・・・「日本の夏」シリーズ第一番は「蚊取線香」、その柱が「アートな蚊遣り豚展」への参加出品です。2020年(第19回)は新型コロナの影響で初のオンライン(画像による)展示会となるので、実物の作品は「玉手箱プロジェクト」でBOX展示したいと思います。ただし、完成まで時間がかかりますので、7~8月にかけてプロセスや関連する作品などを展示していく予定です。まずは、制作の動機(モチーフ)となった「ノザキのコンビーフ」、その根底(潜在)にあった静機(キエチーフ)が「ランクハム」作:レイモン・サヴィニャック1951。さらに「豚;PigLib;」作:吉村益信1971(セルフリメイク1994等)がある。
・・・吉村益信さんの作品においては、管理上の問題からかもしれないが★「ガラスの箱」に入れられているし、展覧会の際には会場前に★「豚ボックス」が設置されている。ただ、この作品に★「巻き取り鍵」がついていないことが、心残りであった。
・・・さらに、この機会に「レイモン・サヴィニャック」の画集を観直すことにした。サヴィニャックの着眼点や色・形の捉え方など、造形上のポイントに気づくことができ、大きな収穫があった。「本は★3度読め」と言われるが、画集も同様だった。
・・・実は、「蚊取線香」の作品に取り組むのは2度目。「玉手箱ブロジェクト」初期に制作した、マルセル・デュシャンへのオマージュ作品を再掲しておきます。
※参照:蚊取線香(1)(2)
https://ameblo.jp/manabunc/entry-12431189151.html
https://ameblo.jp/manabunc/entry-12431419423.html
《参考》なぜ蚊遣り「豚」なのか?/「さんちの手帖」工芸と探訪より
https://sunchi.jp/sunchilist/komonocho/70112
●一つ目は、愛知県の常滑焼 (とこなめやき) の職人に伝わる話。昔、養豚業者が豚に蚊が止まるのに困って、土管の中に蚊取り線香をいれて使っていたそう。常滑市は、明治から昭和時代にかけて土管の生産量で日本一を誇った地域。身近なものを活用したのです。しかし、土管は口が広すぎて煙が散ってしまうので、口をすぼめてみたら、なんだか豚の姿に似てきた。そこで地域の焼き物である★常滑焼で作り、お土産として販売したところ、昭和20年代から30年代にかけて爆発的に人気が出て、全国に広まったという説。
●もう一つの説は、江戸時代に遡ります。新宿区内藤町の江戸時代後期の遺跡から、蚊遣り豚らしきものが発掘されています。
※「新宿歴史博物館」
https://www.regasu-shinjuku.or.jp/rekihaku/collection/materials/archeology/yotsuya/yotsuya-edo/235/
現在のものより長細く、イノシシのような形です。当時は、枯葉やおがくずなどを燻した煙で蚊を追い払っていたので、入れ物は大きめの徳利のようなものを使っていたと考えられます。徳利を横にして「豚に似ている」と思いついたのではないかというのが研究者の論です。この蚊遣り豚は、★今戸焼 (いまどやき) という東京の焼き物でできていました。浅草の土産物として売られる土人形と同じ素材のため、蚊遣り豚も土人形と同じように焼かれて、土産物として全国に広まったのでは?とも考えられています。
全国区となった蚊遣り豚。現代では、耐熱性が高く壊れにくいと定評のある★萬古焼 (ばんこやき) で多く作られています。国内では三重県四日市市と三重郡菰野町 (こものちょう) で製造しており、毎年全国に十数万個が出荷。電機製の虫除けや殺虫剤が多数開発される中、★まだまだ現役の道具として使われていることが伺えます。