「スワンソング」('21)
老人ホームで余生を送る往年の花形ヘアメイクドレッサーが亡き親友に死化粧を施すための旅に出るさまを、実在の人物をモデルに描いたロードムービーです。主演はウド・キアー、共演はジェニファー・クーリッジ、リンダ・エヴァンス、マイケル・ユーリー、アイラ・ホーキンス他。
題材自体は悪くない。
同性婚が認められていなかった時代に愛するパートナーを亡くした男性の苦悩や悲しみとともに彼の最晩年を描いた物語としては確かに切なく胸を打ちます。
一種のロードムービーのような展開で、主人公が旅の途中で出会う人々が主人公に対して都合が良すぎるほど親切な態度をとる人ばかりなのも、それまでにさまざまな苦労を重ねてきた主人公への最後の「ご褒美」とも言えますし。
が、主人公のキャラクターがどうしても好きになれなかった…。
歳を取れば「面倒臭い」人間になるのは珍しいことではないし、同情もできなくはないのですが、それにしても…。
もちろん、主人公に「愛される」部分があるのは確かだし、それは重要なポイントなんですけど、僕としてはもうちょっと「愛される」要素が欲しかったのです。僕にはギリギリ「愛せない」キャラでした…。
「マイスモールランド」('22)
難民申請が認められず、在留資格を失ってしまった在日クルド人一家の少女の苦悩と葛藤を描いた社会派のドラマ映画です。主演は嵐莉菜さん、共演は奥平大兼さん、藤井隆さん、池脇千鶴さん、平泉成さん他。
予想はしていましたが、ただただ切ない話でした。
日本と友好関係にあるトルコへの「配慮」から、クルド人難民を受け入れることに極めて消極的な日本の現実を広く国内外に知らしめるには充分な出来。
ただ、細かいところで「?」となるような少々現実味のない描写が多く、そのために映画全体としてリアリティを損ねてしまっていたのは残念。
作劇上の「演出」として、この程度なら受け入れられる、気にならない人もいるでしょうが、僕にはちょっと無理でした。
それにしても、池脇千鶴さんの変貌ぶりには愕然 (@o@)
「泣く子はいねぇが」('20)
なまはげ行事中の失態で妻子と別れ、秋田から東京に出た青年が、2年後、過ちと向き合うため故郷に戻るさまを描いたドラマ映画です。主演は仲野太賀さん、共演は吉岡里帆さん、寛一郎さん、山中崇さん、余貴美子さん、柳葉敏郎さん他。
お世辞にも「面白い」話ではないのだけれど、男に都合がいいだけのハッピーエンドじゃないのは![]()
失敗してもやり直しはできる。
でも、壊れたものは完全に元通りになることはない。
という当たり前のことを切なさとともに描いていて、いつもながら仲野太賀さんの説得力のある演技で心に残る物語になっていました。
演出と編集はちょっと好みじゃなかった(呼吸が合わなかった)けど。
「帰らない日曜日」('21)
グレアム・スウィフトの小説「マザリング・サンデー」を原作とし、身分違いの秘密の恋に身をささげた孤独なメイドを待ち受ける意外な運命を描いた文芸ドラマです。主演はオデッサ・ヤング、共演はジョシュ・オコナー、コリン・ファース、オリヴィア・コールマン、グレンダ・ジャクソン他。
まさに「文芸作品」。
間違いなくラブストーリーなのですが、恋愛そのものを描いた物語というよりは、1人の女性の人生を決定的に変えた、過去の「運命の恋」を中心に、その女性の人生を描いた伝記のように見えるところが![]()
ラブストーリーとしては切なく悲しい物語ですが、「ラブストーリーのその後」が丁寧に描かれることで後味の良い爽やかな「女の一代記」になっているのがいいです (^^)
「X エックス」('22)
1979年の田舎の農場を舞台に、映画撮影のためにやってきた3組の若いカップルたちが見舞われる惨劇を描いたホラー映画です。出演はミア・ゴス、ジェナ・オルテガ、マーティン・ヘンダーソン、ブリタニー・スノウ、オーウェン・キャンベル、スティーヴン・ユール、スコット・メスカディ他。
あらすじだけ読めば、よくあるスプラッタ映画そのまま。「都会の若者のグループが田舎にやってきて酷い目に遭う」なんて定番中の定番で新鮮味は皆無。
が、殺人鬼を老夫婦に設定することで別の怖さが生まれているし、その背景に「若さへの妬み」を置くことで切なさを感じさせる部分も。
また、ホラーの名作「サイコ」を想起させる部分や、ある登場人物のラストシーンのセリフにタランティーノ風のユーモアもあるなど、映画ファンをさりげなく楽しませる要素があるのも![]()
当初から三部作を予定しているらしく、第2弾は老婆の若い頃を描くとのこと。今から楽しみです♪
「トジコメ」('22)
