<<<過去作品からご紹介>>>
谷リエは今年で40歳になる。現在独身だ。独り身の理由は異性にもてないからではない。
自分で言うのもなんだが結構もてる方だ。
もちろんこれまで何度も付き合いを経験したが、独身の理由はこれまでビビっと
来るような運命の出会いを経験したことがなかったからだ。
リエは日本の会計事務所でプロジェクトマネジャーの仕事をしている。
会計でも監査などを特に得意としておりそういう時はチーム一丸となって
経理に当たるためプロジェクトマネジャーなる職種が必要なのだ。
しかし専門職ではないので、特に会計の経験がのびるわけではないが、
総合職として力を身につけたほうがいいと思いこの仕事についた。
まじめなリエの働きぶりに会計事務所の社長もぜひ良い引き合いをと考えていた。
いつも冗談でリエに「今度いい人を探してあげるよ」と声をかけてくる度に
こちらも冗談半分で「ぜひお願いします」と返していた。セクハラギリギリの
発言だが、大目にみていた。アメリカだったら訴えらているぞと心でいつも
思っていた。
あるとき、そんな社長のいつものセクハラ冗談が現実となった。
社長はいつものように朝から「リエ君、今度紹介したい人がいる」リエも
またいつもの通り、「ぜひお願いします」と答えたら、今度はいつもとは違う
会話が続いた。
社長「いや今日は本当に本当なんだ、すごいいい人なんだよ。ぜひ会って
みたらどうかな。先方には先日会社の懇親会で取った写真を見せたら、
君の写っている写真を見てぜひにということなんだな。」
社長はずぼらな人間なので、リエの性格とか好みとか全く考えずに紹介したり
するだろうなと断ろうとしたが断る理由もないので毎日しつこいので義理
で会っておこうと思いその紹介を受けることにした。
リエは義理とはいえなんだかんだいっても久々のお見合いにウキウキしていた。
髪をきれいにセットして流行のスタイルに取り入れたり、洋服はいつも
買わないようなものにしてみた。そして当日のお見合いの日を迎えた。
残念ながら相手の写真はなく社長からは銀座3丁目のやずや和菓子屋の
前に青いスポーツカーで青いスーツを着て現れるとだけ言われた。
相手は赤い服を目印に来るので、赤い服を着てほしいといわれた。
なんだかこんな待ち合わせの仕方も新鮮だった。そしてリエはドキドキ
待ち合わせの場所で待ち、青いスポーツカーをキョロキョロ探した。
こうして待っているとなんだかドラマのヒロインのような気がした。
時間ちょうどに、ブオーンとすごい勢いで青いフェラーリがやってきた。
まさかフェラーリじゃないわよね。。。と思った。
すると、中から和製デビットベッカムのようなドラマから出てきたような
素敵な男性が現れた。透き通ったような青いスーツを着ている。
こんな人がわたしのお見合いの相手だったらいいのに。。。。
でもまさかね。
そんな羨望の眼差しで見ていたら、そのフェラーリの男性がリエに声をかけてきた。
フェラーリの男性「やあ、ごめんね。待たせて。じゃ行こうか」
リエは後ろを振り返った。誰か別の人に声をかえているのか。しかし誰もいなかった。そしてそーと、人差し指を自分に向けて指した。するとなんとフェラーリの男性は、うなづいていた。
リエは心の中で「キャー」と叫んでいた。とうとうわたしに春が来た。
リエはこの状況に頭の中でなんども宙に飛び上がっていた。
フェラーリの男性は、助手席まで降りてきてくれてドアを開けてくれた。
リエはふと周りからの熱い!?羨望と嫉妬の視線を感じた。
それもそのはずだ、リエが逆の立場だったら同じ気持ちなっているのは間違い
ない。この熱い視線と素敵な男性の対応にリエは気を失いそうだった。
一旦息をすって落ち着いて足を運んで男性にリードされるがままドアの中
へ入った。車内はまるで飛行機のような機械を搭載していて、夢心地だった。
男性は勢いよくエンジンを吹かしてその場から走りだした。
フェラーリの男性は自分のことを名乗った
「ショーン上杉といいます。今日は社長から紹介をいただきましてお時間を
いただき有難うございます。」
ショーンさんっか、見た目もハーフっぽいからきっとお父さんかお母さんが
外国人なんだろうな。リエは勝手な妄想を膨らませていた。
リエは自分のことを自己紹介した。
「わたしはリエといいます。今日は社長に紹介いただいて本当にうれしいです。
社長の会社でプロジェクトマナジェーをしています。」
ショーン「そうですか。わたしもうれしいです。今日はすべてプランを
作ってきました。よろしいですか?」
ショーンは自信たっぷりで強引だった。
リエは今回はショーンにまかせることにした。
車はどうも六本木へ向かっているようだった。
まずは行き着けのオープンカフェへいきましょう。六本木のわき道に入った
ところなんですが、とても素敵でオーナーはもともとイギリスでカフェを経営
していた日本人なんです。そこのスコーンが手続きでとってもおいしんですよ。
オープンカフェでスコーンなんて素敵ですね。ショーンさんはイギリス
には行ったことがありますか?
