人生を変える小説 by 魔法のネコ -2ページ目

人生を変える小説 by 魔法のネコ

即興小説を書いています。是非ご覧下さい

それはある雨の日の夜のこと、小林陽太郎は社会人一年目を迎えていた。

場所は小田原駅の夜行列車。当たりは一車両に十数人ほどだろうか、

すいていたのでそれぞれ一席づつ距離をあけて座っていた。

「ねえねえ、聞いた?たかこちゃんが告白されたんだって」

「告白って誰に?」

ちょうど斜め前に座席に座る大学生らしき女性二人組の会話から何やら

恋愛話らしき話題が聞こえてきた。

そんな話を横目で聞きながらぼんやりと陽太郎は夜の雨を見つめていた。

時間は夜の11時30分。まもなく夜行列車が出発する。

一度出発したら静岡までノンストップだ。なんだか気持ちがワクワクしてきた。

夜行列車というものに乗ったことがなかった。夜通し走り続けて夜が

あけたら別の世界に到着するという展開に期待感を持っていた。

一方、そんな中で眠れない夜を過ごしそうな陽太郎は頭の中で恋愛のことで

いっぱいだった。

恋愛って一体何なのか? なぜ人は人を好きになるのか?なぜ人は人を

傷つけるのか?これまで陽太郎は恋愛についてここまで深く真剣に考えた

ことはなかった。

実は、彼がこの夜行列車に乗るのにも、そして恋愛について深く考えるのにも

深い訳があった。

雨は次第に強さをましていった。

その一定の雨音が次第に頭の中に、こだましてある記憶をよみがえらせた。

それは今からちょうど半年前のことだ、陽太郎は大学卒業前に同じ

コンビニチェーン店でアルバイトをしていた伊藤ミアという女性と付き合っていた。

大手コンビニのラーソン高円寺店は北口と南口に一店舗づつ構えている。

陽太郎の自宅のある北口に勤務していて、伊藤ミアは南口にいた。

二人の出会いは突然に訪れた。

ある冬のクリスマスイブの勤務の日、陽太郎は北口店長から南口店長からある

ファイルをもらってきてほしいと頼まれて、 南口へ使いへいったのだった。

到着してからすぐ、レジにいた店員の女性に声をかけた。二十代前半だろうか。

陽太郎と同年代に見えた。ちょっと小柄でぽっちゃりしていて陽太郎の好みのタイプ

だった。それが伊藤ミアだった。

「すみません、南口店から来ました小林と言いますが、店長さんはいらっしゃいますか?」

「あ、いますけど。今、ちょっと手がはなせませんね。 」

「そうですか、ちょっと待たせてもらってもいいですか?」

「あ、だったらちょうどいい、待ってる間にレジをやっていてもらっていいですか?」

「え?」

突然の依頼に不満そうにつぶやくがその暇もなくすぐに伊藤ミアは消えていなくなった。

レジにはたくさんの人だかりが並んでおり、またタイミングよくラーソンの上着

もおいていってくれた。

客のいらだちを感じ取った陽太郎は仕方なく慣れた手つきでレジをうちはじめて

客をさばきはじめた。

「なんで俺は南口で仕事をしてるんだ?」自分に問いかけたが、その前に客を

さばくことを優先した。

ちょうど最後の人が終わったときに、ミアがタイミングよく顔を覗かせた。

そしてミアに対して陽太郎は言った。

「っていうか、いきなりなんなんだよ。なんで俺が急にレジをやらせれるのかわかんないよ」

するとミアが答えた。

「ごめんごめん。漏れそうで、相当我慢してたんだ。店長は電話中で変わって

くれないから。すごい助かったよ。」

陽太郎はようやく事態を理解して頷いた。

「そうならそうと一言いってくれたらいいのに」

「もう一言でもしゃべったら、もれちゃいそうだったのよ」

笑いながらミアはベロを出して言った。

「だって、本当にやばかったから」

二人は見つめあって笑い合った。

そこへ南口の店長がやってきた。

「なにやってんだお前ら?」

二人は笑顔になった。

それからだった。ミアと陽太郎の付き合いがはじまったのは。

土曜日は二人ともシフトがないので、中野のブロードウェイを歩いた。

今日は何かお目当ての買い物があるとかで、洋服店にでも立ち寄るのか

と思いきや、到着したのは食器店だった。

「何それ?茶碗?」陽太郎が聞く。

「そう」

ミアは500円で購入していた。

そして包みももらわずにすぐにハンドバッグにしまう。

帰りは中野のランチを近くの定食屋で取ることにした。

すると、ミアは先ほどしまった茶碗を取り出して、除菌シートで丁寧にふいて

使いはじめた。思わず陽太郎はつっこみをいれる。

「なぜ茶碗を取り出すの?ここはレストランだよ。茶碗ぐらいあるよ」

「今日ごはん食べるでしょ。マイ茶碗が必要なのよ」

「マイ箸は聞いたことがあるけど、マイ茶碗はあまりない。」

「この茶碗はね。表面が凸凹していて。ごはんつぶがつきにくい加工を施しているのよ。

「どうして意味が分からないよ。」

「もしかしてあなたはごはんつぶ残す人?」

冗談か真剣か分からないほどまじめそうにミアがいう。

「私は秋田出身なの。ごはんは農家の人が命をかけて大切に作ってくれたから、

粒まで食べるのが私のポリシーなのよ。ごはんつぶ残す人はきらい」

「あ、俺は残さない人だよ。」

「私が今、注意したからでしょ。言わないで試すべきだったわね。失敗した」

ミアが注意しなければ陽太郎はごはんつぶをおそらく残していたと

思っていたので、正直助かったと心の中で肝を冷やしていた。

一見軽そうにも見えるが、ミアは農家のことまで考えてまじめな

ところがかわいいと感じていた。

確か、ミアとつきあって間もないときに、似たようなことがあった。

陽太郎が熱を出して風邪を引いたときのこと、ミアは陽太郎の家まで来て

くれて、近くの自動販売機のCCレモンを10本ほど買ってきて、それを一本

一本腕でこすり、「今、これに私の愛情を注入しました。これで直ること間違いない」

なんて言ったこともあった。そんな行動が陽太郎をめろめろにさせていた。

そんな順調に付き合いが続いてきた三ヶ月後のこと、

ある事件は起きた。

陽太郎は大学を卒業して自動車部品会社に就職を決めた。大事な社会人一日目

はしっかりと睡眠を取りたいと考えて人生ではじめて携帯の電源を切って

寝ていた。いつも陽太郎はミアとのメールのやりとりを遅くまでやっているため、

常に携帯はつけっぱなしなのだ。

そんなときにタイミングの悪いことがやってくるものだ。

一晩ねて、起きてみると。メッセージが入っていることに気づいた。

留守番電話が10件も入っていたのだ。すべてミアちゃんだった。

メッセージを聞いてみたが、どれも何も言葉は入っておらず無言だった。

なんとなく向こうしくしく泣いているような声が入っているが定かではない。

その日の晩のこと、ちょうどミアちゃんが入っているシフトだったので、

帰りにコンビニによってみることにした。しかしミアちゃんは休みだった。

そこで家までいくと、玄関まで出てきた。

「あ、ミアちゃん昨日は電話くれてありがとう」

「ああ、ううん別にもういいの」

「どうしたの?何かあったの?」

「もう大丈夫だから」ミアは小さくかぶりを振る。長い前髪が風に流れる。

彼女の目がどうも腫れぼったく見えるのは気のせいだろうか。

「どうした具合でも悪い?」

するとミアはびくりとおびえた動物のように動いた。

秋田出身の白い肌がよいいっそう血の気を失うように白くなった。

どうしたのだろうか。陽太郎は何か異変を感じていた。

「ミアちゃん?」

と呼ぶかけようとしたら、そのままミアちゃんは

「ごめん忙しいから」と言ってドアを閉めてしまった。

陽太郎は先日のミアの行動に異変を感じたままだった。

そこで先日高円寺の阿波踊りの合同コンビニ出店で知り合いになった

南口店の知り合いに連絡をしてみことにした。

「ああ、陽太郎です。先日はどうも」

電話の相手は鹿取といった。鹿取は南口店の店長代理をしている人で。

ミアの上司にも当たる。

「実はミアちゃんなんですけど、様子がおかしくて心配で連絡したんです」

「ちょっと具合悪くてさ、今日も休んでるんだよね」

「そうですか、何か他に聞いてませんか?」

「まあね」

鹿取も何か言いにくそうだったが、電話上でそれをつっこむのも変なの

であえなく辞めて受話器を切った。

ふうと息をついて、陽太郎は唇をかむ。彼は何か心配ごとがあると昔から

よく唇をかむ癖があった。

それから一週間たったが、ミアちゃんはコンビニのバイトも休み、

電話も取らない。陽太郎は不安を感じたので思い切ってミアちゃんの家を訊ねた。

彼女のバイクは家の外に止めてあるので、家の中にはいるようだった。

呼び鈴を何度か鳴らすが出てこない。電話も取らない。

どうやら居留守を使っているようだ。

これ以上は迷惑がられるだろうと考えて、

近くのコンビニまで走り、ミアちゃんの好きなCCレモンを10個ほど買って

「元気を出して勇気を注入」とメモを書いてドアノブにぶら下げた。

しかし2週間たってもミアちゃんからまったく返事がなかった。

ミアちゃんに会いたいと想い続けたが、何も音沙汰もない。

あの日の携帯の電源を切っていたことの後悔が何度も襲ってくる。

どうして、あのときに。いったいなんの電話だったんだ。きっと

あの日に何かが起きたんだ。

すると突如、携帯電話が鳴った。

表示画面を見たら「鹿取さん」と書いてある。

「もしもし陽太郎です」

「ああ、鹿取です。今日時間とれるかな?」

「はい、大丈夫です。」

「実は、ミアちゃんずっと休んでいたんだけど、今日正式に辞めちゃってさ。

ちょっと陽太郎君と話したほうがいいと思ってね。」

「分かりましたどこで会いますか?」

鹿取と駅前の貴族喫茶という喫茶店で待ち合わせをした。

狭い階段をあがった先にあるこの店はジャズ喫茶で有名だった。

ミアとも何度か訪れたことがある。陽太郎もジャズが好きなので

このコーヒーが好きだった。

どうやら先に陽太郎が到着したようだった。先にコーヒーをオーダーする。

5分後にはコーヒーが運ばれてきた。

手元のカップを手にとり、熱いコーヒーを一気に流し込む。急にカフェイン

をとったせいか頭がなんだかびりびりしている。

一体どんな話が出るのだろうか。この2週間ミアちゃんのことばかり考えて過ごしていた

目の前に彼女の現れてはそしてまた消えていった。

5分後に鹿取が現れた。

「やあ、元気?」

「はい、おかげさまで」

「仕事も順調みたいだね。どう社会人は?」

「そうですね。やっぱり思ったようには行きませんね。とくにコンビニのときは

お客さんの顔が見えたけど、今の自動部部品の仕事はお客さんが見えなくて。」

「なるほどね。君は焼きそばをお客さんに売ったりするのが好きだったよね」

「はい」

「北口店長が君がいないと北口店はまわらないっていっていたよ。」

鹿取はやってきた紅茶に息をはきながら冷めた部分だけをすすりながら飲む。

「いただきます」小さな声をだして飲み始めた。

「でね、話というのは、ミアちゃんのことなんだけど、君は付き合いをしていた

らしいから一応いっておこうと思ってね。彼女は2週間前の夜にストーカーに

襲われたんだよ。知ってた?」

「いいえ、知りませんでした。それって4月7日のことですか?」

「ああ、確かそうだよ。」

やはりあの入社式の前日の夜のことだった。

「それはどういうストーカーだったんですか?」

「実はミアちゃんはストーカーにつきまとわれていたみたいでね。どうも相手は

以前につきあっていた彼みたいだ。あの日は後ろからバイクで襲われて。」

「それでミアちゃんは怪我をしたんですか?」

「いや、後ろからかばんを取られただけみたいけど、精神的にきついよね。

俺と俺の彼女で彼女の家に2日ほど泊まってあげたよ。

以前から手紙とか取られてどうやら同じ犯人みたいだ。どうも以前から

つきまとわれたりしたみたいで、彼女はそのままコンビニも辞めたみたいだ。

どうも以前、コンビニに来ていた客だったみたいだな。

ミアちゃん人気ものだったからな。」

「そうですか、知りませんでした。なぜ言ってくれなかったんだろう」

陽太郎は事件のことよりも、自分に一言も言ってくれないことがショックだったのだ。

