日本などの海外からは、一族の絆が強く盛大に追悼の気持ちを表すイメージが強いのが韓国の葬儀です。
ですが、住宅状況や環境の変化によって、儀式のありようが変わってきています。
現代の韓国の葬儀、その死生観、葬儀のあらまし、参列する場合の注意点をご紹介します。
韓国の死生観
韓国での死生観は、儒教と、土地の気を重要視する風水の思想が結びついたもので、祖先の墓所の気の影響が子孫におよび、繁栄や幸福に影響を与えると考えられています。
なので、先祖代々からの連なりを守っていくことに重きが置かれます。
この儀式をチュサ(祭祀)と呼びます。
祖霊を祀る儀式は、どの宗教を信じているかに関わらず、親族の絆を確認し継承する儀式として重視されます。
様式は儒教に則ったものが一般的です。
葬儀、告別式以外にも、法事全般をチュサと呼びますので、会話の際には留意が必要です。
韓国では死は「人生の終わり」だけではなく「新しい生の始まり」とする考え方もあり、装飾や調度はポジティブな印象を与える様式も多くあります。
死装束として死者が着せられる「寿衣」もカラフルなものが多く、特に天寿を全うする長寿の方の寿衣にはおめでたい柄を入れたりします。
この「寿衣」は、韓国では60歳になったら作っておく習慣もあり、自分のものを手縫いする方もいます。
病院の横に斎場があることも含め、合理的なお国柄がかいまみえます。
成人した子供が初老に入った親に寿衣を贈ることは、親孝行でありよいことです。
縁起が良く、贈られると長生きできるといわれています。
そのほか、葬儀に特有の様式としては、儀式に使う屏風(びょうぶ)の種類があります。
韓国の法事では韓国屏風が立てられますが、葬儀の場合は簡素な白い屏風が使われます。
韓国も生活スタイルの変化により、葬儀のスタイルも変わりつつあります。
泣き女などの伝統的儀式は廃れつつあり、都市部ではあまり見かけません。
この「哭(ゴッ)」という儀式は、喪服を着ている間声をあげて泣くもので、葬儀期間の朝夕に遺族によって行われるものでした。
実際的には喪主や親族の消耗が激しいので、泣くための係が用意されたのが泣き女でしたが、その後、泣き女を呼ぶことが儀礼化しました。
現在でも、農村部には残っているようです。
埋葬方法は、昔ながらの土葬が根強かったのですが、土地の高騰と墓地の不足により、火葬が普及してきています。
韓国の葬儀のスタイルは過渡期といえます。
ですが、儒教由来の、遺体を傷つけてはいけないと言う発想が根強いですので、火葬への抵抗が強い人も多いです。
土葬であればもちろんですが、火葬の場合も拾骨の習慣はありません。
韓国の葬儀
韓国では葬儀は3日かけて行われるのが一般的です。
サミルチャン(3日葬)と呼ばれます。
これは儒教の影響が強い方式で、仏教の影響もありますが、日本の一般的葬儀と比べると、遺族の負担は大きいです。
3日間、朝晩通しで弔問客の対応をし、儀式が行われます。
一般的に3日かかるのが当たり前なので、忌引きはその期間の分だけ与えられます。
会場は葬儀場が用いられます。
古くは自宅で行われたのですが、韓国も特に都市部ではマンションなど集合住宅が多いので、別の葬儀用の会場で行うのが都合がよいのです。
広さに余裕がある家では自宅で行われることもあります。
病院に葬儀場が併設されている場合もあります。
日本でもいくらかは韓国式の葬儀を希望される方がいます。
韓国式では、病院で亡くなった方を自宅に連れ帰ることは、自宅で葬儀をする場合以外ありません。
1日目は、臨終のときに衣服を新品の装束に着替えさせ、亡くなった後は白い布をかぶせて覆います。
遺影やロウソク、お香などを用意して供えます。
自宅に喪中のしつらえをします。
「喪中」の紙を張ったり、ちょうちんに「謹弔」と書いたものを門前につるし、亡くなった方が出たことを知らせます。
知人への通知や、各種書類の申請、親族間での葬儀に関する分担もこの日に決めます。
2日目は、故人の遺体を清めてから、寿衣(スイと読みます)という死装束に着替えさせます。
その後、布を掛けるのは初日と同様です。
昨今では洋服が多いですが、韓国の伝統の服であれば、右前で着せることになっています。
チマチョゴリの紐(オッコルム)は結びません。
身支度ができたら、白または黄色または黒い掛け布でご遺体を覆います。
この日に知人の弔問も行われます。
亡くなって24時間が経過すると、遺体は棺に納められます。
遺族はこの日から喪服を着て、弔問客を迎えます。
正装を用い、中国より服装コードは厳しいです。
2日目から3日目に、弔問客は葬儀場で長居して故人と別れを惜しみます。
故人を礼拝した後は食事がふるまわれます。
3日目は告別式に当たるチュサが行われます。
その後、出棺をし、墓地へ向かいます。
韓国では半分は土葬ですので、そのまま墓地に入ることになります。
火葬した場合も、日本のように自宅へは帰らず、その日に墓地に入ります。
帰宅後は、魂は家に迎えますので、そのための祭祀を行います。
また、日本と同じように家に入る際に体に塩をかける習慣があります。
これは参列者も同じです。
韓国の葬儀に出る場合
韓国式の葬儀に弔問する場合は、喪服で行くのが良いでしょう。
葬儀ではアクセサリーはつけないようにします。
訪問時間は、どの時間でも弔問が可能です。
遺族や親類が昼夜対応するので、日本のように御通夜でなければ夕方までなどのように、気を遣う必要はありません。
通夜と告別式の境目もはっきりはしていません。
弔問時は、お焼香は日本とほぼ変わりませんが、礼拝の方法が大きく違います。
韓国式の礼拝作法を覚えておきましょう。
この礼拝方法をクンジョルと言います。
顔の前に両手を重ね合わせて押し頂き、それから床にひざをついて、その手を深い礼とともに床につきます。
それから立ち上がるまでが1回です。
スタイルとしては土下座に似ています。
焼香の時は、このクンジョルを2回行い、立った状態でお辞儀をします。
その後に、遺族に対してクンジョルを行います。
分かりにくい場合は、現地の同行者がいれば確認しましょう。
弔問客がキリスト教信者の場合は、この動作は必要ありません。
弔問の流れは、到着後に焼香または献花、その後、香典を渡してから、食事のふるまいを受ける段取りが多いです。
すぐ帰ると故人がさびしがるともいいますので、事情が許せば、しっかりとふるまいを受けて弔意を示しましょう。
焼香は、韓国式の線香の場合もあります。
香典袋は、白い封筒に「賻儀」と書いた韓国式を用います。
現地のコンビ二などにありますが、白封筒に書いても構いません。
金額相場は3万ウォンです。親しい間柄なら5万ウォンから10万ウォンです。
韓国では、相互扶助の発想が強いため、香典返しの習慣はありません。
くれた人が必要とするときに助けてあげれば義理は立つ、という考え方です。
弔問の言葉としては、日本でも使われるもののうちで、宗教色がないニュートラルなものが使えます。
何か遺族に言葉をかけたい場合、遺族の心労をねぎらうものや、悲しくて言葉がみつかりません、と言う意味の言葉をかけるのがよいでしょう。
※インターネットで集めた情報になりますので、事実と異なる場合があります。