はい、わたしは父がイギリス人なんです。母が日本人です。
えー、そうなんですか、それにしては流暢な日本語ですよね。
そうですね、母からずいぶん鍛えられたのと、日本には大学生のときから10年ぐらい住んでいます。
へえ、すごいですね。今は何をやっているんですか?」
今は会社経営をしています。イギリスのバッグメーカーと契約して日本で販売を
しています。今日のデートコースで会社も入っているので、後で紹介しますね。
それは嬉しいな。
フェラーリ、イギリス生まれ、会社の社長に、ジェントルマンときたかーーー
これは逆に穴を探すほうが難しいかも。。。。リエはショーンの完璧さに
圧倒されていた。
ショーンさんは失礼ですが、おいくつなんですか。
今年で40歳になります。
ではわたしと同じ年ですね。お若いのにすごいですね。
いいえ、わたしがここまでやってこれたのも人生に感謝してきたお陰です。
ショーンの返答すべて隙がなかった。
あっという間に時間が経ち、お目当てのオープンカフェに到着した。
ショーンは車を止めるとささっとなれた足取りで助手席にまわりこみ、
ドアを開けた。リエはリードされるままに降りて店内に案内してもらった。
そしてショーンは、店内の店員に挨拶してまわっていた。かなり親しくお
付き合いをしていていつも来ているのが分かった。
ショーンはリエを店内の人間に案内してまわり、席へついてエスプレッソと
スコーンを注文した。さすがショーンのお勧めだけあってスコーンは美味しかった。
リエとショーンはお互いにいろんな話をした。ショーンは時折ジョークを
交え中柄軽快に会話を続けた。
リエさんはご趣味はなんですか?
はい、趣味はテニスとブログですね
へえ、ブログを書かれるんですか、どういったブログですか?
そうですね、好きな猫の写真とかをのせて紹介したりしていています
リエさんはネコ派ですか。僕もネコが大好きなんですよ」
そうですね。わたしもイヌよりもネコですね。自分が自由な雰囲気が
好きだからかもしれません。
ショーンさんは日曜とかは何をしてるんですか?
そうですね、僕はテニス、ゴルフ、ダンス、後は日舞も趣味なんですよ
日舞とはめずらしいいですね。
はい、日本的な文化を勉強したいという思いが学生時代からあって、母の影響
で日舞を練習しています。これがなかなかおくが深いんですよ。
今度是非見せてください。ぜひ喜んで。あ、もうこんな時間だ、リエさんと
のお話がとても楽しくて時間を忘れていましたよ。
こうした普段だったら、、クサイと思う台詞もショーンにはとても様に
なっており違和感がなかった。
この後はわたしの会社によって少しご案内してから、夕食は青山のイタリアン
でと思っていますが、よろしいですか?