「俺が思うに、きっと君に嫌われたくないからじゃないかな。実はこの件を店長に

話したら、逆に店長がミアちゃんに「お前が八方美人だからストーカーが

ついたんだっていったんだ。

「それってひどくないですか?」陽太郎が答える。

「いや、実は、同じような被害が今まで7件もあったらしい。つまりすべて全員

つきあっているようなことを男は言っているらしい。もちろんミアちゃんには

自覚はない。ひどいな。でも、実はミアちゃんは確かに明るくて誰にでも

声をかけるから。でも誰にでも好きになられるそぶりをふりまいていた

のは確かだ。俺にだってそんなそぶりをしていた。勘違いをされてしまった

というのは否めない。彼女自身も思い当たるふしがあるから君にもそういう

指摘をされるかもしれないと怖かったんじゃないかな。言い方は悪いが、

君ももしかしたら被害者の一人なのかもしれないぞ」

「そんな」

「まあ、深く考えるな。でもいずれにせよ。彼女は大丈夫だけど、彼女から

気持ちが出てくるまでそっとしておいてあげたらどうかな。」

「わかりました。」

正直、鹿取さんの話はショックだったが、陽太郎は自分がミアを好きなことには

変わりがないので、今度連絡が来たら彼女に明るく接しようと考えていた。

もうすぐ彼女の誕生日なので、陽太郎は彼女が行きたがっていたレストランを予約していた。

それから一週間後、とうとうミアちゃんから連絡が来た。

「久しぶり」

「元気してた。今日はある店を予約したからそこへいこうよ。」

「ああ、う、うん。」あまり気乗りじゃない様子に見えたが陽太郎はきちんと

気持ちを確認するのが怖かった。

そこは前からミアちゃんが行きたいといっていた高級イタリアンレストランだった。

「まさか、ここって」ようやく彼女も気づいたようだった。

そして驚いたことに涙を流していた。

前菜が運ばれてきたときも、彼女の涙は止まらない。

「ミアちゃん、泣かないでよ。今日はせっかくの誕生日祝いなんだからさ」

それに気づいたミアちゃんの涙はさらに止まらない。あまり激しく泣くので

店員や周りからの注目を浴び始めていた。

「ううん、違うの。陽太郎の優しさがつらくて」

「どういう意味?」

「実は別れてほしいの」

「どうして」

「。。。。。」

ミアちゃんは無言だった。

「ごめん」

そういって無言でミアちゃんは走り去った。

そこへタイミングよく、バースデーケーキがやってきた。

ケーキを持ってきた店員はそっと気まずそうに聞いてきた。

「お持ち帰りしますか?」

陽太郎は失意の中、用意していた指輪とケーキを持ち帰ったのだった。

陽太郎は再び駅の社内へ意識を戻した。

雨の小田原を見つめた。電車はぐんぐん雨の中へ突き進む。

そして、再び近くの女性二人組の会話へ聞き耳を立てる。

「ねえ、男女の愛情ってどこまで強いのかな?」

「どういう意味?」

「想いって強ければ、電波みたいに届くかな。」

「うん、届くと思うよ。ある人が言っていた。恋愛という強いシグナルは電波と

一緒だから、だし続けていけばきっと届くって。それはどんな形で現れるかは分からないけどね。

「そうか、じゃ、私もシグナルおくるぞ」

その会話を聞いて陽太郎もミアと同じ会話をしたことを思い出した。

「もし陽太郎と私が、別れても、あなたは落ち込まないでね。

もし私のことが本当に好きだったら、雨に向かって思いをぶつけ続けてね。

私は雨というものは思い出つながっていると信じてるのよ。だ

から雨が振ったときに、私への想いを強くぶつけてきっと違う形であなたにかえるわ。

あなたと別れたときに私の涙は雨となってあなたの愛につながるかな。」

「どうして別れ話なんかするの?やめようよ。」

「だからたとえ話よ。」

なぜミアちゃんは突然に別れを切り出したのだろうか。

あの事件はどうして自分と別れるきっかけにしてしまったのか。

やは罪悪感が生まれたからだろうか。やはり自分は八方美人の一人だったのだろうか。

様々な憶測が頭をよぎる。

もし入社式の前日に電話を取ってあげていたら関係は

続いたいたんのだろうか。

陽太郎が静岡駅に到着してからも雨はまだ振っていた。

気候はまるで冬のように寒い。

陽太郎はミアに振られた失意のままありったけのお金をポッケにいれて

夜行列車に乗ったのでまったくお金を持っていなかった。電車代を購入したら

ポケットには1000円しか残っていなかった。

ホテル代にもならないので、近くのカフェで500円のカフェラテを

注文する。最後の500円は万が一のために取っておこうと考えていた。

すると、窓の外から浮浪者が見えた。

年齢は70歳ぐらいだろうか。女性の浮浪者だ。一体家族はどこにいるのだろうか。

なぜ彼女は浮浪者になったのだろうか。いろんなことを想像してみた。

カフェのゴミ箱をあさっている。どうやら店員が文句を言われているようだ。

陽太郎は、ポケットの500円を手にとって、カフェの店員をつかまえた。

「あの外の浮浪者の人って?」

「ああ、そうです。ゴミあさりの常連さんですね」

「そうなんだ。女性っていうのもめずらしいね」

「ここらへんじゃ偏屈ばあさんって有名ですよ」

「そうなんですか。あのこの500円であのおばあさんにマフィンをあげてもらえますか?」

「え、いいんですか?」

「僕から言わずに、お店で余ったからって言ってもらえますか?」

「まあ、それはかまいませんけどね」

店員は陽太郎に言われたとおり、マフィンを2つ浮浪者の女性に渡していた。

すると、浮浪者の女性は店員に何度も頭を下げていた。

そしておいしそうに雨の中でマフィンを食べていた。するとそれをみていた

陽太郎はマフィン1つに暖かいコーヒーでもあげれば良かったと後悔をしていた。

雨だから寒い思いをしてるんじゃないだろうか、そんなことを考えていた。

しかし自分も人のことを言っていられなかった。

全財産の500円を浮浪者にあげてしまい、陽太郎はその日は公園の段ボールで寝てすごした。する

と、寝ているときに、数名の男性が陽太郎の下へやってきた。

ずるずると寝ているまま引きずられる。

そして、ポケットの中をさぐられている。抵抗しようと手を動かそうと思ったがしばられて動かな

い。

「早くしろ」男性の一人が言う。

「あ、あったこれでいいや」

陽太郎のiPhoneとパソコンを奪われた。唯一の貴重品だった。

頭が混乱していた。まさか自分が襲われるとは想像していなかったので、恐怖が浮かぶ。暴力をふる

われているが、体の痛みの感覚もない。そして、後ろを見ると一人が金属バットを振り上げている。

「やばい」そう思った瞬間に、向こうから人が走ってきた。

「おい、やめろ。お前ら」

意識が遠のく中で、走ってきた中年男性が追い払うのを確認してから

目の前が真っ暗になった。

そして意識がめざめた。

どこかの部屋で寝ていた。体をさわるとあちらこちら包帯がしてあった。

治療をしてくれたようだ。先ほどの中年男性だろうか。

当たりを見あわすとどこか落ち着く匂いがしてきた。みそ汁だ。

すると、ドアをノックする音がした。

「入るよ」助けてくれた中年男性だった。

「大丈夫かい?」

「はい、助けていただいたおかげで」

「いや、危なかったよ。警察には通報しておいたがひどい奴がいるもんだな。」

「そうですね」

「だいたい君はなんであんな所でいたんだ。」

「実はお金がなくてあそこで寝ていたんですよ」

「まったく無謀な」

「そうですね。あ、痛い。」

「すまん、今は無理に話しちゃいけないな。今、下でうちの者が朝ご飯を

作ってるからまずは食べて直して家に帰りなさい。」

「ありがとうございます。」

そう言って着替えを借りてから、下へおりると立派な朝食が待っていた。

台所ですてきな小柄な女性がいた。明るい笑顔はミアを思い出させた。

「おはようございます」

「あれは俺の娘だ。名前はミアだ」

「み、ミアさんって言う名前なんですか?」

「そうだが、それが」

「い、いえ別に。知り合いに同じ名前の人がいたので驚いて」

「そうか、ミアなんて名前はどこにでもあるだろう」

「まあ、座りなさい。ミアは娘だが、料理がうまいんだ。

彼女の料理の中で絶品料理があるんだ。どうぞ」

といって、出てきたのは、ふんわりおいしそうなマフィンが2つ。

雨の中で、浮浪者へ与えたマフィンがこんな形で戻ってくるとは。

陽太郎の優しさが、奇跡を起こしたのであった。

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沢口貞男は、平田満と焼き鳥屋にいた。「何年ぶりだ?」と平田は言う。

「そうだな二十年ぶりぐらいだろうか」とカウンターに座る。

二人とも共に同じ串焼きセットとビールを注文する。丁寧な店長が応対して

くれて気分も良い。沢口と平田は共に同じ大学を卒業して二十年ぶりに会う。

お互いに会社の課長となり子供も高校生の女の子がいる。

 場所は新宿駅のガード下、その思い出横町と呼ばれる焼き鳥屋にいる。

学生時代に通った小さなカウンターに入ると見慣れた顔の女将がいた。二十年ぶりの再会

にはふさわしい場所だ。

「会社じゃ課長だが、家じゃ平社員だ。」平田が言うと。

「ほんと、俺も家で同じだ。立場狭いな、俺は平社員というより契約社員という

感じだが」まじめな顔で言う。

「契約社員?」

「そう、だって保険もないし、いつでも切りやすい立場にいる」

契約社員か。ため息をつくと同時に生ビールがやってきた。

「じゃ、契約社員に乾杯」しみじみと二人は泡で一杯の冷えたジョッキを飲み干す。

「あのさ前から聞きたかったんだけど、沢口のとこって実際はどうなんだ娘さん

とはうまくいってるのか?」

「変わらないな、いつも馬鹿よばわりだ」

「何それ」

「娘はもっとひどい。ばい菌扱いだ。」

「ばい菌って、ひどいな。一体何をしたんだ?」

「さあ、思いあたらないな」

「なんかあるだろう。」

「いや、さっぱり」

「じゃ、お風呂あがりはどうしてる?」

「どうしてるって、なにを」

「下着姿で娘と顔を会わせるか?」

「ああ、もちろん」

「まず×イチだな。」

「なに、それもだめなのか?」

「当然だ。思春期の娘の前で下着姿はデリケートがないぞ。俺は全く見せない」

そこへ串焼きセットがやってきた。

「じゃ、次だ。奥さんの誕生日や結婚記念日に花束は渡したか?」

「いいや、まったく。」

「×2だな。母親ってのは娘の影響が大きいんだ。母親が味方か、敵かで影響力

が多いにかわる。

「そうか、俺は大切な二つもだめなのか。」

「俺はこれを10歳の頃からやってるぞ」

「そうなのか、それで平社員の立場なら、俺はどうなるのか。」

「まあ、そんなにめげるな。実は俺も偉そうなことは言えない。ある大きな

きっかけとなることがあったんだ。」

「それはなんだ?」

「痴漢だ」

「痴漢をしたら、尊敬されたのか?」

「あほ!違うわ。痴漢を撃退したんだ。通勤電車で破廉恥な奴がいてな。

そいつの眼鏡をとって、へし折って警察へ突き出してやったわ」

平田は190cmの柔道家だ。それに比べて沢田は150cmの将棋家だった。

「お前と同じようなことなんか出来ない」

「まあ、俺のように眼鏡をへし折れとは言わない。だが、勇気を娘に見せる、

それが大切なんだ。その姿勢だ。あれ以来、俺は多少のことがあっても尊敬

される。ようは行動力だ」

「俺だったら、即座に、誰かー助けてーって叫ぶね」

平田は本当にしそうだなと疑いながら、細い目で見ていた。

テレビからは芸能人のニュースが流れている。

いじめはやめましょうキャンペーンの光景が映っていた。

政治家たちがリレーをしながら「いじめをやめよう」とコメントをするのだ。

「ほら、あれを見ろよ。」焼き鳥のくしでテレビをさしながら平田が言う。

「今、話題の芸能人を集めて、いじめをやめようって言われて、いじめっこが感動して辞めるか?」
「やめないね」
「だろ。あれは、ただのお金集めなんだ。本当に尊敬を集めるには、行動だ。」
「行動か」
「で、お前は何を出来るのかを見せるんだ。貞男って名前は正しいことをする