引っ越し準備中に食料貯蔵庫に閉じ込められた若い母親を描いたシチュエーションスリラーです。主演はレイニー・クアリー、共演はジェイク・ホロウィッツ、ヴィンセント・ギャロ他。
娯楽映画としては充分な出来。ハラハラドキドキできるし、観終わった後にはそれなりに爽快感があるし。
ただ、愚かな生き方をしていた無力な主人公が、母親として子供たちを守るために強さと逞しさ、勇気と賢さをもって戦えるようになったのは「神のご加護」によるものであることを象徴的に示すために聖痕のようなものをあからさまに登場させるのは、意図はわかるものの「それはもうちょっと匂わす程度でいいんじゃない?」とは思いましたけどね。
また、主人公の元恋人とその友人のクズっぷりはもちろん、そんなクズ男との間に2人も子をもうけた主人公の愚かさに対する嫌悪感がどうしても耐えられず、恐らくもう二度とこの映画を観ることはないと思います。
「ザ・フィクション」('19)
深い雪に閉ざされた邸宅を舞台に、憧れの作家から助手に採用された作家志望の女性が過酷な心理実験の被験者にさせられていくさまを描いたシチュエーションスリラーです。主演はサラ・ガルシア、共演はジョン・カッシーニ、ジュリアン・ブラック・アンテロープ、ジュリアン・リッチングス、キャサリン・ゲル、ジェイソン・シュナイダー他。
よくある「監禁された若い女性の脱出劇」のようでいながら、全く違う展開をしていくアイデアは悪くない。
また、見ているものが現実か妄想か主人公が混乱していくのと同時に、映画を観ている方もわからなくなっていくというのもかなり好み。
でも、違う…。
観たいものはそうじゃない…。
現実と妄想が混じり合っているなど特異な状況なので、一貫性がなくて意味不明だったり、ありえないと思えたりするのは当然なのですが、それでも、ご都合主義感は否めず…。
結末を含め、もう一捻り欲しかったです。
「張込み」('58)
松本清張さんの同名短編小説を原作とし、強盗殺人事件の共犯で逃走中の男の元恋人で今は人妻となっている女と、彼女を見張ることになった2人の刑事を描いたサスペンス映画です。主演は大木実さん、共演は宮口精二さん、高峰秀子さん、田村高廣さん、高千穂ひづるさん、内田良平さん他。
何度も映像化されていて、それはいくつか観たことがありますが、最初の映像化作品である本作は未見。あまりに有名なので何となく大昔に観たことがあったような気がしていたくらい (^^;;;
さすがに今の時代では「ありえない」と感じられる部分も多々ありますが、確かに名作。
主演の大木実さんも熱演していますが、やはり目を引くのは見張られる人妻を演じた高峰秀子さん。あくまで主人公の刑事の目線で描かれるため、登場するシーンは多いですが、そのほとんどのシーンは遠巻きでセリフも少なめ。
それが終盤になって、ようやく本来の姿を見せてからの演じ分けの見事さ!!
この展開があるからこそ、日本の映画史に残る大女優である彼女が演じる意味があったのでしょう。
「顔」('57)
松本清張さんの同名短編小説をもとに、モデルとして成功するために殺人を犯した女性の運命を描いたサスペンス映画です。主演は岡田茉莉子さん、共演は大木実さん、笠智衆さん、森美樹さん、宮城千賀子さん、千石規子さん、小沢栄太郎さん、山内明さん他。
今の時代に観ると、主人公がいろいろと迂闊すぎて「それじゃ簡単に捕まっちゃうだろ」と突っ込みたくなる部分は多いのですが、それでも、原作では男性だった主人公を女性に変更したのは効果的。その後、何度もテレビドラマとして映像化された中に、同じように女性に変更されたバージョンが多くあるのも納得。
そして何より、岡田茉莉子さんの悪女ぶりが![]()
華やかな美貌が大いに活きていますし、とにかく画面映えする美しさ。
彼女の「美しき悪女ぶり」を観るだけも価値がある映画です。
「林檎とポラロイド」('20)
奇病の蔓延で記憶喪失となる者が続出する異世界を舞台に、記憶を失って「新しい自分」となるための治療回復プログラムに取り組むことになった中年男性をユーモアを交えつつ静かに描いたギリシャの人間ドラマです。主演はアリス・セルヴェタリス、共演はソフィア・ゲオルゴヴァシリ、アナ・カレジドゥ、アルジョリス・バキルティス他。
確かにいい映画。
好みの題材だし、映画そのものの作りもかなり好み。
ただ、徐々に明らかになっていく主人公の言動の理由が、とてもとても理解はできるし、もちろん共感もできるのですが、物語としては陳腐に感じられてしまって、観終わった後には少しシラけた気分に…。
あまりにも多くの映画を「観過ぎ」ていると、こういうストーリーを陳腐に感じてしまうのかなと自分自身に対して残念な気持ちになっちゃいました…。
でも、ホントにこの映画自体は「いい映画」だと思うのですよ…。