はい、よろしくお願いします。
ショーンはリエをフェラーリに乗せて再び走りはじめて、会社のある
六本木ヒルズへと向かった。六本木ヒルズの地下駐車場に車をとめた。
六本木ヒルズの30階に会社はあった。
会社名はPurityと書いてあった。Purityの意味は、純粋という意味らしい。
まさにこの会社名にショーンの目指すものを感じ取れた。常に純粋に物事を
追い求めていきこの場までたどりついたという信念が伺えた。
ショーンは会社のメンバーにリエを紹介して歩いた。こうした行動を
見るとショーンがあまり女性を連れてくることに慣れていないという感
じを得た。まわりの反応に照れくさそうに、そして嬉しそうにしている
ショーンからは女性の付き合いをこなしている感触はなかった。
そのギャップ感がまたリエを嬉しくさせていた。
会社の中へいくとなにやら、揉め事がおきていた。どうもお客様と
契約上の問題でもめているようだった。ショーンの会社Purityは米国
の親会社との連結決算のため日本の会社の経理状況を米国に説明しない
といけなかったのである。
最近米国の親会社が別の大手の米国会社に買収されたため、ショーンの
会社は日本の会計基準を説明しないといけなかった。当初は簡単に済む
と思っていたため、社長のショーンも今日は欠席してたのだが、どうも
まだてこずっていたところに
やってきたのである。
ショーンは事情を経理部長に聞いて、顔も険しくなっていた。米国の親会社
に対して今は経理上の問題として捉えられたくない。明日は投資家への説明会
があり、当然米国の親会社もカンファレンスコールで出席することになっている。
ショーンは、しばらく考え込んでいた。「リエさん、すみません、ちょっと
予想外の事態が起きていまして、ちょっとお待ちいただけますか?
もちろんです。」
すみません、すぐ戻りますので。
リエは待合室で待っていた。カンファレンスコールをしている部屋の
ドアが開いていて、たまたま隣で全部聞こえていた。リエは聞いた会話
を頭で整えていた。
そして、全部会話を聞き終えた後、にやりとしてショーンを探しにいった。
ショーンさん、ちょっといい?」
はい、すみません、お待たせして、まだ終わってないんですよ。
いや、別の件です。今、会計のことでもめていらっしゃいますね
はい、なんでわかったんですか?」
実は、わたしはCPAの免許を持っているんです
CPAとは---- Certified Public Accountantの略で米国の公認会計士の
こと特にCPAは他にはない監査の業務が許されており企業の財務諸表
が正しく作成されているのか訂正意見を述べることが出来ます。
ええ、CPAですって。リエさんが経理のお仕事をされているとは聞いてませんでした
あれ社長は自分の会社で働いていること言わなかったんだと、やはりちゃんと
自分のやっていくことの説明をしてなかったんだと思った。
リエは続けた
実は私はこの経理のプロなんです。米国法人の監査のスペシャリストなんです。
そ、そうなんですか。それはすごい。
ちょっとカンファレンスの会話が聞こえてしまい内容の感じだと私が
お手伝いできることだと思います。同じケースにぶつかった経験もありますし
ショーンはしばらく躊躇していた。
それも当然だろう。経理の情報を紹介とは言え、今日はじめてあった人に
簡単に話せる経営者なんていない。当然、リエも理解していたが、事情が
事情であり、どうしてもショーンを助けたいという気持ちがリエを常識から
はずれた行動をとらせたのである。
ショーンもその気持ちを分かったのか驚くほど素直にこのオファーを受けた。