テイの男だ。そういう思いで両親はつけてくれたんだろう。お前の名前を」

「ああ、その通りだ。」沢田は声をややあげて答えた。

「いいか、この後は特訓だ。」

「なんの特訓だ」

「痴漢に恐われそうな女性がいたら、助けるだ。俺が簡単な護身術を教えてやる。」

「護身術って言われてもな。催涙スプレーを使うわけにはいけないかな。」

「あほ、そんな余裕はない。第一道具に頼るのは男じゃない。」

男、男って、言われてあまりの硬派な言いぶりに笑いそうになってしまったが、

真剣に話してくれている平田の手前笑いを抑えた。

「で、護身術って、何を教えてくれるんだ?」

「大外刈りだ。」

「大外刈り?そんなのが聞くのか?」

「聞くんだ。特に素人には簡単でちょうどいい。」

「護身術つていうからには、一本背負いなんかが格好がいいと思うが」

「ないない、お前には無理だ。一本背負いをなめるな。

柔道家でもなかなかむずかしんだ。」

平田は調子づいたのか、日本酒を注文していた。

そして、護身術の話題がどっとあふれて一時間ほど続いた。

どうにかようやく話を別の話題に戻した。

締めの茶そばをすすりながら、沢田は娘のことを考えていた。

ばい菌扱いをする娘に尊敬されるっていうことが想像できなかった。

「ほんと行動だな」再び視線をテレビに戻すと、今度は政治家が

できもしない公約を言葉たくみに並べていた。

行動出来ない政治家に何を期待するのか、平田の言葉を改めて考えていた。

その日は、酔っぱらい二人が公園で二人で抱き合う姿を恐ろしげに横目で

見る人がいた。なぜなら、平田と沢田は大外刈りの練習を声を出して必死にやっていたのだ。

「おい、怪しまれるぞ。離れろよ。」

「大外刈りは抱きついてやるもんなんだ。いいから集中しろ。いつか役に立つから

それから数週間後、沢田は娘から相変わらずばい菌扱いを受けていた。

そしてその日は久々に残業がなく、午後8時頃に駅前の公園を通っていたとき

だった。公園の茂みから、女性のうめき声が聞こえた。

最初は、カップルがいちゃついているのかと思って、その場を去ろうとしたが、

どうも気になっていた。

すると、戻っている最中に一瞬だけ、キャという声が聞こえた。やはり

これは女性が襲われているのか?そう考えてみた、危険だ。そう頭の中で聞こえた。

このまま逃げるほうがいい。この女性を助けたところで、平田の言うようなヒーロ

にはなれないかもしれない。相手はがたいもよくて、若い不良だったらどうする。

そう考えると恐怖が沢田を支配した。沢田は、そのまま数分止まったままになった。

「逃げろ」「逃げるな」その二つの言葉が支配した。

すると、射るような音が聞こえた。確実におかしい。するともみ合う二人が

茂みから顔を出した。

女性の顔は見えないが、男の顔は見えた。予想通りの男であるとういことが恐怖感

をさらに募らせる。相手は沢田の顔を見て、楽勝と思ったのか、逃げるところか

立ち向かってくる。羽交い締めをされて死にそうになる。

意識が徐々に遠のく、平田に教わった大外刈りが発揮出来ないので、もう一つの裏技を

教えてもらっていたことを思い出す。

「いいか、沢田、もし羽交い締めにされて、大外刈りを発揮出来ない場合は、足で蹴り上げろ」

「何を?」

「xxxxを」


そして、沢田は、思い切り、男性の急所を蹴り上げた。すると、

男はうめき声をあげてうずくまる。

そして、沢田は女性を助けにいこうと、向かうが、途中で、男が意識を取り戻

したことにきずく。

そして、考えた。

「ここが、大外刈りのチャンスだ」

沢田は、走った。そして抱きついて切り上げて倒した。

大きなずしんという音とともに、気づいたら、男は気を失っていた。

「おい、これって、やっつけたんだよな」

沢田は驚きの表情で男を見つめた。そしてしゃがみこみ、

事態の大きさを改めて思い返す。

女性は襲われていたのだ。もし沢田が倒さなければ、事件になっていた。

なぜなら、男はナイフを持っていたからだ。

沢田は、思考がついていけてない中で、女性を助けなくてはいけないと思い、

声をかけた。

「大丈夫ですよ。男は倒しましたから。」

年齢は高校生ぐらいだろうか。その女性は泣きながら手を差し伸べて立ち上がる。

そして、驚きの声をあげる。

「お、、、、おとうさん?」

その女性は娘だったのだ。はじめての勇気が襲われている娘を助ける行為になったのだ。

娘は塾の帰りに知らない男から襲われて茂みに連れ込まれていたのだ。

娘は沢田に抱きついて泣きじゃくる。

「大丈夫だ。家に帰ろう」沢田は娘と家に帰る。

翌朝の沢田家の食卓。

「ちょっと、あなたごはんよ。まったくいつもとろいんだから、

ねえ、綾子も言ってよ。お父さんに一言。」

「お父さんは疲れてるんだよ。寝かしてあげて」

「めずらしいわね、何かあったの?」

「ううん、なんでもない」そう言って父親にウインクをした。

娘と父の関係が今後も友好関係になったのは言うまでもない。


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「この作品は2009年12月のクリスマス企画で配信した作品です。題名はもう一つのサンタクロース物語です。espresoさんの暖かいコメントを読んで、アップすることにしました。」


ある雪の降るクリスマスイブの夜のこと主人公の明日香は5歳の女の子だ。

この日は期待を胸いっぱいにもちながら布団にもぐっていた。

今晩はあのサンタクロースがやってくる日だ。

夜中の0時に回るまではおきていられたが、覚えているのはそこまで。

次に目が覚めたら朝を迎えていた。寝る前に枕元においた大きな靴下

の中に目をやると、そこには靴下一杯にお願いしたおもちゃが入っていた。

サンタクロースはやってきたのだ。明日香はとても不思議な気持ちで一杯だった。

サンタクロースさんは一体どんな人なのだろうか?本当に存在したのだろうか?

明日香は本当のサンタクロースについておばあちゃんに聞いてみた。

実はおばあちゃんはノルウェイ出身だったのだ。

ノルウェイと言えば、サンタクロースが生まれた土地だ。おばあちゃんは

サンタクロースについてかたりはじめた。

「サンタクロースさんは本当にいるんだよ。私が子供の頃に聞いたお話を教えてあげよう。

クリスマスツリーのおかれたリビングの暖炉の前でおばあちゃんが語りはじめた。

むかし、むかしあるギリシャの村でニコラウス君の伝説がある。

実は彼がサンタクロースのモデルだというのだ。ニコラウスは子供のころから

真面目でやさしい性格だった。ニコラウス君はいつもいつも本をたくさん読んでいた。

図書館でたくさん本を借りていた。ニコラウス君はとてもまじめで将来は人を

助けられる人になりたいと考えていた。

そんなニコラウス君は両親と3人暮らしをしてつつましく暮らしていたが、

彼の人生を変える大きな出来事が起きた。14歳のときに

両親が病気で亡くなってしまったのです。両親はかえらぬ人になり、ニコラウス君は

大変悲しみました。ニコラウス君の父は会社の社長で世界中に広がるお菓子会社の経営者でした。

母は不動産王でギリシャで知らぬ人はいない人でした。両親が亡くなったことで

ニコラウス君に莫大な遺産が入りました。ニコラウス君はお金の使い道について考えました。

生前に、お金はくれぐれも良いことのために使うように父親から言われたいたのだ。

世界中にはもっと自分より苦しみを味わっている人がいるはずだ。そんな人たちを助けてあげよう。

ニコラウス君はそう決心したのです。そこで世界を知るためにニコラウス君は旅へ出かけました。

世界中の人と会って、自分の目で確かめてみようと考えたのです。

しかし初めての旅なので、寂しさもありました。そこで、旅のお供として愛犬たちを連れて

いくことにしたのです。彼が大切にしている8匹の犬です。

ニコラウス君は8匹の犬とともにまずはスペインを訪ねました。

そこである事件に遭遇します。たまたま宿にしていた場所の近くにあったレストランがあり

ました。ニコラウス君はオランダからはじめてスペインにやってきて寂しい思いをして

いるときに、そのレストランの主人がとてもよくしてくれて二階の宿を安く提供してくれたのです。

ニコラウス君がまずしい貧乏学生だと勘違いしたのです。ニコラウス君はお金のことは黙って

いました。お金持ちだと知ると人はみんな態度が変わること父からの教えで経験わかって

いたからです。それまで親戚でもない人がニコラウス君におべっかをつかったり、

友達でもない人がお金目当てにすりよってきたりしてたいていの場合はひどい結果に

なります。ニコラウス君はうんざりしていました。そんなとき以前から興味あった

スペインにやってきて、いい人と出会ったので、今度は気をつけようと考えたのです。

レストランの家族は大変仲良く一生懸命働いていました。そんな姿に感動をしました。

家には3人の娘がいました。娘はみんな仲がよく店の手伝いをしていました。

長女はベロニカ18歳、次女はサラー16歳、三女が、クラウディア14歳でした。お母さんは

病気で早くなくなっており、姉妹の3人が協力して助け合っていました。

ある日この一家に事件が起きました。ある晩のこと、ドカドカと大きな音を立てて

柄の悪い3人組がレストランに入ってきました。そしてあろうことか、長女の3人の娘に

ちょっかいを出してきたのです。ニコラウス君はすぐに間に入っていきましたが、

力ではかなうはずもなく投げ飛ばされてしまいました。

3人の柄の悪い男たちは、レストランの主人に向かっていいました。

「おい、おっさん、早く金返せよ」

「ちょ、ちょっと待ってください。もうすぐ返しますからどうか家には来ないでください、
お客さんもいるんですから」

「なんだって!約束も守れないレストランでご飯食べたら悪い人間になっちゃうよ、
ねえ、お客さん聞いてくださいよ」

そう言って男たちは客を脅した。

驚いた客はおそおそと店を出ていってしまった。

そして男たちは主人に明後日の午後3時まで金を全額の573,598クローネ(

米国ドルで10万ドル)を返せと迫って出て行った。

男たちが帰った後、店の主人は家族と怪我をさせたニコラウス君にあやまり説明をした。

主人の説明によると、店の経営が苦しくサラ金から借金をしてしまったというのだ。

そして期限が過ぎても返せないのでやつらがやってきたのだと。しかもひどいことに

高い金利であることを言わないで契約をしてしまったというのだ。

やがて3日後がやってきて、お金を返せない店の主人に男たちは、こう切り出してきた。

お金が返せないなら、娘を1人売るように指示をしてきたのだ。長女のベロニカが目当てだった。

そうすれば借金を3分の1にしてやるといってきたのだ。

主人は拒んだがお金を作るあてのないので、やむをえずサインをした。

長女は泣きながら父親を恨むこともなく「お父さん気にしないで」といって身支度をはじめた。

それを見ていたニコラウス君はとても苦しんだ。自分を家族のように家においてくれた

家族がひどいめに会う。彼の借金ぐらいなら、自分の遺産を使えば簡単だ。しかし

もし自分がお金を払ったら、きっと家族とは同じ関係ではいられない。どうすればいいのか、

迷いに迷って、ひとつの方法を思いついた。

3日後は、12月25日だ。25日の朝には長女は売られてしまう。ニコラウス君は12月24日の夜

に家の暖炉に、外からそっと夜中にお金をほおり投げることを考えた。

しかし万が一、見つかってしまってバレたら大変なので、ちょうど街で売っていた

古着の赤と白いコートを着込み帽子をかぶってばれないようにひげをつけて変装をして

お金を煙突から投げ入れたのであった。

翌朝25日なり、長女のベロニカは身支度をしてリビングにおりた。

すると、次女のサラーが気づいた。そこに大金があったのだ。ちょうど3分の1の金額であった。

家族はなぜこのお金が屋根からおちてきたのかは理解できずにいたが、きっと天からの救いと

いって手をあわせて素直にお礼をした。お金はすぐに借金取りに返した。男たちもなぜ主人が

お金を工面出来たのか不思議だったが、とりあえず約束は果たされたので、満足して帰った。

そんなことで2年が過ぎたが、借金はまだ3分の2は残っていた、ニコラウス君も16歳になった。

彼はこの家が気に入っていて、そこに住み着いていた。何よりも彼は三女のクラウディアに

恋をしていた。そして、また再び借金取りが現れて、12月25日の朝までに返さないと

次女のサラー18歳を売りに出すというのだ。主人は拒んだが、やはりお金は用意出来ず、

今回は暖炉に靴下をぶら下げて、家族全員を祈りをささげた。

ニコラウス君はまた同じ行動をした。また同じ金額であった。

さすがに2回目で同じ金額。主人と長女のベロニカはおかしいと考えた。

そうは思いながらも感謝をして2回目の危機を乗り越えた。

そして、最後の年を迎えた、2年後また同じ状況になった。今度は三女のクラウディアを売り飛ばす

と言ってきた。さすがに家族も怪しいと思い、厳重な体制で25日を迎えた。なぜなら

彼らは感謝をしていても、お金の素性を知りたいと考えていたのだった。

ニコラウス君は身元がバレる危険を恐れたが、今度のクラウディアの身売りだけはどうしても

さけなくてはいけない理由がある。それは恋をしているからだ。

しかし同じ行動をすれば、バレてしまい、同じ関係ではいられなくなる。ニコラウス君は

悩んだ。そして運命の24日の夜中なった。

家族はまた暖炉に向かって祈り続けた。店の主人はこの日は寝たフリをしてそっとふとん

の中でこのお金を放り投げる人の正体を知ろうと計画していたのである。長女のベロニカも

同じように用意をしていた。

そして、最後の年やはり同じようにお金が煙突から暖炉へやってきた。

今度はすぐに店の主人はおきて、外へ向かって走った。すると赤と白のコートをきた人が屋根

から下りて走って逃げた。店の主人は全力でおいかけて、とうとうその人物を捕まえた。後ろから

ベロニカも息を切らしてやってきた。

するとずるっと帽子が脱げて、ニコラウス君だと分かったのだ。

店の主人は最初は信じられなかった。一体、なぜニコラウス君がこんな大金を持っていたのか?

