葬儀の習慣は各国によって異なるものです。
ある国の常識が他の国でも同じとは限りません。
海外の葬儀では、日本から見たら変わった風習もありますが、故人を悼み、大切に思いながら送り出す心は、どの国でも変わらないのです。
ここでは、中国の葬儀をご紹介します

 

中国の死生観

中国では儒教の考え方のもとで、血族という考え方が強いので伝統を重んじます。
一族の死者の葬儀を盛大に行い、お墓を立派にすることが、残された遺族や子孫、一族の幸せにつながると信じられています。

なので、生きている人と同じくらい、死者を重要視する祭祀が行われてきました。
儒教とともに、仏教徒も中国には多くいますが、日本の葬儀とは違った方法で、葬儀が行われています。

日本よりも、物質的なものを重視する中国の葬儀や供養は、全体に現世の様式に則ったお供え物や儀式が多く、葬儀用のお金なども用いられます。
たくさんの人々が、日本のようにしめやかにではなく、気持ちを明らかにして泣いたり、踊りが行われたりします。
中国の人々にとってのあの世は、死んだ後も現世のように暮らす場所なのです。
亡くなった人が、あの世でより良い暮らしが出来るように、残った人々は心を尽くして供養します。

盛大に悲しまれるほど良いので泣き女を雇ったり、たくさんの参列者がいるほど良いので、娯楽的なダンサーや劇団、漫才師などを雇って人を集めたりもします。
農村部では特にその傾向が顕著で、儀式としては、道教の様式の影響が強いです。
にぎやかに派手に見送るものというのが、中国での葬儀の一般的なイメージです。
死んだ人の面目も立ち、よい供養になると考えられています。
実際は、中国では日本よりも、死はけがれとして恐れられ嫌われる傾向は強いのです。
なので、より派手にもてなして多くの人に来てもらい、現世的なものでけがれに対抗する側面もあるのです。

2000年にわたりその考え方が引き継がれてきましたが、時代が下り、共和国制度になった後では、政府によって古来の信仰は批判され、変化を余儀なくされました。
大陸は内陸と沿岸部に分けられ、ことに沿岸部では土葬ではなく火葬にするように義務付けられました。
都市部の人工密集による深刻な墓地の不足を解消するためです。
それにともない、都市部では、葬儀の簡易化が進んでいます。
それでもまだ古来の様式は根強く、火葬は3割にとどまっています。

 

中国の葬儀

中国では、これから亡くなろうとする人が死者になる前から、死のけがれを嫌います。
容体が重篤になり、もうすぐお別れとなると、寝台から下ろして特別な衣服を着せて備えます。
寝台の上で亡くなるのは、面倒をきちんと見てもらえなかった不名誉になるのです。

故人がなくなったらすぐに、「殯儀館(ひんぎかん)」と言う葬斎場へ移送します。
葬儀の日程の調整を待つ間も、遺体は殯儀館に安置されます。
葬儀の支度が整うまで、ここで弔問を受けます。
にぎやかに騒いだりもてなすこともあります。

死亡通知は家族の名前で出されることが多いです。
この死亡通知は「報条」と言います。
白い紙か、銅色の紙を用います。
もう少し公に向けては、死亡告知が「訃告」「公告」と言うかたちで出されます。

葬儀当日の式場の祭壇は、中央に黒い額に入れた大きな遺影を置き、その脇を黄色い菊で飾って祭壇を作ります。
その手前に、棺に収められた遺体を安置するレイアウトは日本のものと似ています。
そこへ白菊や黄色の菊を供花として手向けたり、果物などの供物が供えられます。
ロウソク一対と香炉も置かれます。
線香は現地式の線香です。
祭壇脇や周辺に花かごが飾られることもあります。

「挽章」と言う哀悼の言葉を書いた白や青色の大きな幕が、遺影の後ろに飾られます。
これは近い一族から贈られます。
花輪が入り口付近に飾られますが、これは友人や親戚が贈ってもいいものです。
式場には机と椅子が置かれ、弔問者にお茶が振る舞われます。

「追悼会儀式」は哀歌の演奏、献花、祭文を読む、棺に向かい礼をして祈る、弔辞など、日本とあまり変わらない内容です。
僧侶の読経はなく、順序などは日本と違います。

続いて「遺体告別儀式」が行われます。
弔辞が、身分がある特別な来賓やゆかりのあった参列者によって読み上げられ、家族は謝辞で返します。
その後、棺の周りを回って、故人と別れを告げます。
お国柄が出るのは、遺族を慰めることが式次第に組み込まれていることです。

葬儀の間には、この空間にバンドやコメディアンなどが入り、棺の周りで音楽を奏でたりすることもあります。
泣き女が芸を披露し、遺族を先導し泣き叫びます。

その後、音楽の中を出棺し火葬場に向かいます。

遺骨は火葬にして3年は納骨堂に安置されます。
その後、「骨灰盒(中国の骨壷です)安放儀式」が行われ、ようやく風水を重視した墓所に納められます。

土葬の場合は出棺から墓地に向かいます。
どちらもパレードのようににぎやかに進みます。

上海などでは、先に述べたように都市化がすすみ、納骨堂を使ったり、海へ散骨する場合も増えています。
その場合は、スタンダードな中国式葬儀とは違ったものになります。
にぎやかで土着的なもてなしなどは減らして、より簡素に、厳粛に故人を送りたいという流れもあるようです。

 

中国の葬儀に出る場合

中国の葬儀では、日本のような厳しいドレスコードはありませんし、喪服で参列はしません。
ですが、中国での葬儀を象徴する色は「白」ですから、そこには留意する必要があります。
男女ともに、白と黒の服を着ます。
分からない場合は、現地の人に確認をとるのが良いでしょう。
アクセサリーを身につけるのは避けましょう。
喪章を用いる場合は、黒の喪章を腕に付けます。

中国の葬儀ではお焼香はしません。
同じ役割を示す捧げものとしては、献花をすることが多いです。
ほとんどは現地側で献花のための花が用意されますから、調達の心配はありません。
自分で調達する場合は、白い菊が一般的です。
お花についても、分からないときは現地の花屋さんに相談するのが無難です。
花輪も使われることがあり、贈るのも問題はありません。
飾り物では、造花のカラフルなものがあることもあります。
贈りたいものにあわせてルールが違うことは考慮しましょう。

注意が必要なのはお香典です。
金額は必ず奇数にする決まりで、1、3、5、7を用います。
しかし「9」は縁起が良い数字とされていますから避けましょう。
故人が友人なら500元から1000元、同僚や知人なら300元から500元を包みます。
袋は「白包」と呼ばれる白封筒を使います。
主催側が香典は受け取らない場合もあるので、状況を見て対処しましょう。

また中国では、地域ごとの違いも大きいです。
ビジネスや交友で参列する場合、その地域のルールを現地の人に確認しましょう。
お墓参りについても、親族以外は行けなかったり、葬儀の式次第の進行によって供えるものが変わったりします。

中国では、日本のように涙をこらえて平静にふるまうのは、美徳ではありません。
悲しみを素直に表し、故人を惜しむのは良いこととされています。
郷に入れば郷に従えの心がけが必要です。

日本人が中国の少数民族の葬儀にでることは多くないでしょうが、スタンダードな儒教、仏教、道教の様式以外の葬儀を行っている地域もあります。
マナーの幅も広いですので、参列の際には下調べをした方が良いでしょう。

 

 

 

※インターネットで集めた情報になりますので、事実と異なる場合があります。