山田翔…日奈子の2歳下の弟。
 赤門の大学出身で有名企業に勤めている。

 仕事も出来て優しく穏やかな性格だが、
 女性には口下手で奥手。女性と付き合った経験が
 ほぼない中で女医の結衣と婚約中。しかし… 

 

山田日奈子

…パンダの同級生。不器用な弟のことが可愛くて仕方ないが

 婚約者の結衣さんがモラハラ気質、浮気疑惑。

 良いように使われている気がして心配。 
 

菊地結衣…翔くんの婚約者。大学病院に勤める外科医。 

 父も兄も親類も医者。母は専業主婦。相当な曲者 

   最近2台目の携帯電話が見つかり、その中身は…
 

辻さん…結衣さんの医学部時代からの同期。外科医。

 日奈子といい仲になりそうだったが極度の潔癖症男で

 日奈子からフェイドアウトしようと思っていた。
 しかしこの男の本性は…

加藤さん…辻さんの医学部時代の同期。
 菊地結衣とも面識がある。

 



呆れと怒りと疲れと眠気で、

西麻布の道のりを歩いていると

私たちに翔くんから

グループLINEがきて

 

その内容を読んでいると

 

日奈子の携帯に、今度は辻から

電話がかかってきた。

 

 

 

日奈子

「…これ、出るのが正解?

 

 無視がいいの?」

 

 

 

「…精神的には無視したいけど

 どうせまたかかってくるなら

 今出た方がいいのかもよ。」

 

 

 

日奈子

「…そっか…」

 

 

 

日奈子は渋々、電話に出た。

 

 

 

日奈子

「はい。

 

 

 …はい、え?…あぁ…

 

 一応翔には伝えますけど…

 

 はい、わかりました…」

 

 

 

 

日奈子と辻の会話は

わずか1分足らずだったと思うが

 

その間私は、

西麻布を通るタクシーとか

歩いている男女を見ながら

 

その誰もに

いろんな人生があるんだよな…

と、ぼんやり思ってしまった。

 

 

 

日奈子

「…まぁ、

 思った通りの内容だった。」

 

 

 

電話を切った日奈子が

私の方を一瞬見てまた歩き出す。

 

 

 

 

「…一応・・聞こうか?」

 

 

 

日奈子

「…一応、言うけど

 

 今日の翔からの提案。

 

 一旦考えさせて欲しいって。

 だから結衣とか奥さんに

 全てぶっちゃけるのは

 

 

 やめて欲しいって。」

 

 

 

「……あ、そう。

 

 

 ハァーア、ほんと、

 どの立場でそんな…」

 

 

 

日奈子

「うん。私もそう思うけど

 今日はもうこれ以上

 長く話したくなかったし、

 

 決めるのは翔だから

 明日、翔には伝えるよ。」

 

 

 

「そっか…そうだよね。

 決めるのは、翔くんだね。」

 

 

 

 

日奈子

「うん。ただ…私個人的には

 

 面倒なことには

 なりたくないって思う反面、

 

 結衣や辻が

 なんの痛手も追わないなんて

 そんなの許せない!

 

 …って、そう思ってる。

 

 だから翔には、

 諦めずに戦え!とも言いたい。」

 

 

 

「うん、私もそう思うよ。

 

 

 ひとまず翔くんの

 心が心配ではあるけど

 

 出来ることは協力するからさ。」

 

 

 

日奈子

「うん……」

 

 

 

日奈子はそれから

しばらく黙ったまま歩いていて

 

私はふと、

彼女の顔を覗き込んだ。

 

 

 

 

「……日奈子、

 

 

 …やっぱり心配?…だよね。」

 

 

 

 

日奈子

「うん…心配。

 

 

 これからもしさ、

 弁護士も入ってとか

 本格的なことになってしまったら

 

 相手は医者家系の家だもん

 弁護士も、お金かけて

 いくらでも用意出来るでしょ。」

 

 

 

「…あぁ……

 

 

 そうね、確かにね…」

 

 

 

 

日奈子

「勿論私も翔にも、

 弁護士になった友人とかはいるけど

 

 そんなこと友達には

 話したくないと思うし… 

 

 あんな奴らだから、

 弁護士なんか使ったらもっと

 卑劣なことしそうでしょ。」

 

 

 

「…うん。

 

 

 しそうな予感しかしない。」

 

 

 

 

 

日奈子

「でしょ…翔はさ…

 あんまり言わないけど、、

 

 今、相当、堪えてると思う…

 

 もしこれ以上

 傷つくようなことがあったら

 あの子本当に、

 ボロボロになっちゃうよ…

 

 

 今日の翔のあの声とか、

 話し方とか…

 

 私あんなの、うっ、

 

 

 聞いたことなかった…うぅ…」

 

 

 

 

日奈子はそれから

堰を切ったように涙を流した。

 

 

 

あぁ、堪えてたのは

我慢してたのは、

 

 

日奈子もそうだったんだ。

 

 

 

弟のためにって

頑張って戦ってたけど

 

彼が傷つく姿を見て

辻の自分勝手を見て

日奈子もたくさん、傷ついていた。

 

 

 

「日奈子…ごめんね。

 

 私、…ごめんね。うぅ…」

 

 

 

 

日奈子

「なんでパンダが泣くのよ…

 

 

 うぅぅぅ…」

 

 

 

 

 

私たちは夜の西麻布を

涙をポロポロこぼしながら歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

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いつも読んで下さってありがとうございます。

「私がブログを書く理由。」

 

これまでのシリーズはこちら。

1.ミキの芝生 『DVモラハラ夫の不倫』

2.武田さんの芝生『妊娠発覚。彼氏は既婚者だった。

3.紀子さんの芝生 『夫の不倫相手は、まさかのあの人。』

4.琴美ちゃんの芝生 「お笑い芸人の男。」

5..読者さんの芝生 「意見を聞かせてください。」

6.みどりさん親子の芝生 「父親の不倫を見つけました。」

7.春菜ちゃんの芝生『婚活アプリで結婚相手は見つかるか』

8.青木の芝生   男友達の告白

9. 紗子さんの芝生 「見て見ぬふりん。」

10. 百合子ちゃんの芝生 「運命の人の本性」

11、香織の芝生 「老舗割烹料理屋嫁ぐ