「喧嘩⑤」
もやもやした気持ちのまま次の日学校に行った。
大村と薫ちゃんは朝から話をしている。
話を盗み聞きしようかとも思ったが、見っとも無い真似は出来ない。
そんな気持ちを悟られない様にそっぽを向いていた。
僕の何かを悟られたのか薫ちゃんから僕に話しかけてきた。
「理くん、大村くんちの猫のみぃちゃんなんだけど入院したんだって。」
「ああ、知ってる。昨日の夜に電話で聞いたから。」
「そうだったんだ。」
「薫ちゃんさ!大村とメールとかすんの?」
「え?メール?だってアドレス知らないし。」
そうだったのかぁ~。
「そういえば大村くん、来年受験までに都内に引っ越すらしいよ?」
「え?マジで?」
「うん、都内にいた方が受験の時に有利なんだってさ。」
「アイツ頭スゲーいいのに更に有利にするのかぁ~?」
何だかもやもやしていた気持ちが急に楽になった。
そう思うと大村が何処かにもうすぐに引っ越す事もせっかく知り合えたアイツがいなくなることに寂しさを感じて来た。
「喧嘩④」

僕と薫ちゃんとは幼稚園からの友達だ。
大村よりもずっと長い付き合いだし、イライラする必要なんかない事はわかっているのに…。
夜、大村から電話がかかってきた。
「もしもし?馬場か?俺、大村だけど?今日はありがとな!行ったよ!かもめ動物病院。入院しちゃったよ。小さい頃の風邪は命取りになるかも知れないからって。お前んとこの猫は入院まではしなかったんだろう?」
「小さい頃はゲージに入れてヒーターも入れてたよ?」
「ヒーター?」
「ひよこ電球を付けて夜は段ボールをゲージの上から被せてた。」
「ひよこ電球?そんなのがあるのかぁ~。」
「エアコンを付けっ放しには出来ないからさ。」
「ありがとうな!コレ俺のアドレスだからさ、いろいろ教えてくれよな!」
「え?…。」
「じゃあな、また明日な!」
…。
電話が切れた後、また、もやもやした気分になった…。
大村と薫ちゃんもメールやってるのかな…。
アイツならやりかねない…。
どんな話をしてるんだろう…。
スゲー気になってきた…。
「喧嘩③」
去年の冬突然雪が降った寒い夜、うちのふくチャンは風邪を引いて、食欲もなく吐いてしまったことがあって近くの病院へ行ったことがあった。
あの時は本当に心配だった。
薫ちゃんが僕に話しかけて来た。
「ねぇ、理くん。どこかいい動物病院を知らない?大村くんちの猫具合が悪いらしいの。」
「え?…。」
僕は暫く黙ってしまった…。
「あいつに直接ゆうよ。」
「ホント?ありがとう!」
喧嘩した日から何日も経っていなかったから、暫く考えていた。
近くのかもめ病院を教えてあげようか?知らないって言ってしまうか?
薫ちゃんは大村を慰めるように話しかけていた。
大村は確かにしょんぼりしている。
どうしよう?
僕は勇気を振り絞って大村の席に近づいた。
「大村!かもめ病院ってわかるか?うちのふくチャンが去年ウィルス性の風邪になった時に行ったけど親切だったよ!」
「え?あぁ~知ってる。国道のとこにあるあそこだろ?」
「うん。そこだ。夜に行ったけど点滴もしてくれて一週間で治ったんだ。」
「マジ?ありがとう!今日行ってみるよ!」
「あぁ。」
「喧嘩① 」

僕は小さい頃から髪の毛が細くて泣き虫だった。
親父はハゲだし、母方の爺ちゃんはハゲていたらしい。
髪の毛は茶色く色が白い僕だがテニス部ではキャプテンになることが出来た。
それなりに自信があった。アイツは俺をアスパラハゲとか言いやがった。
思わず手を握り締めた。
しかも薫チャンの前でだ。俺はアイツに掴み掛かり拳を振り下ろした。
みんな驚いていたし、アイツだってただ殴られはしない。
お互いに殴りあいが始まった。
先生が飛んできたのは何発か殴った後の事で鼻血も少し出ていた。
騒ぎが納まると話はどっちが先に手を出したのか?悪いのはどっちか?と言う話になってしまった。
僕にだってプライドはあるんだ。弱小テニス部にだって意地があるんだ。僕はわるくない。口の奥で言葉を呟きながら僕はごめんなさいと言っていた。
「ママ、ありがとう⑩」
聞いて欲しかったママは今日は来れない。みんなママかパパが来ているのに僕はたった一人だ。
でも家に帰れば美味しいお弁当が僕を待っててくれる。
負けるもんかぁ~。
「皆さん、今日は勤労感謝の日ですから、お父さんが来てくれた人も大勢いるみたいですね?それでは早速宿題の作文を発表してもらいましょう!」
「誰か読んでくれる人は手を上げて」
僕は頑張って手を上げた。
先生と目が合った。
先生はにっこり笑って僕を指した。
一番に当てられた。
僕はドキドキしたけど立ち上がり作文を読み始めた。
みんなの視線が僕一人に注がれている。
恥ずかしいような、誇らしいような不思議な気分だった。
「とても優しいいいお母さんにお礼の作文を書けましたね?これからも頑張って下さいね?」
みんなから拍手をもらった。
とても嬉しかった。
これはその時から数日が過ぎた時の話だが、先生は学級新聞に僕の作文を載せて感想を書いてくれたんだ。
~自分の夢をお母さんへの感謝の気持ちに込めたとてもいい作文でしたね?みんなからたくさん拍手をもらっていました。~
このお手紙でその日の雰囲気もママに伝えることが出来てとても嬉しかったんだ。









