Marc のぷーたろー日記 -99ページ目

「戦争と女の顔」('19)

 

2015年のノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチが、第2次世界大戦中の独ソ戦に従軍した元兵士の女性たちに取材したノンフィクション「戦争は女の顔をしていない」を原案とし、1945年の終戦直後のレニングラード(現サンクトペテルブルク)を舞台に、心身ともに深い傷を抱えながら生きる元女性兵士の2人が織り成すさまざまな人間模様を描いた歴史ドラマ映画です。主演はヴィクトリア・ミロシニチェンコ、ヴァシリサ・ペレリギナ、共演はアンドレイ・ブコフ、クセニヤ・クテポヴァ、イーゴル・シュロコフ他。

 

Wikipedia「戦争と女の顔」

 

原案となった「戦争は女の顔をしていない」はちゃんと読んだことがなく、それを原作とした連載漫画をちょっと読んだことがあるだけなので、偉そうなことは言えませんが、さまざまな女性たちの実体験のうち、この話をピックアップして映画化した理由や意図はなんだろうか? という観点で観ていました。

 

戦場の場面は一切なく、元兵士たちの戦後の姿だけで戦場の過酷さを描いているのは秀逸。

 

平和な時代に生きている人間にとっては、理解を超えた言動をとる主人公たちに共感することは決して容易ではないけれども、そんな言動を取ってしまうほどに、彼女たちが過酷な経験をしており、それを周囲の人々に理解してもらえていないどころか、そもそも全く知られていないということなのでしょう。それを思うと、ただただ胸が痛む話でした。

 

決してハッピーエンドとは言えないけれど、救いの全くない絶望的な結末でなかったのだけは良かったと言いたいです。もちろん、主人公たちのその後は決して安穏なものではなかったでしょうけれど。

「NOPE/ノープ」('22)

 

謎の飛行物体が上空に飛来したカリフォルニアの小さな牧場を経営するアフリカ系の兄妹を描いた、ジョーダン・ピール監督によるSFスリラーです。主演はダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、共演はスティーヴン・ユァン、マイケル・ウィンコット、ブランドン・ペレア他。

 

Wikipedia「NOPE/ノープ」

 

ジョーダン・ピール監督は「ゲット・アウト」('17)「アス」('19) と立て続けに斬新なスリラー映画を撮ってきましたが、監督3作目となる本作もかなり斬新。

 

予告編を観ると、「謎の飛行物体に乗ってやってきた異星人との戦い」を描いたSFスリラーを予想すると思うのですが、そこはジョーダン・ピール監督。そんな「誰もが予想できる」話を撮るわけがありません (^^)v

 

過去の2作品を観た時も思いましたが、「よくこんな話を思いつくなぁ」と感心するばかり。

 

スリラー映画ではありますが、過去の2作品に比べると、ホラー要素は少なめですし、コメディアン出身のジョーダン・ピール監督らしい間の抜けたユーモアもあるので、比較的「観やすい」娯楽映画だと思います。

 

関連記事

「ソングバード」('20)

 

致死率が高いウイルスを原因にロックダウンが続く世界を描いたSFサスペンスです。主演はK・J・アパ、共演はソフィア・カーソン、クレイグ・ロビンソン、ブラッドリー・ウィットフォード、ピーター・ストーメア、デミ・ムーア他。2020年春に企画され、同年夏にロックダウン中のロサンゼルスで初めて撮影された映画です。

 

Wikipedia「ソングバード (映画)」

 

ほとんどの映画が撮影休止になる中で制作された映画として当時話題になりつつも、実際に公開されると、その出来に酷評の嵐で、これまた話題になった作品。

 

実際に観てみると、確かに酷い出来 (^^;;;

 

キャストは比較的充実しているし、タイムリーな舞台設定ではありますが、ご都合主義満載のツッコミどころしかないストーリー展開にしろ、陳腐なメロドラマにしろ、いくらなんでも「これはないでしょ?」と言いたくなります。

 

2020年当時「このまま世界はどうなってしまうのか?」という不安が世界中に満ちている中で、不安を煽るだけでメッセージ性も何もない、こんなくだらない映画が公開されたら、それは怒りたくなりますよ (^^;;;

 

パンデミックが終わった今となって観れば、単なる「バカバカしいB級映画」と笑って済ますこともできるかもしれませんけどね。

 

ホント、何故こんな映画を撮ろうと思ったのか謎。

「ヘレーネ&トーマス〜バディ潜入捜査〜」('21)

 

美しいビーチリゾートで起きたサーファー殺害事件の解決のために、夫婦を装って潜入捜査をすることになった男女2人の捜査官を描いたデンマークの全8話のラブサスペンスドラマです。主演はマリー・バッハ・ハンセン、カーステン・ビィヤーンルン、共演はボディル・ヨルゲンセン、イェスパ・アスホルト、カミーラ・ベンディックス、アマンダ・フリース・ユアゲンセン他。

 

面白くなくはなかった。

 

ミステリとしては、全8話も引っ張った割に真犯人の動機に説得力がなく、ありえなくはないけれど、ちょっと無理があってダウン

 

