ノルウェー王国は北欧にある立憲君主制国家(国王が憲法や法律の下に置かれる政治体制)です。
明治時代以前の日本も同様で、現在は物議を醸しだす解釈になっていますが、同様な政治体制がありました。
東はスウェーデン・フィンランド・ロシアと国境を接し、西は大西洋に面しています。人口の大半は首都オスロに暮らし、西部には氷河によって出来たフィヨルド(峡湾)のダイナミックな景観が広がります。
ノルウェーが独立国家になったのは約100年前のこと。
経済成長率の高いノルウェーの生活事情から見えてくる葬儀の事情を覗いてみませんか。


ゆたかな福祉国家


ノルウェーは石油・天然ガスを生産・輸出しており、豊かな水資源を利用した産業も盛んで豊かな国として知られています。
他の北欧国と同じように福祉・教育に優れています。
ノルウェーの国民保険制度は国内に居住する全ての者と国外に居住するノルウェー国籍の者を対象として、年金の他にも労災・疾病・出産・葬儀などに関わる給付を受けることが出来る強制保険制度を適用しています。
この国民保険の主な給付として、老齢年金制度は個人から国民保険料が所得税と共に国庫に納入され、各年の国家予算で賄われる賦課方式を採用しています。
基本的に67歳から受給されますが仕事をしながら年金を得られるシステムとなっており、働いただけ収入(所得と年金収入)が増える仕組みを導入しています。
ただし40年間支払う義務があるため、年金受給者になっても義務年数に達していない場合は、75歳まで満額に必要な保険料の支払も継続出来ます。
また病院での医療も無料で、病気やケガによる休職者には賃金の支給もあります。
また国民及び外国人の居住者には出生もしくは居住開始時に個人識別番号制を導入しており、住民登録から資産登記・車両登録・身分証明・銀行口座の開設・社会保険の受給権などを一括して管理しているため、保険料や所得税などの未納や記録漏れなどの問題は発生しません。
これにより葬祭給付も支払われています。
宗教はプロテスタント・福音ルーテル派が主で、ノルウェーの国教となっています。

 

政治的従属と宗教

ノルウェーは紀元前15~紀元前3世紀にかけてスウェーデンとデンマークの影響を受け、紀元前1世紀にはローマの文化が流入しています。
13世紀に最盛期を迎えますが王位継承者がおらず、この頃からドイツ商人の進出が著しくこれに対抗すべくスウェーデンやデンマークとの関係が重視されました。
その後デンマークの支配下にある時代が続き、デンマークの一地方として扱われるようになっていきます。
1536年の宗教改革では教会の土地や財産の没収を定めたもので、デンマークへの属領化が進行しました。
商業は相変わらずドイツ商人に支配されており、17世紀に入ってようやく他国を相手とする林業や製鉄業が繁栄していきます。
デンマークがナポレオン戦争で大敗したことによって独立運動も高まりますが、結局はスウェーデンが同君連合を結ぶ権利を得た形になりました。
しかし1830年に起こったフランス7月革命はノルウェー人の心に自由とナショナリズムを蘇らせ、経済や産業の発展を遂げ一大海運国へとなっていきます。
ついには1905年にスウェーデンから分離独立を果たし、デンマーク王室から国王として迎え、立憲君主制の今に至ります。
デンマークの影響下に組み込まれた16世紀、クリスチャン3世によって、ドイツから入ってきたプロテスタントのルーテル派が国教となります。
オスロ駅近くにあるオスロ大聖堂は、1697年に創建されたノルウェー国教ルーテル派の総本山で、19世紀に2度の大規模工事を経て現在の形として残されています。
モダンな天井画やステンドグラスに6000本のパイプが立つパイプオルガン、そしてミカエル・ラッシュ制作の最後の晩餐をモチーフにしたフレスコ画も美しい聖堂です。
現在でも約80パーセントのノルウェー人がルーテル派の宗教を信仰しています。

 

ノルウェーのお葬式事情

ルーテル派の信仰では、葬られた死者は復活して天国に行けるというキリスト教の教えに則っています。
聖霊を信じ、聖なる公同の教会・聖徒の交わりで罪を許し、永遠の命を信じています。
葬儀は近親者を中心とした簡素なものが多いのですが、新聞にて葬儀告知を行う習慣があり、新聞の一面は葬儀告知で埋まっています。
親族の名前が並び、その後葬儀の場所や日付・時間などが告知されます。
葬儀は教会で行われ30~1時間程度で終わります。
お墓は火葬・土葬に応じて、教会や自治体など共同管轄のもと葬儀事務局が管理責任を持っています。
したがって葬儀にかかる費用は殆どなく、墓石に名前を彫ってもらう費用や特別な管理費にかかる程度です。
教会の広大な土地の一角を死者に最も近い遺族が20年間借り受けるのですが、それ以上になると更新費用が別途かかります。
オスロ市内の公共墓地に葬って欲しい場合は、オスロに住所があるだけで複雑な申請もなく手続きが出来ます。
環境問題も先進国であるノルウェーでは火葬・土葬において環境に配慮した汚染対策も進んでいます。
環境に優しい廃棄物であることを前提に、花輪や棺桶上におく花束、お墓の装飾品など土に還らないものを使用しないように心がけており、参列者にも花束の持参を断っています。
「ゆりかごから墓場まで」という福祉国家の代名詞そのものが実現されているノルウェーの葬儀です。

 

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