一体彼はどうしてそんな行為を3回も続けたのか。

そんな疑問よりも先にすぐにしゃがみこみ、店の主人はニコラウス君の足をキスをしはじめた。

「あなたは私たち家族の天使です。恩人です。あなたがいなければわたしたちの人生は
惨めなものになっていたでしょう。なんて感謝をしてよいのか分かりません。
わたしは、わたしは、」そういって店の主人は感極まって泣いてニコラウス君の足にキスをし続けた。

そしてそこへ追いついたベロニカも同じような行為をはじめた。

ニコラウス君はしゃがんで、店の主人とベロニカの手をつないで、

「どうか泣かないでください。立ち上がってください。」そういい続けた。

ニコラウス君はひとつ大事なお願いを言い始めた。
「ひとつお願いがあります。どうか私がお金を入れたことは誰にもいわないで下さい。特に
クラウディアが知ってほしくはありません。
わたしは明日あなたの家を出ていきます。でも絶対に約束してください。」

なぜニコラウス君が自分が恩人だということを隠すのか?店の主人には理解出来なかったが、

約束を守ると誓った。

絶対に言わないので家に居続けてくれないと頼んだが、ニコラウス君は家を出る決意をした。

もしそのままいれば店の主人やベロニカは一生ニコラウス君に頭があがらなくなるだろうという

ニコラウス君の苦渋の決断だったのだ。

一番苦しめたのはクラウディアへの想いだった。お金で彼女を助けたと知ったらきっと普通の目で

自分を見てくれないと思っていたのだ。

しかしばれてしまった以上もうそれはかなわぬ思いなのだと知っていたのだ。

翌朝の25日になり、家族に別れをつげた、みんなは悲しんでくれた。彼が人生の恩人だと知っている店の

主人は号泣し続けた。

次女のサラーと三女のクラウディアはなぜ父親が激しくニコラウス君にお礼をいうのか理解出来なかった。

そうしてニコラウス君は家を去った。ニコラウス君の心は引き裂かれるような想いだった。

でも、彼は次へ進もうと考えたのだ。また別の困った家族を助けるために。

と、その話を終えた明日香のおばあちゃんは、そっと明日香を見た。明日香はしっかりと

起きて目を輝かせて感動をしていた。

「で、おばあちゃん。ニコラウス君はどうなったの?」

「そうね、実は、あのレストランの主人がニコラウス君との約束を果たすため一度もサラーと

クラウディアに話すことはしなかったわ。でも、それではニコラウス君が報われないと

考えて、このお話を名前を変えて、別の作家さんに出版してもらったのよ。

本のタイトルは「聖ニコラウス様」英語で言うと、セイントニコラウス。

セイントニコラウスが、その言葉の音だけが引き継がれ、サンタクロース(セイントニコラウス)

という名前で、彼の飼っていた犬は、トナカイとなり、赤と白の衣装は、世界で知られた衣装と

なったとさ」

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安田安男は45歳の派遣社員だ。給料は今時時給500円という安さだ。

今はパソコンの入力作業を仕事についている。しかも年下からいつも顎で使われている。

何かあると、おい安雄!これ入力しておけよ!

おい安男!コーヒー入れてこい!

ちなみに安雄は実家と母と2人暮らしをしていた。

母はいつも安男が心配だった。口癖は「安男や、お前もそろそろ結婚して身を固めないと」

安男はいつも「分かった、分かった」と母の愚痴に付き合っていた。

母も85歳を迎えていた。幸い母は年金暮らしなので贅沢をしなければ

何とか生活が出来た。

ある寒い冬の朝、その日は突然に訪れた。

いつもだったら朝になれば味噌汁のにおいがしてきて、母がいつものように

「安男や、起きんさい」といってくるのだが、今日はそれがなかった。

そのせいで寝坊をしてしまい、もう時計を見たら午前9時になっていた。

「母さん、なんで起こしてくれなかったんだよ」いつもうるさい母の目覚まし時計も

この日ばかりはないことに腹を立てる。一言文句を言おうと思って母の部屋を叩いたが

返事がなかった。おかしいと思い、ドアを開けたら、母が倒れていた。

「母さん!」安雄はあわてて母を抱き上げたがすでに息がなかった。

すぐにあわてて携帯電話で救急車を呼んだが、時はすでに遅く、母はこの世の人ではなかった。

「母さん。。。」安雄はその場で泣き崩れた。亡くなってみて、改めて母の重要さを考えてみる。

かけがえのない母を亡くしたショックは果てしなく大きかった。

精神的に落ち込んだので、家で休みたかったが、安雄はそれでも派遣の仕事はやめることが

出来なかった。派遣は社員と違い、仕事を休むことイコール会社を辞めることにつながるからだ。

しかし安男にとっては無理にでも会社にいかなくてはいけな現実ことが、むしろ今は慰めだった。

家にいてもさらにつらいだけなので、会社にいってでも年下の人間にでも怒鳴られるほうが

よほど夢の世界にいる気がしたのだ。

安男には、働かなくてはいけない大きな理由がもう一つあった。それは母の葬式をやるお金が

ないのだ。せめてお墓だけは母が好きな磐梯山の頂上に作ってあげたかった。

母の故郷福島にある磐梯山は安雄もよく遊んだ思い出の場所なのだ。

安男はお墓の見積もりを取ろうと思い冠婚葬祭の会社に言ってみたが驚いた。

一番安い墓でなんと100万円だった。100万円なんて、とても派遣のお金じゃ払えない。

安男は困っていた。そこでローンを申請するため銀行に出かけた。

ローンの担当者は「何か保証人だったり、担保はあるんですか?」

安男は答えた「担保は母の家があります」「その家は担保にはなりませんね、第一古すぎます。

ご兄弟はいらっしゃないのですか」「1人います。ほとんど会っていませんが」

「それでは保証人を連れてきていただいてからご相談ということになります」

銀行員にも冷たくあしらわれた。母のお墓ひとつ立てられない自分の経済状況に腹が立った。

安男は家に帰り、電話をかけた。「もしもし兄さん。元気?安男だよ」

「ああ、お前かなんだいきなり」兄は小さいころ家族から縁を切っており今は東京で建設会社

の社長となっていた。「母さんが死んだ。お墓を立てるお金がない。保証人になってくれないか」

「おい、ふざけんじゃない。母さんと俺はもう縁をきった仲だ。父さんの家族が俺の家族だ。

お前が母さんの面倒は見ろ。」「それはわかった上で、お願いしているんだ。なんとか

してくれないか。俺はこのまま母さんをお墓に入れないでいるのは耐えられない。

もう時間がないんだ。」「だったら、灰にでもすればいい。俺は知らない。電話はかけてくるな」

そういって冷たく電話を切ってしまった。安男は電話をかけたことを後悔した。

そして悔しさで涙がこぼれてきた。「くそー」とコブシを地面に叩きつけた。

血がにじむコブシを手にしてその手に安男の暖かい涙がこぼれてにじんでいた。

安男は思いたって派遣の首覚悟で休んで実家福島へ車を飛ばした。

なんとワゴンの中には母のなきがらが入った棺おけが入っていた。お墓がないので、そのまま

ワゴンで運ぶことににしたのだ。東京から福島まで車で約10時間かけて、ようやく

目的地の磐梯山に到着した。

安男はお金がないままとうとうここまで来てしまった。もう夜遅くになってしまった。

今日泊まる場所を探そうと思って宿を探したが、スキーシーズンでもないのに、

なぜかどこも満杯だった。特に景気がよいわけでもないのになぜ?安男は自分の運の悪さを

呪った。しかしそれは一方で何かどこかへ導かれているかのような運の悪さでもあった。

宿の主人も「いやー、まったく信じれないよね、いつも空いてて困ってるぐらいなのに、

今日だけなぜか満杯。しかもなんのイベントもないんだよね」一体福島に何が起きてるのだろうか

不思議に思いながらも、ただついていないと安男は思いつつ、宿を探しつづけた、

ようやく10件目だったろうか。1部屋開いている宿を見つけた。

宿の名前「ようこそ屋」だった。いかにもという変わった名前だが、屋の主人はとても

よい人だった。

親切な人なので、相談に乗ってもらえるかもしれないと思い、母のなきがらについての話になった。

「そうですか、そういう事情ですか、それはかわいそうですね。私も磐梯山で育った

ものとしては、是非お母様にはお墓を立ててあげるお手伝いをしたいですね。」

「そういえば知り合いの友人が民営霊園をしているものがいます。彼なら何とか親身

になってくれると思います。今から電話をしてあげますから、明日の朝たずねて

みてください」安男はお礼を言って部屋に戻った。相談して良かった。福島の人の温かさに

身にしみた。

翌朝になり宿の主人にお礼をいって、霊園長さんに会いにいった。その人の名を本山さんと言った。

「すみません、本山霊園長様いらっしゃいますか?ようこそ屋の主人さんから紹介して

いただきました」「ああ、本山は私です。お話はお聞きしました。」そういって、

奥の園長室へ案内してくれた。本山さんは事情を一通り聞いて、

「分かりました。なんとかしてあげたいのは山々ですが、お墓はディスカウントが聞かず

に100万円はどうしてもかかります。これは私の取り分なしでの金額なんですよ。

ローンを立て替えるわけにもいかないですし困りました。」本山さんは、話ながら、

どこか宙を見ていた。そして彼は何かが引っかかっていていると言った様子だった。

「あの、すみあせんが、お母さんのお名前を書いていただけますか」すると安男が、

安田安子と書いた。「安子さん。まさか。そんなもしかして、お母さんの実家は福島の

猪苗代町の酒屋を経営してませんでした?」「そうです。ご存知なんですか」

「年齢は85歳ですよね」「そうです」すると、急に園長は泣き崩れた。

安男は戸惑った。なぜ彼はそんな急に泣き崩れるのか。理由が見当たらない。

そして、本山さんは落ち着いた後に話をはじめた。

「取り乱してすみません。あまりに奇跡的なので。すみません、驚かれたでしょう。

でもわたしはもっと驚いてるんです。安子さんは私の恩人なのですよ」「恩人とはどういう

ことでしょうか?知り合いだったんですか?」「はい、そうです私がまだ若かりしころです。

当時、若い私東京の暴利の金融屋に追われて、借金まみれの生活をしていました。実の母に保証人なって

もらい最後は支払ってもらいましたが、ずいぶんと迷惑をかけました。

自分の両親だけじゃなくて、妻と子供も見捨ててボロボロになっていて、福島にたどり着きました。

そこで、酒屋の女将さんが親身になっくれて借金を返せる金額になるように暴利の金融屋と

交渉してくれ私に仕事を見つけてくれてお嫁さんまで紹介してくれたんです。

あなたのお母さんはとても器量が深く、人の心をつかむのが得意な人でした。そうした情熱に

負けたんでしょうね。まわりの人は彼女と話すととたんに態度を変えてしまう。

それがあなたのお母さんです。あの人のおかげで私の人生は変わりました。

あれから数年後に、私はその酒屋を訪問しましたが。すでに酒屋はなくなり、お母さんも

いなくなり音信普通になりました。いつかお礼を言おうと思っていて、探偵に探してほしいと

依頼をしましたが、結果見つからず。

あれから50年たってわたしは福島の霊園のオーナーになったのです、いつか福島の霊園のオーナー

になればもしかしたら安子さんとお会い出来るかもしれない。そんなふうなことを考えていました。

あなたのお母さんのお墓は私の財産を投げてもお墓を提供します。どうか私の霊園でご面倒を

見させてください。最高のケアをさせてください。私がここを立ち上げたのはそれが目的だからです

」安男は目の前で起きた事態に夢を見ているようだった。「こんなことがあるなんて」安男も涙を

流してお礼をいい続けた。ここに来させるために、他の施設は全部空き家がなかったのか。

安男は驚いた。

お墓は1週間で完成して、最高の場所に最高のお墓を作ってもらった。

お水、線香とお花をあげて安雄はひたすら感謝をしていた。

すると後ろから園長がやってきて「安男さん、もしあなたさえよかったら、私の霊園で働きませんか、

社員としてお迎え出来ますよ。」「本当ですか、喜んでお願いしたいです。一生懸命働きます。」

安男はそのまま磐梯山で霊園の管理を行うことになった。

東京での荷物を引き払い福島へ戻ってきた。母の面倒を見れて自然に囲まれて仕事も出来て幸せ

だった。安男は生き返ったように一生懸命働いた。仕事が向いていたこともあって、順調だった。

雨の日も風の日も。安男は働いた。以前の職場ではパソコン仕事で向いていなかったが、

この仕事は力仕事や優しさが大切だった。人の最期をみとる仕事というのは、やさしくないと

出来ない。彼は同僚からも信頼され、大活躍の日々だった。

そして半年後、本山さんが自宅に招待してくれた。

そこで安男は運命の人との出会いをした。それは本山さんの娘との出会いだった。

「娘の安子です、実はお母さんの名前をいただいたんです」

「安子ですはじめまして」この人との出会いが、未来の安男の妻との出会いとなった。

安男の母はいつまでも安男のことを見守ってくれているのであった。

母の暖かさが、亡くなっても安男に最高の幸せをくれたのだった。

それは母の暖かいお守りの愛であった。

=====
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ユタカは17歳の北海道夏を迎えていた。ユタカはいわゆる不良の少年だった。
母を中学生のころに亡くしてからその傾向は強まり、暴走族の仲間入りをして
父に迷惑をかけてばかりいた。そんなユタカも18歳になり高校を卒業して
社会人になる年齢になったが、