リエさん、すみませんがお願いします。もちろんこのお礼は後で必ず。」
いいえ、お礼なんていいんです。後でお礼は食事をご馳走していただれば
それでうれしいです」
リエさん、有難う
そうして、リエは喧々諤々な会議室へ入っていった。薄暗い会議室の中には、
映像会議で相手側の米国サイドの面々が移っていた。
紹介します。こちらはCPAのリエさんです。わが社との臨時顧問
として会議に参加致します。
よろしくお願いします。私は過去には、米国大手の監査をした経験があります。
今回は臨時ですが、意見を述べさせていただきます。
リエは流暢な英語で話しをはじめた。
リエは現在の会計事務所に長く勤める間に10年ほど休職をしてアメリカ
でCPAの免許を取得し米国大手の会計事務所で勤務した経験があった。
そこでは凄腕としてならしていたのである。
10年のCPAの経験を経てリエは再び同じ会計事務所に帰任をしたのである。
リエは意見を述べる前に頭の中でもう一度状況を整理した。
今回一番問題となっているのは営業利益が前回提出したレポートより
少ないという点について米国側に異議があるのだと思います。
先ほど日本側の前回提出した会議資料を見せていただきましたが、あ
れは日本の会計基準に基づいたものであり、事業に関する以外の固定資産
の売却により営業外損益については、営業費用として計上されます。
よって、営業費用は損の金額だけマイナスとなり米国SEC基準に従うと
営業利利益が少なく見えますが、それはこういった基準の違いによるものです。
リエは米国会計基準と日本会計基準について熟知しており、その理解の差が
今回の議論の発端だと見抜いていた。そしてそれをずばり指摘をした。
ショーンは隣で聞いてすっかりと感心していた。
米国の経理サイドも納得した様子でリエの説明を聞いた。明瞭な説明だった。
この人はすごい。そしてそんなリエを心から知りたいという気持ちへ発展させていた。
米国の親会社側の経理もリエの説明を聞いて納得して会議は無事に終了した。
日本サイドのメンバーもリエに感謝をしていた。
そして何よりもショーンが救われた。明日の投資家会議もこれでうまくいくぞ。
ショーンは手ごたえを得た。
リエさん、すみません、こんな時間までお付き合いしてもらったからおなか
すいたでしょう。
いいえ、ショーンさんのお役に立ててうれしいですわ。
そして二人はフェラーリを飛ばしてレストランへ向かった。レストランはどう見ても
閉まっていたが、よほどショーンの力があるのか、お店は開けて待っていた。
「今日は実は貸し切りにしたのでどうぞ気兼ねなく食べていってください。」
なんと、この時間帯で貸し切りにするとは一体どのくらいのお金を使ったのか。
リエは驚いていた。
リエは家の近くまで送ってもらい家についたときはもう夜中の0時を回っていた。
今日は本当に夢心地のような日だった。ショーンさんとまた会いたい。
リエがこんな気持ちになるのは生まれてはじめてだった。
翌日になり、真っ先に社長に挨拶にいった。
社長、昨日は有難うございます。とても楽しかったです。素敵なお見合い
セッティング本当に感謝します。
は、、、?君、すっぽかしだんだろうに。先方から連絡きたぞ。待ち合わせ
場所にいないって。
ど、どういう意味ですか。私は確かにショーンさんと会いましたよ。
ショーンって誰だ?誰って、Purity 社のショーンさんですよ。
そんな人は知らんわ。俺が紹介しようと思ったのは、コンピューター
エンジニアの川西正太郎君だよ。
ショーンじゃなく、ショウタロウ?じゃ、人違い?
