
そうして寝たらいずれ朝が来る。
そう思って私は眠った。

幸せのありか

拓実のことを考えると気が滅入る。
部屋で一人になると私は拓実の言葉を思い出してしまう。
拓実のタバコを吸う仕草とか、くしゃっとして笑う顔とか、ゴツゴツして引き締まった腕とか。
私の中では全部がカッコ良く見えるんだ。
あーぁ、こんな時は早く寝よ。
こんな神経じゃ、ろくなことを考えず、気分が悪くなるだけ。
人にはどうしようもないことがあるんだなぁ。
とつくづく思う。
今まではそれなりに自分さえが頑張れば何とかなった。
でも、恋や結婚だけは思うようにいかない。
好きっていう気持ちだけでは駄目なんだ。
そんなことを30になるまでわからなかった。
どれだけのん気に生きてきたんだか。
自分でも呆れてるんだ。

幸せのありか

拓実はあれからまた音信不通になった。
結局、これからの私達のことを真剣に考えるって言っていたけど、責任がとれそうにないから別れることにしたんだろう。
勝手にしろ。
もうあの若僧には付き合いきれない。
でも拓実の言葉はすごく嬉しかったんだ。
あの夜、私は確かに幸せだった。
すべてに幸せを感じた。
私は拓実が好きだ。
それは今も変わらない。
でも、もう拓実に会うこともないだろう。
そうしたらいつか私は哲生を心から愛せるはずだ。
女の幸せは複雑だ。
自分でもどうしたいのか正直わからない。
男がいるだけマシ。
って思うしかないか…。