舞台を現代にせず、1960年代くらいに設定して、子や孫の世代ではなく、当事者本人の話で完結していれば、納得はいくんですけどね…。

 

そんなわけで、ミステリではなく、主人公の男女の「ラブコメ」と思って観た方が楽しめるかも (^^)

 

はじめのうちは「もっとルックスのいい役者を起用できなかったの?」と思えた2人が、観ていくうちにどんどん魅力的に見えてくるし、シリアスなミステリの合間に挟まれるラブコメ要素がいい息抜きにもなっていますし。

 

ただ、主人公2人が抱えている心の傷がちょっと安易だったかなという気も。確かに思春期の若者ではない、充分に成熟した大人の2人にそういう部分を設定することで物語に深みを与えようとした作り手の意図はわかりますし、ダメではないんですけど、あまりに「よくある」設定で陳腐に見えちゃったんです。これは単にこの手の映画やドラマを観過ぎているせいかもしれませんけどね (^o^)

 

それにしても、デンマーク人ってドイツ人にバカにされているという被害妄想と言うか、劣等感みたいなものがあるんですかね (^^;;;

「靴ひものロンド」('20)

 

夫の浮気の告白をきっかけにいったんは崩壊し、辛うじて元のさやに収まった一家4人の行く末をユーモアを交えて描いたイタリアのドラマ映画です。主演はアルバ・ロルヴァケル、ルイジ・ロ・カーショ、共演はラウラ・モランテ、シルヴィオ・オルランド、ジョヴァンナ・メッツォジョルノ、アドリアーノ・ジャンニーニ他。

 

ストーリーそのものはドロドロした愛憎劇なのに、ヨーロッパ映画らしい皮肉たっぷりのユーモアとイタリア映画らしいカラッとした空気感で描いていて、本質的な問題は何一つ解決していないのに後味は悪くない。

 

同じ題材、同じ脚本を日本で映画化したら、もっとドロドロしちゃって後味もすっきりはしないんじゃないかなぁと思ったり。

 

夫婦のどちらの言い分もとてもとても理解はできるのですが、どうしても共感はできず、それよりも、そんな両親に翻弄され、傷つきながら育った2人の子どもの方にがっつり共感。

 

30年を経ても、心の傷が癒えていないことに変わりはないものの、姉と弟で過去の捉え方も違えば、両親への接し方も違う。割り切り方も違う。そのあたりがとてもリアルで、同じような心の傷を抱えたまま大人になった人たちにとって、この映画は一種のセラピー効果があるようにも感じました。

「ランユー」('01)

 

民主化運動が高まっていた1980年代末から1990年代末までの中国・北京を舞台に、バイセクシャルのプレイボーイと苦学生の男性の愛を苦悩と葛藤とともに描いた恋愛映画です。主演はフー・ジュン、共演はリウ・イエ、スー・ジン、リー・ホァディアオ、ルー・ファン他。

 

Wikipedia「藍宇 〜情熱の嵐〜」

 

王道のメロドラマ。

 

主人公の「運命の恋人」が同性である点を除けば、昔ながらの「身分違いの恋」を描いた定番の物語。しかも、2人の関係を友人はもちろん、妹夫婦も承知していて、誰もその関係を否定も非難もしないのがいい。

 

ただ、20世紀の中国が舞台で、しかもこの映画が公開されたのが2001年だから仕方ないとは言え、この結末は「もういいよ」という感じ。そういう結末の物語は世の中に溢れていて食傷気味。少なくとも2020年代の今の感覚からすると相当に「古臭い」。

 

それでも、北京を舞台に大陸の役者を起用してこういう映画を作ることができたのは製作が香港だからですし、そして今の香港ではもはやこういう映画を作ることがほぼ不可能になったことに深い悲しみを感じます…。

「セイント・フランシス」('19)

 

人生に迷う34歳の女性が、ナニー(子守り)の仕事で出会った6歳の少女と心を通わすさまをユーモラスに描いたドラマ映画です。脚本・主演はケリー・オサリヴァン、共演はラモナ・エディス=ウィリアムズ、チャリン・アルバレス、リリー・モジェク、マックス・リプヒツ、ジム・トゥルー=フロスト他。

 

とにかくビックリ (@o@)

 

一般的にどんなに親しい関係にあっても男性にはまず見せることもなければ話すこともないであろう、女性の体のデリケートの話を赤裸々に描いていて、この映画を観た男性の多くがかなりショックを受けるんじゃないかと思います。

 

そして何より、アメリカでこの映画が作られ、一般公開されたことにビックリ。

 

個人の自由を第一に尊重するとしながら、キリスト教的価値観に基づく差別や迫害を平気でするキリスト教原理主義者が非常に多いアメリカで、おそらく保守的な州では上映すらできなかっただろうなと思いつつも、この映画が作られて上映されただけでも驚き。脚本・主演のケリー・オサリヴァンはもちろん、彼女のパートナーで監督のアレックス・トンプソンの「勇気」には感服するばかり。

 

あまりに赤裸々に描きすぎているので、おそらく日本でも、男性だけでなく女性でも、この映画に対して嫌悪感を抱く人も少なくないとは思いますが、それでも男女問わず、大人なら誰もが1度は観るべき映画だと思います。

「ベイビー・ブローカー」('22)

 

是枝裕和監督が新生児の売買を題材に韓国で撮影した社会派ドラマ映画です。主演はソン・ガンホさん、共演はカン・ドンウォンさん、ペ・ドゥナさん、イ・ジウンさん、イ・ジュヨンさん他。

 

Wikipedia「ベイビー・ブローカー」

輝国山人の韓国映画「ベイビー・ブローカー」

 

伝統的な形態ではない、「新しい家族の形」を描きつつも、安易なハッピーエンドでもなければ、絶望的でもない希望のあるエンディングがグッド!