まったく、リエ君はおっちょこちょいじゃな。
リエは、待ち合わせ場所で他の人と勘違いをされてデートをしたのだった。
リエは動揺した。偶然とはいえ運命的な出会いをしてしまった。私は今後
どうすればいいのだろう。
で、どうする。正太郎さんとは今日は会えるんだろうね。
一度、約束してしまったので、いまさら白馬の王子様に会いましたなんて
いえないので、義理で会うことにした。
でもショーンさんにはなんて説明すればいいんだろう。でも一度で、
しかも偶然に会った人に私のお見合いの状況を説明しても迷惑なだけだろう。
そしてリエは社長に「はい」と答えた。
とにかく一度だけ会ってそれでおしまいにしてしまおうとリエは考えたのだ。
翌日、今度は間違えなくリエは正太郎さんと会った。
同じ場所で
すると青い文字で「レインボー商社」と書いてある社用車でやってきた。
どうやら営業なので社用車を個人で使用することも許可されており、デートで
ガソリン代金をうかすためによく利用しているとのこと。
先日はどうもすみませんでした。
いいえ、事情は社長から聞きました。気にしないでください。こうして
お会いしていただけるだけでも嬉しいです。
正太郎はショーンほどの好印象はないにしても、性格の良さそうな誠実な
男性だった。年としては50歳ぐらいだろうか。落ち着きもあり質素な
感じだった。印象もとても良かった。
正太郎はとても不器用でポケットに詰め込んだ、デートスポットメモ書きを
必死に読んでいったことのないレストランへ行こうとしていた。そして
電車で向かった先はなんと先日ショーンといったイタリアンだった。
このイタリアンは最近女性に人気があるみたいなんです。
リエは、どうかショーンに会わないようにと心から願っていた。
宇宙は否定形を知らない、こういう願いをかなえてしまうのだった。
そして、リエと川西が食事をしているときに、隣の席へショーンと連れがきた。
ショーンはすぐにリエの存在に気づいて、こちらへ歩いてきた。
リエは「しまった」と思ったが、ときはすでに遅し。思わず立ち上がり、
ショーン驚いた顔をして挨拶をしてきた。
失礼します。リエさん昨日はどうも有難うございました。どうもはじめまして
(川西へ向けて挨拶をした)そしてなんだか誤解で昨日は人間違えをして
しまったようで大変失礼しました。」
ショーンは隣に女性を連れていた。リエはちょっとショックだった。
やはり軽い男性だったのか。リエは川西と話をしていてもとなりのショーンが
気になった。ショーンもこちらをチラチラみている。
そしてしばらくしてリエはいたたまれなくなった。川西がそれに気づいたようで
そっとささやいた
リエさん、お店変えましょうか。私のよくいく居酒屋があるんですが、
そこで口直しでもしましょうよ。
リエは正太郎の気遣いがうれしかった。そしてショーンの席へ軽く挨拶をして
店を出て正太郎の行き着けの居酒屋へと向かった。
正太郎は、落ち込んだリエに必死にいろいろと話をかけてきた。不器用ながら
人の心に敏感なところにリエは川西のやさしさをみた。
正太郎の案内してくれた居酒屋はとても居心地の良いお店だった。まるで実家
にかえったような感覚の店だった。
とてもいいお店ですね。
でしょう。私は大好きなんですよ。ここの焼きおにぎりは最高ですよ。
じゃ、私はそれいただこうかしら。
二人はビール、焼き鳥、焼きおにぎりを食べて楽しく過ごした。
いやービール片手に焼き鳥とおにぎりを食べてると日本人で良かったなーと
思いますよね。くったくな笑顔を見せる正太郎にリエは安堵感を覚えた。
正太郎は沈黙を作らないように、必死にいろんな会話を続けた。
そして、最寄の駅で二人は別れた。
帰りの電車の中でリエは考え事をしていた。すると一通のメールが届いた。
ショーンからだった。
「リエさん、お話したいことがあります。明日会えますか。ショーン」
話ってなんだろう。もしかして、今日の女性のことなのかな。ちゃんと
会って自分の気持ちも確かめたほうがいいな。リエは会うことにした。
翌日ショーンとリエはショーンの会社の近くの喫茶店で会った。
ショーン「昨日は失礼しました。あの女性とは実は、リエさんと会う当日に会うはずだった。お見合いの相手なんです。銀座のやじや和菓子の前で待ち合わせをしていたんです。知り合いの社長の紹介で顔は知りませんでした。ただ当日は赤い服をしていると。」