家から一方に出る気配もなかった。その姿を見て父はなんとか必死にユタカを
更正させようと必死になったが、良くはならなかった。ある日、ユタカと父は
大喧嘩になった。きっかけは些細なことだった。

父が仕事から帰ったのに、
ユタカは寝そべってテレビを見ていたので、たまには仕事でも探したらだどうだ
といったのがきっかけになった。ユタカは家なんて出てやるといってそのまま
大喧嘩したまま家出をして友人の家に転がりこんだ。そして友人と一緒にホスト
の仕事をするようになった。

それから10年が経過をした。

父とはまったく音信普通になった。7年目に手紙を出したらあて先不明で帰って
きてしまった。いったいどうなったのだろうか。親戚とも連絡をとっていなかった。
そんなユタカはホストを通じてある女性と出会った。その女性はたまたま友人に
引っ張られてホストクラブにつれてこられた女性だった。


とても初々しい印象を
ユタカはもった。その子の名をヨウコといった。ヨウコとユタカは意気投合して
二人は付き合いをするようになった。ユタカはヨウコと人生を歩み決意をして
ホストクラブを辞めて会社員になった。ヨウコの実家の新潟で中古車の営業の
仕事についた。毎日の寒い中での洗車には苦労しているが、ホストクラブで
培った根性で持ち前のバイタリティで毎月最高の営業成績を残していた。

そんなユタカにある日驚きの再会が訪れる。

いつもどおりユタカが新潟で車を販売していたら、お客さんが偶然北海道
出身だというので話を進めると夫の名を聞いたら親戚だったのだ。そして
翌日会ってみたら親戚の信吾だった。信吾とは同じ北海道内の親戚で、
二人は子供のころ一緒に虫取りなどをしたことがある仲だった。

そんな偶然の再会でユタカはある事実を知ることになる。
信吾 「ユタカは最近どうだい、ちゃんと親父さんの墓参りは行ってるのか?」
ユタカ 「墓参り、、、、どういうことだ。親父は死んだのか」
信吾 「ええ、、、、お前知らなかったのか。。家出をしたとは聞いていたが
なくなったことぐらいは知ってると思ってたよ、すまん。」

ユタカ 「いや、いいんだ。もう10年も音信普通だったんだ。知らなくて
当然だし、第一誰も俺が新潟にいる、なんて知る人もいないさ、少し教えて
くれないか。親父に何があったんだ。」

信吾 「そうか、親父さんは10年前から急に体調を壊してずっと心臓を
わずらって3年前になくなったんだ。」

ユタカ 「なんてこった、、、10年前っていうと俺が家出したときの年じゃないか。
親父は俺のことが心配で苦しんだってのか。。。。くそ、、、俺はなんて
馬鹿なんだ。いまさらこんなことを知るなんて。」

ユタカは10年の時を後悔したが、いまさら時間は元にはもどらなった。
そしてそんな自分を悔いた。家に帰り、ヨウコに泣きながらこの話をしたが、
ヨウコもどうしていいか分からなかった。


ユタカは父の死を知ってから自暴自棄になり、あたり散らすようになって
しまった。仕事もいなくなり、家に閉じこもるようになった。ヨウコ
はユタカに対して気持ちをしっかり持ってほしいと伝えたが、


何を話しても
父親との喧嘩への後悔から頭が離れなくなってしまった。そしてヨウコと
ユタカは意見の違いから喧嘩になり別れてしまった。

ユタカはそれからしばらくお金がなくなるまで何もする気が起きずに
数ヶ月間過ごした。そしてある日立ち上がり、思いたち、父親の
ふるさとの北海道へ行ってみようと思い電車に乗った。久々の北海道に
ユタカは子供のころの記憶をさ迷っていた。父の実家の家に降り立ったとき、
急に記憶が蘇ってきた。

それは子供のころに父に肩車してよく散歩をした懐かしい風景だった。
父はよく自分を寝かしつけるために、散歩に作れてきてくれて、
肩車をしてくれったっけ、そして近くの神社に行ってお参りするのが日課だった。

家の近くの出雲神社の木には1000年の祈りが通じていて、
その木に願いを書いて短冊を結んだら、願いがかなうっていう伝説がある
っていってたな。ユタカは急にその木が見たくなって、出雲神社の1000年の木
にいってみたら、たくさんの参拝客がつけた短冊で一杯になっていた。
そういえば、ユタカも子供のころこの木に願いをかけてつけた記憶があった。

そこで、ボーと1日木を眺めていた。そして、ユタカは思いついたように、
次の言葉を書いて短冊につけた。

父さんへ、
父さんがこんなにも早く死ぬなんて思いもしなかった。俺は父さんと
もう一度話しがしたかったんだ。父さんはいつも俺を肩車してあやして
くれたよね。そして俺はたくさんわがままを言って迷惑をかけたんだ。
母親に頼みごとをして断られたときには、


親父はそっと俺のわがままを
かなえるために夜中に枕元にこづかいをおいてくれたっけ。あのときは
本当にうれしかった。そんなやさしい父さんに俺とささいなことでひどいこ
とを言ってしまった。こんな馬鹿な俺を許してほしい、ただ、
「ごめんなさい、有難う」といいたかったんだ。そして俺は父さんが
なんていうのか聞きたかったんだ。

ユタカ

そうしてその短冊を木にぶら下げようとした瞬間、、ある短冊を間違って
落としてしまった。そして、その短冊がどうしても気になった。普段は
こんなことを思わないが、どうしてもあけてみたい衝動に駆られた。

そしてその短冊を開けてみるとユタカはとんでもない驚きの内容だった。。。

ユタカへ、
わたしは祈りをこめて,この短冊を1000年の祈り木につける。今はどこへいるか
君の行方をわたしは知らないが、どこにいてもこころはひとつ、お前を愛してる。
お前はなにがあってもわたしの息子だ。


それには変わりは永遠に変わらないし、たとえ、この肉体がなくなっても魂はお
前の心の中にともにあるんだ。だから、お前がなにかわたしに謝りたいと思って
いてとしても、それはすでに許されてるんだから安心して、君は君の人生を生き
るんだ。君の人生はとても明るく輝いている。わたしは誇りに思ってるよ。

永遠の父

ユタカは言葉を失い泣き崩れていた。。。。
これは紛れもなく父の言葉だ。。
これを今この瞬間に見てる自分が信じられなかった。父さん。。。。。。
ユタカは何度も何度も「ごめんなさい、そして有難う」とつぶやいた。
それから3年間、ユタカは東京にいた。

東京で一生懸命働き、大手の自動車ディラーの営業課長になっていた。ユタカは
支店一番の腕利きの営業としてバリバリ働いていた。
ある時、1人のお客がきた。見覚えのある顔だった。
それはヨウコだった。
ヨウコはユタカのところへ向かっていった

「わたし東京で一人暮らしをしていて独身なんですけど、車を買いたいん
ですが、免許なくて、良かったら、今度助手席に乗せてもらえますか」
そういった。

ユタカは笑顔一杯で答えた。
「わたしの助手席は、3年前からずっとあなたのことを待っていました。」



目次

10) 新着☆こちらM君の思い出
ある日サークルのメンバーM君の訃報が知らされる。そして明かされた彼の過去。そして未来に起きる不思議な奇跡とは一体何?


9) こちら引きこもり男とかんしゃく女の友情
友之はいわゆる引きこもり、しかし彼はただの引きこもりじゃない。心のやさしい青年だった。かんしゃく女の結花は別のテニス部の彼氏がいるが、うまくいかない。友之は結花と運命的な出会いをする。そして結花を支える決心をしたのだ。男女の友情は成り立つのか?

8)こちらネコが巻き起こした不思議な話:1話完結 
部活の帰り道に子供たちにいじめられているネコを見つけた川岸翔子は、家にネコを連れてかえる。
 そして、ネコが巻き起こす不思議な奇跡とは。

7)こちらクリスマスの夜の奇跡:1話完結
 生まれつき目の見えない北島佳子。買い物中に出会った親切な店員の中本光一と運命的な出会いを
 するが、その先にやってきた本当の奇跡とは。。。

6)こちら幸せのりんごの木:1話完結
 仕事中に怪我をして、生活に苦しくなった父親の武に訪れた「不思議なりんごの木」の話。

5)こちらパーキングメータの奇跡:1話完結
 彼の阿部良太は今時珍しいお人好し。趣味は他人のパーキングメータにコインを入れること。なぜ、彼は
 そんな行動を取るのか?そして巻き起きる奇跡とは?

4)こちら50年の恋 1話完結
 50年前に両親の反対にあい別れた最愛の彼を探すことを決意した川越美和。その果てに待つ意外な結末 とは?

3) こちらキャットフィッシュボーイ」
「ナマズの研究を仕事としている西隆。彼はある時天命の友、田島と出会う。田島は西に向かってこう言った。「お前が世界を救う」、キャットフィッシュボーイは本当に世界を救えるのか?
大震災と戦う研究者の姿を描きました。(未完です)

2) こちら「旋律の奇跡 ピアニスト奈津子」(完結)
「小さい頃から英才教育を受けて、華々しいプロデビューを果たしたピアニスト奈津子は二作目以降の作品で伸び悩んでいた。ある時、故郷への帰り道でバスの事故に巻き込まれる。「あなたが本当の力に気づいたときに世の中が変わる。」母は意味深が言葉を奈津子に託していた。奈津子の持つ本当の力とは?そしてそれは発揮されると世の中はどうなるのか?彼女の才能は運命という大きなうねりに巻き込まれていた。


1) こちらLife is.... (完結)
「人生なんて山手線の中で変わるものよ」私はその言葉に心動かされた。中堅保険会社の営業として成績不振に苦しむ二年目のビジネスウーマン沢田香織が山手線という電車の中である女性との出会う。やがて沢田香織は人生の成功の法則を知ることとなる。まもなく彼女の人生が山手線の中で劇的に変わろうとしていた、、、。 













