六話 後編②
――甲斐side――
変なやつだった。
最初は、他の奴ら(雛 津樹を除く)と同じ怯えた感じだった。
恐怖でいっぱいって顔で、俺を見てた。・・・目だって、逸らされまくったし。
でもこいつが、俺が煎れたお茶を飲んでから、なんとなく表情が変わった・・・気がした。
それで一発で分かった。
こいつは、お人好しで騙されやすい性格だ、と・・・。
しかも、こいつは《招待枠》。
つまり、理事長の目にとまった、ということだ。
あいつは、何かやらかすに違いない。
まあ、今はこの考えを、胸の中にしまっておこう。
葉は、俺が作った焼そばを美味しそうに食ってくれた。余計に、俺のことを信用したようだ。
ほんとにこいつ、大丈夫なのかよ・・・。そんなに、人を信用して。
こんなに、俺を普通の人間として、分かりやすく
「憧れです!!」
っていう眼差しで見てくる奴、お前が初めてだよ。
何はともあれ同室になったってことは、こいつは危害を加えてはいけない・・・・。
むしろ、守らないといけないかもしれない奴なのか・・・・・。
・・・・・守るなんて面倒だから、
「苛められたら、俺に言えよ。」
と言った。
馬鹿正直なら、きっとなんでも相談してくるだろう。
六話 後編①
――葉side――
ああ、涙が・・・駄目だ。
泣いちゃ駄目なのに・・・・・まさか、よりによって『櫻 甲斐』だなんて。
怖い、視線が痛い。目が怖いぃぃぃ。
「お茶・・・」
「ハイィ!!」やばい、こ、声が・・・・・
・・・・って、笑ってる。先輩笑ってる。先輩って笑うと、普通の人にしか見えないな。
「・・・お茶、淹れたから飲め」
「有難うございます」
良い人だ。こんな僕に、こんなにおいしいお茶を淹れてくれるなんて・・・。
本当は、良い人なんじゃないかな。
「ふぅ~お茶、おいしいです。」
「それは、良かった。お前、緊張してただろ。だから落ち着かせようと思ってな・・・」
良い人だ、この人確実に、良い人だ!
良い人に決まってる!!!
「すいません、こんな僕なんかに気を遣わせてしまって・・・」
ああ、こんな人になれたらな・・・・僕も、頑張らないと。
「恐縮するな、この学園にいるという事だけで凄いことなんだ。」
僕なんて、選ばれただけだし。勉強もそこそこだし。
何かが人より秀でている事もないし・・・・。
「・・・・僕は招待枠なんです。」
「・・・・・招待枠か、それなら尚更だ。」
「?」
「招待枠は学園長が直々に選ぶ、毎年人数は違うが・・・今年は三人しか居なかったがな。お前はその中の一人だ。胸を張ったほうが良いぞ。」
「さ、さささささささ三人ですか!?」
僕が、僕なんかがそんな・・・・。落ち込んでいると先輩が、
「俺のときは、俺一人だったから三人ならマシだろ。」
一人なら確かに嫌だな、って、
「先輩も招待枠なんですか?」
「そうに決まってるだろ、じゃなかったらこんな所、死んでも来ねぇよ。」
死んでも・・・って事はそんなに嫌なのかな。
とにかく、今日分かった事は、櫻先輩が凄く良い人だって事と、招待枠は『特別』
って事だった。
あと、先輩が最後に
『苛められたら、俺に言えよ。』
その後、先輩の作った焼きそばをいただいた。凄く、おいしかった。
・・・・・僕のお母さんより、お母さんみたいな人だ。
先輩とも仲良くなれたし、良かったな。この調子でいろんな人と仲良くなりたいな・・・。
六話
こんなに大きい寮だと思っていなかった。
超ゴウカだ・・・・
仕方ないのかな、この学園普通じゃないし。
僕なんかがいいのかな、流我君と同じ学校で・・・・
って、いけない!いけない!
そんなこと思っちゃ駄目だ!!変わるって決めたんだ。
変わって誰からも認められる、尊敬される存在に!!
それに先輩だってできるんだから・・・・・うぅ、怖くないといいな・・・・・
頑張ろう、勇気を出すんだ!
先日届いた、書類で中に寮の部屋割りがあった。それを見ると、一年の僕が
三年生の先輩と何故か、同じ部屋だった。
「なんで・・・・・なんで僕はこんなに運がないんだろう」
と今まででこんなに落ち込んだのは、すっごく久しぶりだった。
・・・・・・思い切って部屋のチャイムを鳴らした。
すると部屋から出てきたのは、学校でも話題のあの人だった。