リエは当日赤い服を着て同じ待ち合わせ指示を受けた。なんと偶然にも
二つの組が同じ方法で同じ場所で待ち合わせしていたとは。
そうですか、実は私も昨日フランス料理屋で会った人と同じ青い車と
青い服を目印に待ち合わせをしていたんです」
やはりそうでしたか。私も義理で昨日すっぽかしてしまい
社長から大目玉をくらいましたよ。なので昨日はああいう形でバッティング
にしてしまい本当に失礼しました。
リエはなんだか、ショーンがただの女たらしじゃないことにほっとしていた。
ショーン「私はリエさんと昨日運命的に出会うことが出来て本当に幸せでした。
あなたの仕事ぶり、そして冷静な対応。すべてすばらしいと思いました。
どうか私と結婚してください」
リエは唐突なショーンの言葉に予想していなく戸惑っていた。
リエは時間を下さいといってその場は別れた。
すると夜になり正太郎が会いたいというので家の近くの公園であったら、
リエさんのことがもっと知りたいと思いました。結婚を前提にお付き合
いをしてくださいと伝えた。
リエはなんと同じ日に二人の男性から告白されたのである。
翌日ショーンからのプロポーズを考えすぎたせいか、熱を出してしまった。
知恵熱というやつか。リエは会社を休んで家で静養することにした。
こんなときは独り身がつらい。ショーンから今日また会えますかとい
うメールが来たので、風邪を引いたので今日は無理と返事をした。
すると2時間後、家のドアベルがなって花屋からお届け物があった。
カードをみたらショーンから100本のバラのプレゼントだった。早く元気に
なってくださいというカードが添えてあった。ショーンらしい演出だった。
するとそこへ川西から電話があった。今日会えますかと聞かれたので、
風邪を引いているので、無理だと答えたら、2時間後に、ドアベルが鳴った。
そして川西が立っていた。リエは驚いて彼をみたら、なんと食材をたくさん
買い込み、ビタミンドリンクなども用意していた。
そしておかゆを作ってきたといってなべごと渡してきた。そのまま帰っていった。
リエは川西の不器用ながら体に気を使ったやさしさに感動していた。正太郎
にはショーンのような洗練されたセンスはない。今日のプレゼントがいい例だ。
ショーンがバラの花だったら、正太郎はおかゆとビタミンドリンク。
リエはどちらが心に響いたか考えてみた。
そんなときに親友のサチコが家にやってきた。それで今リエがおかれている
状況を相談してみた。するとサチコはきっぱりいいきった。
そりゃ、あんた答えは簡単よ。結婚っていうのは毎日顔をあわせるのよ。
そりゃ一番大事なのは、ほっとする関係でしょ。緊張感がある毎日なんて
いやよ。あきるわ。落ち着いた関係になれる人にしなさい。
サチコはきっぱり言い切った。
リエは、サチコの竹を割ったような意見に目が覚めた思いがした。
確かに誰がどう見ても白馬の王子様のような男性がいいに決まっている。
でもショーンさんと毎日一緒にいたら毎日フランス料理を食べるようなものだ。
正太郎さんとは毎日居酒屋のような落ち着いた家庭そしてつらいときには
ビタミンドリンクとおかゆを作ってくれるようなパートナーは幸せだ。
リエは川西を選んだ。自分でも意外なほど気持ちがスパッと決まった。
翌日ショーンさんにはお詫びの挨拶をして、そして川西と会って結婚
を前提に本格的にお付き合いをしたいと伝えた。
リエはふと考えた。
あの日偶然にも同じ待ち合わせの仕方をしてショーンと出会わなかったら、
正太郎の本当のよさは分からなかったかも知れない。
ショーンという今まで憧れの塊のような人間が現れたおかげで、
本当の大切な部分を知ることが出来たのだ。あの日の偶然がなければ、
きっと正太郎のよさは分からずにもっと良い条件の男性を探したに違いない。
憧れだけを追い続けたに違いない。
リエはこの偶然がくれた出会いに心から感謝をした。リエは正太郎との
結婚を決意した。川西と一緒にお互いの尊重しあいながら今後の人生を
歩んでいける幸せお実感していた。
人生にとって大切なのは華やかさではありません。
本当に心に大切なのはいかに自分の心が安がるか。毎日どきどきだとすぐに
飽きてしまいます。長いおつきあいが出来る方と一緒にいられるのが
本当の幸せですね。
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