三匹の忠臣蔵

三匹の忠臣蔵

日々是好日。
お弁当ブログだった「お弁当にはたまご焼き」からリニューアル。
映画レビューを中心に、日々思いついたこと、感じたこと、趣味のことを書いてます。

思想信条は中道。
趣味は映画・ドラマ/ブラス・オケ・オペラ/海外サッカーなどの鑑賞。
体を動かすのはもっぱら自転車で、時々ウオーキング、フルマラソンは一度だけ。
日々ネタ/動物ネタ/時事ネタは脈絡なく私的な感懐を書いてます。

数学に天才的な才能を持った青年が、本当の生きる意味を見いだしていく人生再生の物語。

天涯孤独のウィル・ハンティング(マット・デイモン)は、マサチューセッツ工科大学で清掃員をしながら、数学教授のジェラルド・ランボー(ステラン・スカルスガルド)が廊下の黒板に掲げた難問をさらりと解いてしまう。


驚いたジェラルドはゼミで「解いたものは名乗り出て栄誉を受けよ!」というが教室は静まり返ったまま。
そこで、「それならこれは解けるか?」と、教授陣が2年かけて証明した問題を再び廊下の黒板に出す。
同じ頃、ウィルには暴力沙汰で収監される危機が迫っていた。

 

黒板に向かって問題を解いているウィルをたまたま見かけたジェラルドは、彼を追いかけるが行方知れず。
そこで清掃会社へ問い合わせ、ウィルの現状を知り、裁判所と掛け合って彼を自分の監督下に置くことにする。
条件は毎週ジェラルドと会って数学を学ぶことと、セラピーを受けること。


ウィルはジェラルドとの約束には応じるが、セラピーでは壁を作り、何人ものセラピストがお手上げ状態になる。
そこでジェラルドが頼ったのが、学生時代の同級生で心理学者のショーン・マグワイア(ロビン・ウィリアムズ)。


ショーンは最愛の妻を病気で亡くした深い悲しみを抱えていて、ウィルもこれまでのセラピストと同じように彼を挑発するが、思いどおりにはいかない。
ショーンは、頑なに心を閉ざすウィルと同じ目線まで下り、時間をかけながら彼の心に寄り添っていく。

 

 


 

 

ジェラルドがウィルを引き取った目的は、彼の才能を世の中に出すことにあり、ウィルの人生をなんとかしてあげたいということではない。
ウィル本人がどう生きたいのかよりも、その才能を引き出して社会のために使わせることを優先する。
言ってることは理解できるけど、そこにウィルの一人の人間としての人生はない。
これがショーンとの違いで、2人は衝突する。


ウィルは過去のトラウマから壁を作り、何事も先が見えるかのように相手の弱点を見抜き、言葉で負かしてしまう。
しかし、ハーバード大学に通うスカイラー(ミニー・ドライヴァー)には心を開いていくことから、ウィル自身も、このままではいけないということが分かってるように見える。


ショーンに「なぜMITで清掃員をしている?」と本質を突かれるが、ウィル自身も彼なりに社会との接点を求めてたんだと思う。
だから、心に同じような傷を持つショーンに少しずつ心を開いていく。


 

という話なんだが、本作のMVPはウィルの幼馴染であり、良き理解者であるチャッキー・サリヴァン(ベン・アフレック)。
いつも一緒に工事現場で働き、夜はビールを飲んで暴れる最高の相棒。
粗暴で単純な男に見えるが、誰よりもウィルの才能を誇りに思ってる。


そんなチャッキーが、スカイラーがカリフォルニアへ医学の勉強に行ったことを知り、ウィルに語るシーンが本作のハイライト。
「20年たってもお前がここに住んでたら、俺はお前を許さない」
「お前は俺とは違う。俺は50になって工事現場で働いててもいい。だが、お前が才能を無駄にするなら許せない」
そして、
「俺は毎日お前を迎えに行く。でも、ある日ノックをしてもお前は出てこない。何の挨拶もなく消えている。そうなってほしい」
これがウィルの背中を押すことになるけど、ラスト、いつものように迎えに来たチャッキーが、ウィルのいない家を見て浮かべる笑顔が強烈に美しい。

 

ショーンはウィルの心を解放する人。
ランボーはウィルの才能を社会へ出そうとする人。
スカイラーはウィルに別の人生があることを見せる人。
でもチャッキーは違う。


数学も分からない、心理療法もできないし仕事を紹介できるわけでもない。
ただ毎日一緒に工事現場へ行って、酒飲んでバカやってるだけ。
それでも、「お前が俺と同じところに居続けたら許さん」と言える。
普通なら親友だから「ずっと一緒におろう」になるところを、チャッキーは本当に親友だからこそ「ここから出ていけ」と言う。
だからラストがええんよな。


いつものように迎えに行ってノックする。
返事がない。
ここでチャッキーが語った「いつかそうなってほしい」が、本当に起きる。
そして寂しがるんじゃなくて、ニヤッと笑う。

ウィルの「旅立ち」を最後に完成させたのは、ウィルでもショーンでもなくチャッキーなんよね。
だからこの映画は、チャッキーの映画でもあると思う。

 

 

 

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』