シーズン6
大地くん・・・シーズン6の主人公。高校2年生の男の子。
妹ちゃん(葵)・・・大地くんの妹。中学2年生。たまたま見た父親の携帯から、浮気を知る。
お母さん(みどりさん)・・大地くんのお母さん。40代半ば。
お父さん(タケシ)・・・大地くんと妹ちゃんの父。不倫相手のヒロミには、タケシくんと呼ばれている。
若林ヒロミ・・・・タケシの不倫相手。大地くんの友達である裕介くんの母。
若林裕介・・・ヒロミの息子。若林夫・・・ヒロミの夫。
カナちゃん…葵ちゃんの友達
カナちゃんママ…みどりさんのママ友で、タケシの不倫相手。タケシのことをタッくんと呼ぶ。
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「私はもう、
こんな人いらないから。」
なんて
みどりさんはこの時
この瞬間、
決して簡単に、
タケシを見限れていたはずはない。
大好きで結婚した人。
信頼していた人。
良きパパだと思っていた人。
このたった十数日で
一気にいろんなことがあったけれど
だからって簡単に
ハイそうですかと、
家族をやめられるわけがない。
数日で割り切れるわけがない。
さっき放った言葉は全て
本心に決まっているけれど
それを口にすることは
どれ程に身を切られるような
思いだったか。
みどりさんの言葉に
この場にいた全員が
ただただ泣いた。
けれど私だけは、
泣けなかった。
だって、
一番泣きたいのはみどりさんなのに
傷つけた3人までもが
泣いている意味が
わからなかったのだ。
私
「……ヒロミさん
カナママさん。
今日は、帰ってください。
お二人も家に帰ってから
家族の話し合いが
あると思いますから。
後日お二人には
書面で今後のことを
お伝えさせていただくと思います。」
ここで今、
誓約書を書いてもらったり
連絡先を消してもらったり
そんなことが出来るような
状況ではなかった。
肩を震わせるみどりさんを
早く落ち着かせてあげたかった。
2人が立ち上がり
頼んだドリンク代を置いて
立ち去っていくと
私はカナママのご主人と
その後ほんの少しだけ言葉を交わして
すぐに電話を切った。
揃って出て行った2人が
会話をしたのかどうかは
わからない。
それから
タケシとみどりさんと私
3人になった。
私
「……みどりさん
今日は…どうしたいですか。」
みどりさん
「ひとまず…パンダさん、
一緒に出ましょう。
もう・・帰りたいんです・・」
私がいるときにタケシとは
ここである程度
話しておきたいことがあるのかと思ったが
この日のみどりさんにはもう
そんな余力は残っていなかった。
私
「じゃあタケシさん、
みどりさんは私が送りますので。」
先に私が立ち上がった。
タケシ
「パンダさん…
すいませんでした。」
私はタケシの言葉に
何も言わず、顔も見ずに
その場を去った。
◆
店を出て、
30秒くらい歩いた。
歩いたけれど、
途中でみどりさんの足が
ぴたっと止まる。
みどりさん
「う、うぅぅぅぅぅ・・・
あぁぁぁぁぁ・・・」
みどりさんは
その場で泣き崩れた。
さっきまで我慢していた気持ちが
一気に溢れた。
こんなに悲しい泣き顔は
見たことがなかった。
みどりさん
「パンダさん・・うぅぅぅ・・
子供たちに会いたいよ・・
でも、会って
なんて言えばいいんだろう・・
だって今から、
子供たちのこと
傷つけてしまうんですよ!
こんなに大切に…
大切な…子供達が…
う…うぅ…ぁぁぁ・・・」
外はもう暗くて
みどりさんの声が響いて
苦しくて、苦しくて。
ただただ、
苦しくて、苦しくて。
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ブログを読んで下さってありがとうございます。
これまでのシリーズはこちら。
シーズン1 ミキの芝生 『DVモラハラ夫の不倫』
シーズン2 武田さんの芝生
シーズン3 紀子さんの芝生 『夫の不倫相手は、まさかのあの人。』
シーズン4 琴美ちゃんの芝生 「お笑い芸人の男。」
シーズン5 読者さんの芝生 「意見を聞かせてください。」