スタッカート・子音の溜め・小さい「っ」の作り方 | チラシの裏 ~UTAU調声メモ~

チラシの裏 ~UTAU調声メモ~

UTAUの調声の話を中心に、初心者向けの使い方からうまく歌わせるコツ・ニッチなネタまで、独断と偏見で書いています。

初稿:2020年9月

 

 

ぜろといーちが こーさするちてーん

を、

ぜーろっとっいーちがっ こーさっすーるちってーん

に変える方法。

 

 

 

[音声サンプル]子音の長さを調整する

 

この音声サンプルでは、ピッチや強弱などの要素は変えていない。

変えたのは、「子音の長さ」

 

 

子音の長さを伸ばすことで、

・スタッカートのような緩急(グルーヴ感)が出せる

・歌詞の小さい「っ」を表現できる

といった効果がある。

 

ちなみに小さい「っ」は無音ではない

小さい「っ」の音があるんだよ!!(発音沼への入り口)

 

 

 

○子音とは?

 

日本語は基本的に、子音+母音で1文字。

(この1文字のことを1モーラという)

 

たとえば「か」なら、

k=子音

a=母音

でできている。

 

 

 

○発音ごとに伸ばす場所が違う

 

まずはざっくりと発音の種類を知っておこう。


・普通の子音(破裂音以外の音)
ただ子音が伸びるだけ。

 

画像は「さ」

さ
↑ここを伸ばす


・破裂音

カ行、タ行、パ行など。

これらの「破裂音」と呼ばれる発音たちは、

前の母音-無音-子音-母音

という構成になっていて、

スタッカートするときは子音ではなく無音が伸びる

 

破裂音にはざっくり分けて2種類ある。


・無声破裂音

k,ky,p,t,ch,tsなど。

か

ここが無音部分。

 

実際には環境ノイズや前の音の残響がうっすら入っているので、

完全な無音ではないが、発音はされていない。

 

・有声破裂音
d,g,bなど。

が
有声破裂音は「有声」というだけあって、

無音じゃなく「ん」みたいな小さい声が入る。
(発音する人によっては無声破裂音のように間が無音だったりもする)

 

子音を少し伸ばすときは手前に「ん」を入れて

[a が]→[a ん][n が] のように。

しっかり伸ばすときは無声破裂音のように無音を挟むと良い。

 

 

・ア行

ブックオフなのに子音ねえじゃ~~~~ん!!

といいたいところだが、ア行にも何種類かあるのだ!

 

UTAU音源収録ではア行は「区切らないでつなげて読む」のが基本だが、バリエーションの一種として区切って読むものも存在する。

口ではなく喉で発音を区切るので、「喉切り母音」「声門破裂音」などと呼ばれる。

[音声サンプル]喉きり母音

[音声サンプル]喉切り音素で拍を強調する

 

この素材をうまく使うことで表現の幅が劇的に広がる!

(収録されていなかったら、ありものをこねくりまわして似たような音を作ることになる。けっこうめんどくさい)

 

ちなみに喉きり母音の扱いは破裂音と同じ感じでok。

音源によって使い方が若干異なるので、readmeなどの同梱テキストを読むこと。

 

 

・ラ行

すげえめんどくさい。

人によって発音のしかたがまちまちなので、それぞれの発音に合わせて正解を探っていく必要がある。

とはいえ、たいていは

[a ら]→[a ん][n ら] のように、間に「ん」を挟むことで解決できる。

 

 

 

○子音の伸ばし方

 

☆子音速度を変える

一番ベーシックで簡単なやりかた。

とくに、連続音の子のサ行・シャ行・ハ行などは子音速度一択。

 

子音速度のよくないところ:

子音の前後もひっくるめて全部伸び縮みするので

アタック感が無くなることがある

↑この範囲が伸び縮みする

 

とくに破裂音だと、無音だけ伸ばしたいのに子音まで伸びてしまうので

破裂音の場合は下の方法がおすすめ。

 

 

☆発音を分解する

子音と母音に分解して、子音だけ伸ばせるようにする。

(破裂音の場合は、[無音]と[子音&母音]に分解して、無音だけ伸ばせるようにする)

・・・と書くと難しそうだが、気にせず先を読んでほしい。

 

これをするには、

 

VC音素を使う方法

→VCとは、CVVC音源などに入っている音素材

→連続音の子でも、原音設定でVCを作ることができる(おすすめ)

※ただし、サ行やシャ行でこれをやると音が汚くなりがち

 

連続音を擬似CVVC化する方法

→VCがないときのやりかた。力技

 

発音を分解するときの注意点:

単独音だとできない

 

 

☆連続音で、ナ行・マ行・ヤ行・ワ行などのとき

[n な]のnは子音のnとして、

[n ま]のnはmとして、

[i や]のiはyとして、

[u わ]のuはwとして使えることがある。

 

つまり、子音速度を下げたりCVVC化するよりも

こうするほうが綺麗な場合があるので、試してみてほしい。

 

(ナ行とマ行はこれがよく効く。ヤ行とワ行はCVVC化したほうがそれっぽい音になることもあるので、両方試すとgood)

 

また、ガ行などの有声破裂音やラ行も

ナ行と同じようにしてnを挟むと良い。

 

 

☆単独音のとき

 

無声破裂音のときは無音を、

 

有声破裂音のときは[ん]を挟む。

([ん]は母音結合すること)

 

 

ただし、次のように破裂音でない音に無音を挟むと

[さ]のsは伸びていないうえ、謎の無音が急にでしゃばってきて、不自然な音になる。

(本来aとsの間に無音はない)

これは「あっさ」じゃない!「あ[謎の無音]さ」だ!

 

何度でも書くが小さい「っ」は無音ではない

 

 

 

○冒頭のトリノコシティを解説

 

※画像は見やすいように[- ][a ]などを省略しています

 

・ぜろ

「と」は無声破裂音なので、VCを挟んで[e ろ][o t][- と]にしている

 

・とーちが

「い」を喉切りにして、[- と][o い・][i ち]にしている

 

・がうさ

「こ」も無声破裂音なので、VCを挟んで[i が][a k][- こ]

 

・さ

「す」は歯擦音(破裂音じゃない)なので子音速度を50まで下げて伸ばしている

(わかりやすいように下にvel50と書いてある)

 

・ちってーん

「て」は無声破裂音なので、VCを挟んで[u ち][i t][- て]にしている

 

 

 

以上です。総評すると、

子音長を変えるには子音速度やCVVC化などの手段があり、

発音の種類によってそれらを使い分けよう!ということです。