携帯電話が鳴ったのは、大雨の日の夜8時のことだった。

「実は突然なんだけどM君が亡くなったの。あなたは大学時代に仲が

良かったのでお通夜を明日の夜に行われることを伝えておこうと思って」

電話をかけてきたのは、大学時代の職員の松田さんだった。松田さんは今も

大学で働いていた。

大学を卒業をして10年は経っていて、先月に自分の立ち上げた心の介護

センターという会社の社長をしていた。美優は翌日のお昼休みに大学時代の

サークルの友人にお通夜の連絡をした。

「M君が亡くなった?」みんな反応は様々だったが、一様にどこか納得

していた雰囲気だった。

どこかM君には底知れぬ暗い影があった。10年後に起きた彼の人生の結末に

とうとうそうなってしまったのかという気持ちと知り合いの死というものに

対するどこか実感のなさに、落胆の色を隠せなかった。

「そうか、やっぱりそうかって感じだけど、でも一体なぜ?」サークルメンバ

「ー切っての理屈派の 飯田が言った。

「どうやら、転落死みたい」美優は答えた。

「転落死って、自殺ってこと」

「うん、分からないけど、8階の自宅から転落死っていうことはそう考えざるを

えない。」

「とにかく、今夜のお通夜に出るよ。じゃ、7時に丸の内線のいつもの場所で」

いつもの場所というのは、大学時代に立ち上げたサークルで待ち合わせに

使っていた場所だった。サークルは、交流サークルと銘打って、他の大学と同じ

趣味を持つものと出会ういわゆる交流の場だった。部長は美優。美優は明るく

前向きで常にリーダーだった。この交流サークルを作ったのも美優だった。

副部長の飯田。飯田は、美優と同じゼミだった。頭の回転がよく理論的で、

美優とは正反対の性格をしていた。

飯田は美優に恋ごころを寄せていたため、このサークルには即参加を決意した。

行動力の美優と理論はの飯田はいいコンビだった。

同学年のメンバーでもうひとりは、小田。小田は飯田とは違い繊細な心を

持っていて、後輩と美優、飯田コンビの橋わたしをしていた。

一学年下の後輩は全部で三人いた。一人は、牧野仁美、彼女は主な動機は

なくなんとなく楽しいそうという理由で入ったのだった。

もう一人は木村夕子、仁美に連れられてサークルに入ったが、実は、

美優のリーダーシップに憧れて、このグループの雰囲気にすっかりはまっていた。

木村は美優の性格に似ていて、次のリーダー格だった。

そして、最後は今回亡くなった通称M君。実名は、森川裕也。

M君は最初の1年だけ参加をして、卒業してからは、消息不明で、この場には

参加はしてなかった。他のメンバーはその後も毎年みんなで集まっていた。

この集まりは長く10年も継続されていたのだ。

その日美優は仕事が手につかず、ずっとM君のことを考えていた。

M君は、なぜ自殺したのか、記憶を呼び戻してみる。それは後悔の念だった

ことに気づく。

「美優さん具合悪いの?」同僚から心配そうに声をかけられる。

そのうちトイレにいきたくなったので、トイレの鏡で自分の姿を見た。

あまりに暗い顔をしているので、自分でも自分じゃないきがした。

「なんで、私は見て見ぬ振りをしたの?」

自問自答を繰り返す。

「気づいたいたでしょ。いつか自殺するって。。。。ごめんね。M君。」

トイレの個室で、わっと泣き出した。涙が自然にあふれてくる。

そして、夜になり待ち合わせの場所からいつものメンバーが集まった。

「久々の集まりがこんな場なんて微妙だね。」

お通夜は静かに営まれたが、意外にも多くの参加者がいた。

M君の両親は有名な官僚らしく、人脈も多いようだった。

お通夜の時、木村夕子が言ってきた。

「私、M君の体を棺桶から覗いてみたけど、そしたら、幸せそうな顔していた。

なんだか、まわりだけ騒いで、本人はまわりの気持ちなんて知らぬ顔って

感じだね。」

「そりゃ、そうさ。死んだら人間は終わりだ。幸せさ」飯田が言う。

「そうだよね。」夕子は答えた。

美優の態度に不審に思い、小田が指摘をする。

「美優?大丈夫?」

しばらく黙り込んでいた美優が声を出す。

「わたしがM君を殺した」

「殺した?ってまさか突き落としたのか?」飯田が大声を出す。

「M君は自殺したんだよね。」小田が口を挟む。

「ちょっと、なんで美優さんが殺したことになるの」夕子が言う。

全員はお通夜から場所をファミレスに移してコーヒを頼んで話をはじめる。

「じゃあ、さっき、美優が言った、殺した発言について説明してくれる?」

小田が冷静に切り出す。

「実は、このサークルはもともとM君が立ち上げたものなの。」

「へえ」一同は驚いた。M君がサークルを立ち上げるなんて想像出来なかった。

「でも、M君が立ち上げるなんていうのは想像できないね」飯田が言う。

「そうなの、実は、M君とは別のサークルを立ち上げたんだけど、それが

事情があって、解散になったから、もう一度小さくやり直したのが、今のみんなの

集まりの会なのよ。松田さんが解散したサークルで傷ついた私たちを

気遣って勧めてくれた集まりなのよ。結局、M君も1年で来なくなったけどね。」

「解散したって、前のサークルって一体どういうサークルなの?」

木村夕子が聞く。

「実は、すごいグループだったのよ。M君の構想とネットワーク

を私が広めた形ね。 それは、一言で言うともっと本格的な交流ネット

ワークというもので、内容は、あるサイトを立ち上げて

そのアカウントを持つと、同年代の大学生と知り合いが出来て、自動的に

趣味を同じ人をシステムを読み取ってリンクしてくれるのよ。

まあ、今でいうところのフェイスブックみたいなもんね、でも

当時は2000年初期だったので、めずらしかったのよ。

それで、M君はプログラマーとして才能もあったからね。

さらに地道に各大学から、メールアドレスを集めて、数万人の

メーリングリストを

一人で持っていたのよ。趣味とかもきちんと聞いた上で、カテゴリー

わけもしていたのよ。

「すごいね、そんな時間があったとは」小田も驚いて答えた。

「暇というか、執念がすごい」夕子も感嘆した。

「というわけで、そんなすごいデーターベースとシステムがあるから

ということで、私がちょっと

デザインをかっこうよくして立ち上げたのよ。すごい評判でね。

企業のスポンサーも

ついたのよ。みんなも聞いたことがあるでしょ。マキシムっていう会社」

「まじで?あのマキシム?」飯田が驚いた声をだした。

マキシムといえば、今は100万人の会員を持つ有名SNSサイトだった。

あれはM君のデータをベースにして、私が学生時代に立ち上げて、

そして企業に売却したのよ。」

「それじゃ、ずいぶんと稼いだわけだね。」飯田が言った。

「稼いだどころか、苦労だけして、0円で、取られたの。」

「取られた?誰に」

「そう、だまされたのね。大学時代に当時、中核メンバーとして参加をした

山田という男がいたんだけど、そいつが悪い奴で、全部データだけ

とって、別の会社に売り込んで自分はそこの副社長に収まったわけ。」

「そして、私とM君は解任して放り投げられたのよ。」

「まじで?」飯田が答えた。

「私も人間不信になったわよ。それで、私は大学を休学して海外へ

出かけたの。アジア各国をまわって歩いていろんな人と会って、心を

強くして、また日本に戻って復学して、一年後輩のM君と同級生になったから、

二人で今度の人間のつながりを大切にする本当の交流サークルを作ろう

といって、今のグループを作ったのよ。

今度はデータや大きくしないで、深く長い付きあいを求めてね。

10年たった今でもこうしてみんなで出会えたのは私はほこりよ。

M君が途中でいなくなったことには残念に思ったけど。」

「へえ、苦労したんだね。美優も。」飯田が言う。

「美優がみんなとのサークルを大事にしてるのも、そんな過去があったから」

「そうなんだ。」小田が言う。

「M君は、あの事件の後に、精神的に病んでしまったわ。もともと

明るい性格ではないから人間不信というのは、彼にとっては大きな問題だった。

山田からぼろぞうきんのように捨てられてから彼は自暴自棄になっていたわ。

マキシムが成功すればするほど、世の中から、信じる人は救われないという

想いを強くしていったの。私もそんな彼を見て、なんとか立ち直らせてあげたい

と思いつつも、自分のことで精神的にいっぱいいっぱいで、そんな余裕は

なかった。私は海外に逃げるということで、いったんは心を落ち着かせたけど、

M君は逃げなかった。面と向かって立ち向かったの。でも逆にそれが仇

になったのかもしれない。まじめな人ほど苦しむから。」

「彼はその後どうなったの?」夕子が聞く。

「彼は、マキシムに入社したのよ。」

「なんでまた?」飯田がいう。

「彼の中で、まだ山田を信じていた部分があったのね。

しかし、入社をして

山田から奴隷にように使われて、毎日いじめられて、彼は退社したのよ。

それから行方はくらまして、それから私が消息を聞いたのは、松田さんの昨晩の

電話が数年ぶりだったの。」

「話が戻るけど、どうして美優が殺したと思うの?」飯田が話を戻す。

「私は、彼が精神的に病んでいることを知っていたのに、何も出来ずにいたの。

実は、私が海外にいるときに彼がメールを書いてきたことがあった。

その内容は、助けてくださいということだった。私は当時、その内容を見て、

助けてあげたいと思いながらも

自分のことで精一杯だったので、重荷に感じて電話はしなかった 。

そして、ようやく電話をしようと思ったときには彼はマキシムから

いなくなっていた。私 が、もしあのとき、電話でもしていれば。。。。」

美優はそのまま泣き崩れた。自分がサークルを立ち上げたために、彼は

山田という人物と

会い、人間不信になるまで追い込まれた。そのきっかけを作った自分が

彼を殺したそういうふうにせめていたのだ。さらに、助けてほしいと

サインから逃げたのも美優だった。

先ほど訪問したお通夜では、マキシムの副社長の山田が意気揚々と

お通夜を仕切っていた。こういう場でも派手なイベントにしようとする

\姿が腹立たし気持ちを増幅させた。

みんながいろいろと思い出話をしながら、議論をはじめた。

小一時間した頃に、定食とサイドディシュとパフェとコーヒーフル

コースを終えた仁美が話をはじめた。

「みんなの話を聞いていた、思い出したけど、彼からメールが1年前に来たんだよね。」

全員が驚いた。

「お前、なぜそれを早く言わない。」飯田が起こった。

「いや、考えていたのよ。食べながら」仁美が言う。

「で、内容は?」夕子が切り出した。

「ちょうど、携帯に入っているから読むね。美優先輩に今度会うときに

このメールを渡してほしいって、今から1年後にきっとこのメールを

読むときが来るだろうって、いわれたけど、そのときは何いってん

だかってフォルダーを移しちゃったんだ。美優先輩へ、ぼくは美優先

輩には感謝してるよ。絶対に恨みになんて思ってないからね。

自分は信頼している人間に裏切られたが、それでもそれで自分は幸せだった。

なぜなら自分が地道に努力したことで世間で認めてもらったんだから、

自分が広めた人間でなくても、自信を持てるって、だから、たとえ

使われる側になっても、自分がその一部となれることが幸せだった。」

美優は泣いていた。救われた気がした。そうか彼は幸せだったんだ。

でもじゃなぜ?自殺を?

「きっと、些細なことなんじゃないかな。」小田が言う。

「うん、私もそう思う。自殺って意外に些細なことがきっかけなのよね」

美優が話し始めた。

「私は心の介護センターという会社を去年立ち上げたの。

それは私が大学時代に受けた心の傷を持った同じ人たちを、

私がアジア旅行で出会ったときと同じ感覚で接して直して

あげたいと考えたから。M君のような人を助けるために作った。

だけど間に合わなかった。私はこれからがんばるわ。」

美優は前を向く決意を固めた。



17年後、あるはれた午後の日のこと、心の介護センターは順調に

経営は進んでいた。コンコン、ノックをする音がする。

「美優先生、実は、ある患者さんが推薦状を持ってきてるんですが。」

「いいわ、通して。」

「こんにちは先生。実は僕は今、大学生になったのですが、いろいろと

人間関係で悩んでいまして相談したくて、やってきたんです。」

「このセンターのことはどこで知ったの?」

「実は、自分のお父さんが1歳の時に、同じような悩みが深刻になって

亡くなっていて、亡くなる前に手紙を残してまして、必ず従うように

指示を受けてそれでやってきたんです。」

「ちょっと見せてくれる?」

それは色あせた手紙だった。

「美優先輩へ、この子は私の息子です。手紙を読んでいるということは

私は既にこの世にいなくて、さらに息子は大学生になったばかりでしょう。

先輩はきっと後悔をして自分に申し訳ないと思っていると思いますが 。

過去に助けてほしいとメールを書いたのを覚えていますか?俺は神様に

助けを求めるような気持ちで書きましたが、でも先輩は神様じゃない。

人間だ。でもだからこそ弱くもなれるし、強くもなれる。そして今は

きっと強い先輩でいることでしょう。そう望みますし、そう信じています。

だから息子を助けてください,,,,M。

美優は泣いていた。色あせた手紙に涙のしみがにじむ。

あの当時言われた「助けてください」の重荷、そしてそれに答えられなかった自分。

そして、今、もういちど彼の息子を救えるチャンスをもらえたのだ。

今度こそ、彼を助けよう。そしてあのときの悲劇を再現しないためにも。

美優は固い決意を固めていた。

「先生?どうしました?ところで、私の父とはどういう関係ですか?」

「そうねどこから話せばいいのかしら、、、、。」そういいながら美優は

窓の外を遠い目で見た。

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二人は一晩中、シャガールの絵について話あった。結花は興奮して早口になる。そう思えば急に