 

そして何と言ってもソン・ガンホさんの素晴らしさ!!

 

これまで演じてきた役と同様、人情味あふれる「普通の韓国のおじさん」なのだけれど、実際にやっていることは人身売買という犯罪。それでも、金儲けのためだけでなく、愛情を持って赤ん坊の世話をしたり、赤ん坊のためにならない相手には断固として売らなかったりと、どこか共感を覚えてしまうところのある役柄を説得力を持って演じています。

 

そして特に印象的なのが、「不思議な家族」の中で彼が醸し出す、伝統的な意味での「母親」感!! 昔ながらの「父親」の雰囲気ではない。伝統的な「父親」像のイメージがあるソン・ガンホさんが「母親」を演じているのがとてもとても新鮮。ここもまた「新しい家族の形」なのかなと。

 

ただ、その主人公が最後に取る行動は、果たして物語として適切だったのか疑問。もちろん、「絶対にあり得ない」とは思わないし、これはこれでアリだとは思うのですが、この部分だけは作り手の「作為」を感じてしまって違和感が拭えないのです。それが引っかかってしまい、観終わった後にもやもやしたものが残ってしまったのは残念。

「ロスト・シンボル」('21)

 

ベストセラー作家ダン・ブラウンによる「ロバート・ラングドン」シリーズで映画化されていなかった第3作を原作とし、若き日のラングドン教授が秘密結社フリーメイソンを巡る謎を追う姿を描いた全10話のテレビシリーズです。主演はアシュリー・ズーカーマン、共演はヴァロリー・カリー、ボー・ナップ、エディ・イザード、リック・ゴンザレス、スマリー・モンタノ他。

 

Wikipedia「ロスト・シンボル (2021年のドラマ)」

 

ダン・ブラウンらしい「陰謀論が大好きな人」向けの物語は、最終的にそれまでの話を全否定するような結末を含め、娯楽作品としてはそれなりに楽しめたので観て損したということはないです。

 

が、全10話はあまりに長すぎ。

 

各話に山場を無理やり盛り込んでいるせいでペースがおかしいし、水増し感でいっぱい。陳腐なボードゲームやテレビゲームみたいな展開も、それ自体は悪くないですが、あまりに何度も連続すると退屈なだけ。

 

エピローグは明らかに続編を想定していますが、本作の評判がイマイチだったのか、続編の計画は立ち消えに。仕方ないとは思いますが、キャストは悪くないだけにちょっと残念。

「ブレット・トレイン」('22)

 

伊坂幸太郎さんの小説「マリアビートル」を原作とし、日本の新幹線で世界の犯罪者たちがバトルを展開するさまを描いたコメディアクション映画です。主演はブラッド・ピット、共演はジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、アンドリュー・小路、マイケル・シャノン、サンドラ・ブロック、マシ・オカ他。日本からは真田広之さんが出演しています。

 

Wikipedia「ブレット・トレイン」

 

映画館で観るべきだった orz

 

伊坂幸太郎さんの小説は、昔はちょくちょく読んでいましたが、最近はすっかりご無沙汰。この原作も未読。

 

そもそも伊坂幸太郎さんの小説は日本を舞台にして登場人物のほとんどが日本人でも、どこか無国籍な雰囲気があるので、ハリウッドでの映画化に違和感はないだろうなと予想はしていましたが、その予想通りに違和感はなし。日本の描写は確かにかなり変ですが、「伊坂幸太郎ワールド」の描き方の1つとしてはアリだと思います。

 

そして何より登場人物たちが魅力的で、特に蜜柑と檸檬のコンビは、クレイジーな悪党ではありますが、その存在感と魅力は主人公を圧倒していて、この2人を同じ役者で主人公にしたスピンオフが観たくなるほど。

 

ただ、テンポが自分の呼吸と微妙にずれていて、それがストレスになって充分に楽しめなかったんですよね…。たぶん映画館で観ていれば、そのテンポに呼吸を合わせることができたように思えるので、それだけに映画館で観なかったことを激しく後悔…。

 

また、いつもなら強烈な悪役として化け物のような力強さを感じるマイケル・シャノンが、この映画では役の設定の「大物」感が全くなく、真田広之さんとの一騎打ちで真田さんを追い詰める展開に全く説得力を感じなかったのは本当に謎。いつものマイケル・シャノンなら、もっと説得力があったはずなのに…。

 

そんなわけで不満はいろいろあるのですが、それでも映画全体としては気軽に楽しめる「良い娯楽映画」でした (^^)v