どちらが執着したのかわからなくなるホラー・サスペンス。
ラストは気の毒でしかない。
犯人を追跡中に同僚を亡くし、高所恐怖症(めまい)が原因で警察を辞めた元刑事スコティ(ジェームズ・スチュワート)。
友人のギャビン(トム・ヘルモア)から奇妙な行動を繰り返す妻マデリン(キム・ノヴァク)の尾行を依頼されたことで、彼女の影を追うことになる。
スコティは亡霊にでも取り憑かれたようなマデリンの秘密を、古本屋の店主ポップ(コンスタンティン・シェイン)から聞く。
彼はマデリンに取り憑いているのは、100年前の悲劇の女性「カルロッタ・バルデス」だという。
そして追跡していると、マデリンはサンフランシスコの港で身投げする。幸いスコティがいたことから彼女は事なきを得るが、マデリンは意識を失いスコティが保護する。
目を覚ましたマデリンはスコティに介抱されるが、経緯を聞いていた最中に姿を消してしまう。
そしてスコティとマデリンは互いに恋心をいだき、行動をともにするようになる。
ある日、マデリンが夢で見た修道院に行きたいというので一緒に行くが、彼女は突然、高い鐘楼へと駆け上がってしまう。
スコティは”めまい”のせいで上まで追うことができずにいると、マデリンが塔から身を投げて転落死する瞬間に立ち会ってしまう。
その後、失意のどん底に陥ったスコティの前にマデリンと瓜二つの女性、ジュディ(二役)が現れ、スコティは彼女にマデリンの姿を重ねていく。
ジュディもスコティに思いを寄せるようになり、お互いが狂気の恋に陥ってしまう。
ヒッチコック作品というと、昭和の頃にはテレビで映画番組が数多く放送されていたので、子どもの頃に見た覚えはある。
ネタバレを言えば、ギャビンは妻を殺害するためにスコティを利用していた。しかし、この映画が恐ろしのは、その後のスコティとジュディの異様な関係にある。
そして、スコティがジュディと巡り合ったことで、忘れられずにいたマデリンの姿を重ねて恋心を抱く。
ここまでは分かる。
しかし、スコティのマデリンに対する執着が異常で、ジュディに思いを寄せるうちに何か腑に落ちないことを察したのか、マデリンの服や髪型を真似るように強要していく。
要求されるままマデリンを再現していくうちに、ジュディも良心の呵責に苛まれる。
ヒッチコックが意図して描いたのは分かるが、スコティがいつから気づいていたのかが分からない。
その曖昧さが、ホラーのような不気味さを生んでいる。
そして映画ではキム・ノヴァクの二役なんだろうが、観ているうちに、「マデリンがジュディを演じている」ようにも見えた。
だからスコティが惹かれていくので、ヒッチコックがあえてそこを狙ったのではないかと思った。
しかし、ジュディがスコティに真実を明かそうと書いた手紙を破り捨てるシーンがあるので、これは私の完全な妄想だと思う。
まぁ、マデリンが映画の中でも二役になると違う作品になっていくしね。
でも、そう思ってもおかしくない、というか思わせてしまうストーリー展開が面白い。
だから最後があっけなかった。
個人的に気になったのは、スコティの元婚約者であるマージ(バーバラ・ベル・ゲデス)の役回りが、イマイチ不明なんだが、彼女の役回りはスコティを正気に戻す役割だったんだろうな。
そしてスコティだけでなく、それ以上にマデリンがサイコで、スコティの病的な執着は彼女から伝播したもの、そうも思えるけど。
だからスコティとマデリン/ジュディの関係は「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている」を地で行くような、因果関係にも見えた。
レビューを書いていて気づいたのが、途中から私もスコティのように「ジュディ」ではなく「マデリン」を見ていた。
これってヒッチコックの術中にはまってしまったかもね。