思いふけるようにうなづくだけにもなる。感情にむらがあるようにみえた。

二人で何枚かの絵を見た。シャガールは青を基調とした独特の色彩を駆使しながら、人間に

対する限りない愛と悲しみを書き上げる。

そんな重力の法則への挑戦を感じる絵を見ることは二人にとって喜びだった。

二人というと、もう一人については、友之という大学時代の友人だった。

友之はいわゆる引きこもりという奴だったが、結花に出会い、自分の殻をやぶろうとしていたのだ。

結花は前向きで明るく、強い性格だった。友之はいつもそんな結花を見てはいつか自分も自分の

殻をかぶりたいと考えるようになった。

大学の掲示板で、ある日、シャガール展の案内があった。

友之はシャガールが大好きだったので、初日に見に行った。そこで、結花と出会ったのだ。

スクールバスで、テニスサークルのメンバーとはしゃぐ結花をまぶしそうにに見ている友之が

いた。彼は結花の存在を知っていたが、結花は友之の存在は知らなかった。

しかし、彼らはシャガールを通じて運命的な出会いをした。絵が縁のない二人を結びつけた。

きっと、結花がつきあっている彼氏と喧嘩をしたことが促進させたのだろう。

その日は、テニスサークルの試合の日だった。前日から彼氏の家に泊まりこんでいた結花は

喧嘩をして翌朝に家を飛び出して、そのままシャガール展に足を運んだのだ。

本当は行きたかったが、テニスの試合の日なので、断念をしていたところだったが、

偶然にも喧嘩をしたため、急遽シャガール展が繰り上げになったのだ。

「私、本当は今日はテニスの試合なの」

それが、どういう意味を持つのか、友之には理解が出来なかったが、

今日は予定をしてた約束がなくなったという意味と理解をした。

「俺は、今日は本当は部屋にこもる予定だった」

それが、冗談ととらえてくれたらいいなと思いながら、友之は言う。

結花は笑顔になる。

「こもるのも予定なのね?」

「大学生って暇だろう。だから俺は暇をいかして、部屋にこもってるんだ。」

「なんでそれが暇をいかすことになるの?」結花が反応した

「そうだよ。暇という時間は社会に入ったらないし、部屋にこもるのも社会人に

なったら出来ないだろう」

友之には、サークル活動をする人たちが理解できなかった。そもそも大学というものは

スポーツをするところではなく、考えるところではないだろうか。そう

考えていたからだ。

「大学にきたのは考えるためなんだ。社会へ出たときに戦える思考を作りあげる。

それが重要な目的だ。」

友之の引きこもりはただの引きこもりではなかった。

これから社会へ出るために、あらゆる書物と、いろんな考えをケーススタディを

していたのだ。シャガール展もその一環だった。

芸術鑑賞をしながら、自分の観察力というものを磨くトレーニングだったのだ。

「誤解してるようだけど、引きこもって俺は脳みそを鍛えてるんだ。」

彼らはシャガール展を出て、東京駅を一緒に目的もなく歩く。

すると、結花が言う。

「デートしちゃおうか」

そういって、駅からまっすぐのびる、川縁の土手へ向かう道を歩きはじめた。

二人は街路樹の並んだ道路を歩きながら向かった。

途中で、売店で販売しているたい焼きとお茶を手にしていった。

二人は、歩きながら、様々な価値観について話をした。

すると、うしろで、ドタドタという音をたてて、荷物が転げおちた。

どうやら、店先のビールの箱が落ちた模様だ。

すぐに、友之が反応して、その落ちた箱を片付ける。

「ありがとうございます」店先の店員がお礼をいう。

結花は、その行動の早さに、感心した。

「友之くんって、ただの引きこもりじゃないみたいね。」

二人は土手へ寝そべりながら、たい焼きを食べてシャガールについて話し合う。

シャガールだけじゃなく、ヘルマンヘッセも大好きだった。

二人は趣味があったのだ。

「ねえ、友之。来週の金曜日午後あけておいてくれる?」

「え、なんで?」友之はあわい期待をいだく。

「一緒に、図書館に文句を言わない?」

結花が持ちかける。

デートのお誘いかと思いきや、図書館に文句を言うお誘いを受けるとは

思っていなかった。

「なんで図書館に文句を?」

「だって、大学の図書館なのに、ヘルマンヘッセやシャガールについての本がないのよ。

芸術に触れるチャンスを逃すなんて、犯罪だと思わない?」


確かに、文学というのは幅広くあればそれはそれで、良いとは思うが、

それで図書館に「お前は芸術のセンスがない」なんて文句を言うこととは

つながらなかった。結花はすぐにかんしゃくを起こして、行動に移すことがおおかった。

結花の思考には、友之が及ばないものがあると考えて、それはそれで

面白いので、つきあってみることにする。

「私ってなに考えているか分からないでしょ」結花は自慢げにいった。

「そんなことを言ったら、日本人だって、外国人だって、みんな何を考えているか

分からない。」そう友之は言い返した。

「え、そうかな?」ひどくうれしそうに結花が答える。

お前はいつも変わっている、それがひどくいやでいたが、友之はありのままの

結花を自然に受け止めてくれる。それが結花にも心地よくなっていた。

そして、結花と友之は仲良くなり分かり合えるようになった。

毎週水曜日は一緒にござを引いてお昼ごはんを食べるようにもなった。

ところが、ある日、その関係は微妙なものになった。

突然、結花の彼氏の村上から電話が入ったのだ。

「結花になんかプレゼントしただろう」

挨拶もなしに、単刀直入に聞いてきた。

「やあ」

とりあえず、挨拶を返す。

「やあじゃねえよ。」

「ちょっと待て。まずはきちんと名を名乗れ。そしてきちんと事情を説明してくれ。」

けんか腰の会話を想定していた、村上は拍子抜けした様子だった。

「俺は、結花とつきあっている村上省吾だ。結花が今日、お前からプレゼントをもらって

喜んでいた。だからその真意を聞きたかったんだ。お前が結花を奪うつもりなのかどうか」

「いいか、俺がプレゼントをしたのは、ヘルマンヘッセの本だ。車輪の下って知ってるか?」

「聞いたことねえな」

「そうか、じゃ読んでみろ。車輪とは、社会をあらわしているんだ。主人公は

社会につぶされて心がやんでしまう。そして、それに押しつぶされる主人公を

描いているんだ。俺の意図はわかるか?」

「まったく?」

「つまり、俺があの小説を渡していいたいのは、ひかれたレールの上を歩くことは

いいが、それが外れてしまったときに強いのは、自信ではなく、生きることへ

の執着だ。」

「言いたいことはっわかるか?」

「さっぱり?」

「結花は、精神的に病んでいるんだ。だから、俺は芸術を通して彼女と会話をして、

立ちなおらせてあげて、そして強い気持ちを育ててあげてるんだ。」

事実、友之は、毎晩結花を村上の家の前のコンビニまでおくり、そして

そこで、終電の時間まで立ち読みをして、待ってあげていた。

もし、喧嘩をして戻ってきたら、一緒に家までおくり、喧嘩をしなければそのまま

一人でかえる生活だったのだ。

ただのアッシー君のようにみえるが、友之は、それでも良かった。すこしでも

結花の役に立てればそれで満足だったのだ。その甲斐があり、村上と結花は一歩進展した。

結花も心を強く持てるようになった。

「あなたに出会って感激した」そう結花は手紙を友之に書いた。




それから数年後、


結花と村上はインドへ出かけることにした。結婚式をインドであげることになっていた。

はじめての海外旅行に結花も興奮していた。

しかし、前日に大げんかをしていたのだ。

フライトは、午後4時。しかし結花は午後1時の時点に家にいた。

すでに、村上は一人で、空港で待っていた。結花は友之の書いた手紙を読み返していた。

「何度喧嘩をして、何度傷ついても、かまわない。後悔するのなら、やり直してみろ。

ためらいや、おそれを乗り越えて、後悔だけはするな。俺はいつでもお前の味方だ」

その一説を読んで、結花は再び空港へ向かった。

そして、到着して、村上の姿を100m先で見つけた。

すると、ポケットに入れていた、パスポートをなくしていたことに気づく。

このまま村上のところへ言って、それを伝えたら、一緒にいかないとなる。

今回は、村上が大切にしていたイベントがインドで待っていた。

一生に一度のチャンス。それをつぶしてはいけない。

結花は、村上のへの気持ちを考慮して、そのままパスポートを探しに電車へ戻ろうとした。

時間は午後3時。フライトまで後1時間。


すると向こうから、やってきたのは、友之だった。

そして手に持っていたのは、結花のパスポート。

なんで???結花は友之に聞いた。

実は、友之は今日がフライトだとは知らなかった。偶然に、仕事先の

出張で、海外へ出るため成田へ向かっていた。すると、

すわった電車のシートから、なんと結花のパスポートが見つけたのだ。

そして、それを持って空港へ急いだということだった。

友之の心と結花の心が通じて、奇跡をおこして、結花の人生を再び救った瞬間だった。

「言ったろ。お前のことを助けてやるって」そう笑顔でパスポートを渡した。

100m先には、村上がいた。そして結花を見送る友之は笑顔でいっぱいだった。




「なんだ?」学校の帰り道何気ない光景に見慣れないものを見て川岸翔子は顔をあげる。

ちょうどその日はバレー部の帰り道だった。いつもなら、もっと遅く帰るのだが、今日に

限って体育館が工事中ということで、筋トレのみのメニューをこなして家に帰る途中だった。

翔子が見たのは、江戸川の土手下で喧嘩をするネコだった。

夕暮れときに激しく戦うネコ同士の喧嘩かと思いきや、やや、その光景に異様さを感じたのは、

状況であった。

かがみ込んで、様子を身を乗り出して、じっと見ていた川岸翔子の顔からは

好奇心は消えていた。

「これって?」

翔子は体をすべらせて土手下へあわてておりる。

「ちょっと、あんたたち。なにやってるの?」

「それがどうかした?」

見た目は、小学校高学年の3人組と見えた。

「弱いものいじめじゃないか」と言いかけて、そのまま言葉を飲み込む。今時の

小学生に、弱いものいじめという言葉を伝えても、簡単に伝えられる自信がないからだ。

「とにかく、動物をいじめるのはよくないのよ。他にやることあるでしょ?」

「意味はわかるけど、どうしていじめちゃいけないんだ?」

「どうしてって、そりゃ、かわいそうだからよ。」

小学生のリーダーらしき風貌の男子は、しばしこちらを見つめていた。

「だから、どうしてかわいそうだと思うんだよ?」

「ただ、弱いものいじめをするのはかっこう悪いと思うからよ。」

「ああ、格好悪いね。」、とどうやらリーダーは納得したようだった。

しかし、翔子の指摘に、拍子ぬけしているのは明らかだった。

翔子は、出来るかぎり、頭ごなしに責めるのではなく、なぜ虐待しているのかを

慎重にさぐろうとしていた。

「ねえ、動物も同じ生き物でしょ、だからそれをいじめたりしてもうれしいこと

ないでしょ?」

「あのな、動物っていうのは人間とは違って、人間から支配されるものなんだ。」

違うそうじゃない、彼は間違っている、私は声を大にしてそう言いたかったが、少年の

目の奥の冷たい目線に私は躊躇した。

「わかった。でも、支配するにしても、大切にするという考えはどう?」

「でも、このネコはネコじゃない。」

「ネコじゃない?」

「ああ、そうだ。」彼が吐き出すように言う。

「ネコじゃない。だって、目がない。」

「どういうこと?」翔子は目を瞬きしながら、顔をネコに近づける

すると、そのネコは両目とも潰れて存在していなかったのだ。

目はまるで、縫われたように、目がみえない状態なんだ。

翔子は、衝撃的な風貌に、驚いていた。

「ほらな、いっただろ。ネコじゃないって。」

翔子はほほを引きつらせていた。ネコがかわいそうで、ならなかった。

人間社会や、ネコ社会から異端児として扱われてきたのだろう。その風貌からは、

たくましさだけなく、どこか、心の底から来る闇みたいなものも発していた。

「おい、お前ら何してる。」

後ろから大きな男性の声が聞こえてきた。あわてて小学生たちが逃げるように

その場を去る。

「翔子ちゃん、大丈夫?」声をかけてきたのは、亮介だった。

「どうしてここが?」

実はツイッターで、陽子が知らせてくれたんだ。翔子が小学生にかつあげされてるって。

「かつあげ?」

「そうじゃないんだ?」

二人は目を会わせて笑っていた。

「いや、実は、小学生がネコをいじめたから止めたのよ。」

翔子は、一部始終を亮介に伝えた。亮介は、翔子の行動に感心していた。

「このネコちゃん、目はどうしたのかな?」

「きっと、子供の頃に感染病か何かで、目に損傷を受けたんじゃないかな。

俺のまわりにこういうネコを見たことがある。」

「そうか、生まれつきじゃないんだね。このネコちゃんは今は暗闇の世界

で生きてるのかな。」腕をくんで、ふんふんと頷いている亮介はこう発言を

した。

「カタツムリっていうのは、目があるけど、明るさを区別するぐらいしか

出来ないって知ってた?」

「そうなの?」

「ああ、つまり、人間のような目を持っている動物っていうのは少ないんだ。

モグラの目なんていうのは、退化してほとんど見えない。しかし聴覚は鋭く、

かすかな音や振動にも文官に感知して餌動物を捕まえたり、外敵から逃れたりする。」

「なるほど、そうなると、このネコちゃんも聴覚がすごく敏感なのかもしれないね。」

「ああ」

「私、このネコちゃん家に連れて帰って飼おうかな。」

「ええ、でも君の両親はokするかな?」

「反対されるね。でも、私はこのまま見て見ぬふりは出来ない。さっきの子供たちにも

そう伝えたかった。」

「そうか。見てみぬふりか。心が痛むね。」

「だから、まずはお父さんに聞いてみる。きっと反対するのは彼だから。」

その夜、翔子は目の潰れたネコを家に連れて帰った。案の定、お母さんは快く受け入れてくれたが

お父さんは反対だった。

「すぐ捨ててこい!」

「捨てるなんて、物みたいに言わないで、これは動物よ。」

「とにかく、外から拾ってきたものは、ものだ!だから、捨ててこい、これは命令だ!」

「じゃ、一回ぐらい飼ってみて様子を見るのはどうなのよ。」

母が横から口を挟んだ。

しばし沈黙が続いた。

「じゃ、どうしろって言うんだ。」

「とりあえずさ、翔子に飼わせてみようよ。目が見えないから生活が本当に出来るのか、

おトイレとか行けるのか、心配はあるけど、翔子が責任を持ってやるんだった、

認めてあげたらどうかな。それで、一度だめなら、翔子には外へ戻してもらうっていうのは」

父はしぶしぶ承諾した。翔子のやさしい気持ちで連れてきたのだから。

今後のことについては、ネコの行動次第でっていうことになった。

「大丈夫。このミーちゃんは賢いから。」(翔子はネコをミーちゃんと名付けた)

そして、翔子の家は四人家族となった。

翌朝、翔子は、驚きの声をあげた。

せっせと、動きまわるミーちゃんは、目が見えないにもかかわらず、はじめての

家の中で、まったく物にぶつからずに、ひょいひょいとよけているのだ。

「うまいもんだね。」母が思わず声をあえる。

「ね、すごいでしょ」

「トイレも誰にも教わらず、ちゃんと自分でトイレでするのよ。」

「本当か?」父も驚いた。

「そりゃ、そうよ。ミーちゃんはただのネコじゃないもの。」そう言ってから

翔子は静かに笑った。

翔子は、ミーちゃんの行動を見て、安心していた。その晩は予想以上に穏やかに過ごした。

翌日、午前を無事に過ごして、お昼を全員で食べて、

時計の針が午後2時を回ったとき、不思議なことがおきた。

その日ちょうど、お父さん会社が休みで家にいた。

すると、ミーちゃんが妙な鳴き声をあげはじめた。

「ミャーゴ、ミャーゴ」

「なんか、調子悪いのかな?」翔子は心配になる。

そして、驚いたことに、ミーちゃんが、父が大事にしてる皮のソファで爪を研ぎ始めた。

まったく、言うことをきかず、家族へ向かって、フーと威嚇を

はじめた。

「どういうことだ。」父がそれを見て激怒した。

そして、そのまま、ミーちゃんは、二階へ逃げる。父はそれを

必死におう。

「もう限界だ。このネコは捨てる。ほらやっぱりだめじゃないか。」

翔子も、母もあきらめる気持ちでいた。これじゃ、らちがあかない。

ミーちゃんは、翔子の部屋に逃げ込んだ。そして、

そのまま、翔子のふとんの上に乗って、ふとんをかみちぎる。

父がホウキで、追いかけるが、ミーちゃんはまったく、つかまらない。

結局、なんとか最後は強引に布団でくるんで捕まえたが、翔子の部屋は

ぐちゃぐちゃになってしまった。

「もう夕方には、保健所の人に迎えにきてもらうからな。」父は

翔子に念を押した。

翔子は悲しい思いでそれを聞いていた。しかし、納得がいかなかった。

なぜ、あれほどまで賢いネコが急に荒れたのか???

そのとき、ピンポーンとベルが鳴る。

「あれ、もう、2時30分?」今日は家庭教師の日じゃない?」

翔子のために、母が英語の家庭教師を雇っていたのだ。すっかり忘れていた

母はあわてた。

そして、そのとき問題に気づいた。それは翔子の部屋はミーちゃんが

荒れたため、使用不可の状態だったのだ。

「どうしよう。」母は考えたあげく、父の書斎を貸してもらうことにした。

「仕方ないな。」父もやりかけの仕事を辞めて、翔子と家庭教師に

提供した。

「ミーちゃんはどうして、あんな行動をしたのかね。」母が父にふる。

新聞を読みながら、父は答えた。

「おかしいのは、お前たちのほうだろ。あんなネコを飼うなんてだいたい」

すると、2時46分になった時、。。。。。激しい揺れが家をおそう。

「ちょっと、何これ。。。。。関東大震災?。」

3月11日の東北大震災がおそった瞬間だった。

ようやく、揺れが落ち着いた瞬間に、父がまずは、母の無事を

確認して、1Fの書斎にいた翔子と家庭教師の無事を確認をした。

「良かった。」ほっと息をついた。

すると、驚きの声を父があげた。

「どうしたの?」母がかけよる。父は、2Fの翔子の部屋をみていた

のだ。すると、屋根が、そのまま落ちて、ガレキでベッドや勉強机が

ぺしゃんこになっていた。身じろぎして、父がその場でうずくまる。

一瞬間をおいてから、父が話はじめた。

「これはもしかして偶然じゃないのか?もしあのネコが部屋で暴れなければ、

あのまま翔子は潰れて死んでいたんなじゃないのか?」

「動物の本能って奴なの?」母が言う。

「おそらく、あのネコには、屋根がきしむ音と、地震が発生する前の

地響きを聞いていたんじゃないだろうか?だから暴れて翔子が部屋に入れないようにしたのか?」

「そういえば、亮介がこんなことを言っていた。目が見えないネコって

聴覚が異常に発達しているんだって。」翔子が言う。

「やつぱりそうなのか。だとすると、あの異常な行動は地震を知らせるため

の行動ということか。」

果たして偶然なのだろうか?いや、そうじゃない。ミーちゃんは頭のいいネコなのだ。

聴覚も発達していたので、知らせようとしたのだ。

翔子の身の危険を察していたのだ。家族を救ったヒーロとなったネコの

ミーちゃんは、本当の家族となって、一緒に暮らすことになった。














阿部良太は、今時珍しい好青年だった。彼の趣味はパーキングメーターにコインを

入れることだった。一見すると、普通の行動だが、彼の行動は人と違っているのだった。彼が入れるのは他人のメーターなのだ。

どうして彼はそんなことをするのか?阿部良太の彼女の坂下美春さんからの視点から覗いてみます。

阿部良太は、私よりも一回りも年上なのに、やたら子供ぽかった。実は、私は

優しすぎる彼の性格に不満があった。それは彼はアピールが下手だからだ。

普通、人に優しくしたら、それが自分の仕業だとアピールするのが普通だ。

それが、阿部には全く出来ないことだった。

「やさしさ、やさしさ」っていうけど、人に感じられないやさしさなんて、

果たしてやさしさと言えるのだろうか。彼女の私にとって、人に評価されない阿部の

行動はとても不愉快だった。

「ねえ、良太。あなたは優しいっていうより、お人良しって気がするよ。

そんな他人に知られないことして意味ある?」

「おれ、なんか変なことしてるかな?」彼が首を傾ける。

弱々しいその顔に、なんだが同情心を惹かれる。これがさらに私の不快感を増幅させる。

「あなたのパーキングメーターの行動が一番不愉快よ。」

「え?普通じゃない?」

「どこが?」

「どこがって?」

「なんで入れるのコインを?」

「そりゃ、メーターが切れたら大変だからね。」

「っていうか、他人のメーターだよ??絶対いれないっしょ?」

「入れるって」

「入れないって!」


「そんなに全否定しなくても。だって、他の人でも切れたらタイヤに

鍵つけられるよ。もし大切な出来事に遅刻して人生変わったらどうする?

僕はそれを未然に防いでいるんだよ。」

「はっ?それ意味ないよ。だって、その人はあなたが人生救ってくれて

ありがとうなんて思ってないからね」

「いいんだよ。本当のやさしさっていうのは、人に理解されることで

なく、知らないところであげるものだと思うんだ。だって、

因果応報っていうだろ。自分が助けてあげたら、他人が助けてくれるかも

しれない。僕じゃなくても、僕の大切な人とか。」

「えっ?それって、私のためっていってるの?私はあなたのその考えは、自己満足だと思う。」

「自己満足?」

「そうよ、だって、そうでしょ。自分でやさしさ与えたって思ってる

ことでしょ。それが自己満足じゃなくてどう思うの?」

「。。。。。。」

彼はパーキングメーターを見て切れそうになっていると用意した

100円玉を惜しげもなくいれていく。私はそんな姿に嫌気がさしていた。

彼と別れるほうがいいだろう、そんな想いも強くなった。

私は、そう決意をしながら、今は面接官と向かい合っていた。

「どういうお仕事をしたいと思って弊社に来られたのでしょうか?」

「私はアナウンサーになりたいという夢を持ってやってきました。」

そう言って面接を終えて、待ち合い室へ戻った。あこがれの

カジテレビに入社出来るかもしれない。「もしかすると」

そんな期待がよぎる。

私は、新しい輝かしい世界へいくために人生をかえるんだ。

良太みたいな他人の人生をサポートするだけの人生は

送りたくない。そんな想いを強くした。

すると、携帯電話が鳴った。

用意してあった着メロが激しくなる。私はあわててその

電話を取る。

「坂下さんでしょうか?カジテレビの安西です。

先日受けていけていただいた面接につきまして

弊社で検討した結果、坂下さんにぜひ最終面接に来ていただきたい

と思いました。いかがでしょうか?」

「そりゃ、もちろん、ぜひお願い致します。」

私は優秀なジャーナリストになって、将来は世界を渡り歩くような

報道人を目指していた。

ここがチャンスだ!人生の岐路だ。そう考えていた。

そして、迎えた最終面接の日。

私はいつも通り、車で出かけて、パーキングメーターに止めた。

実は、止めるつもりはなかっただが、自分が大切な口紅をつけ

忘れていることに気づいたからだ。そこで、

一旦、パーキングに止めて、そして、ドラッグストアへ買い物へ

出かけた。すぐに戻るつもりで、100円を入れた。

しかし、ドラッグストアは思いのほか、並んでおり、さらに

自分の番が来たときにレジが故障した。

ようやく、解放されて、あわてて車に戻ると、驚きの現場を

見かけることになった。

「どういうこと?」

自分の車に、警察官が向かっている。となりの車も違反をしたらしく、

タイヤにロックをはめられてレッカーされている。

そして、自分の車の番を迎えた。

自分と車の距離は100mある。ボルトならば、9秒台で

到着すると思うが、私の足では30秒でも届くか分からない。

もし、自分の車にロックがされたら、絶対に最終面接には

間に合わない。

私は、あきらめの境地に達していた。夢を目の前にして

口紅で私は断念するのか。。。。。。。。。

すると、私の車に警察官が近づく。と、思ったら、横から黒い

影が走ってきて、私のメーターにコインを投入した。

警察官はそれを横目に眺めて、苦笑いをしている。

しかし、それをとがめるすべもなく、見逃していた。

私は目の前で起こった事実が信じられなかった。私は、コインを

入れた人物が後ろ姿のため、見ることが出来なかった。

そして、その人物を追った。

彼?阿部良太なのか?私の鼓動は大きくなった。

「すみません。」私はおいついて、声をかける。しかし良太ではなかった。

「今、私の車のパーキングメーターにコインを入れてくれましたよね。」

「ああ、はい。」

「なんですか?私の彼の阿部良太から頼まれた?」

「阿部良太?知らないよ。」

「じゃ、なんで他人のメーターにいれたの?」

「いや、誰かが困るのだったら、100円で他の人にやさしく出来て

人生をかえられるかもしれないじゃない。」

私は唇をゆがめて、驚愕していた。良太と同じことをいう人間が、私の

人生のピンチを救ってくれた?そんなことがおきるのか。

そうして、無事に最終面接を受けて、私は念願のカジテレビに入社した。

そして、今は私は良太の助手席に座ってる。

「あ、ちょっと止めて。パーキングメーターSOSがある。」

「じゃ、いきますか」

「うん。」

以来、私と良太の趣味はパーキングメーターで人を救うこととなった。

因果応報とはよくいったものだ。見ず知らずの現れた人間は良太の

行動から生まれた運命の道しるべだったのだろう、そう思っていた。