女性副大統領候補に指名されたことで醜いスキャンダル攻撃に晒された一人の女性が、尊厳とプライバシーを守るため、どこまで沈黙を貫けるのかを描いた政治サスペンス。
橋の下で釣りをしていた副大統領候補で現職の知事ジャック・ハサウェイ(ウィリアム・ピーターセン)の目の前に、上から車が落ちてくる。
ハサウェイは躊躇なく湖へ飛び込み、乗っていた女性を救おうとするが、女性はそのまま命を断つが、これが後の伏線となっている。
実は、3週間前に副大統領が急死したことから、後任にはハサウェイが有力候補と目されていた。
しかし大統領のジャクソン・エヴァンズ(ジェフ・ブリッジス)は、同じ民主党の上院議員のレイン・ハンソン(ジョアン・アレン)を指名する。
共和党の下院議員であるシェリー・ラニヨン(ゲイリー・オールドマン)は、ハンソンの副大統領就任を断固として阻止しようと公聴会の委員長に就任する。
ハンソンの側近だったレジナルド・ウェブスター(クリスチャン・スレーター)もラニヨンの側に寝返ろうとする。
若き日のレインとされる女性の乱交パーティーの写真をメディアにリークしたラニヨンは、公聴会でレインの過去の浮気疑惑も追求し、耐えられなくなったレインは大統領に候補を辞退する旨を伝えるが、大統領のエヴァンズは奇策に打って出る。
公聴会でラニヨンがレインを追求するために政治信条ではなく、スキャンダルを選択し、女性なら口にしづらい性的な問題を、直接的な表現は避けながらも、観る者に容易に想像させる巧みな尋問を仕掛ける。
これが下劣で、ゲイリー・オールドマンの風貌や演技とも見事にマッチしていて、実に憎たらしい。
ラニヨンのリンチと言っていい「政治的私刑」に対し、尊厳をかけて沈黙する女性政治家レインの構図が、実際の公聴会を見ているようにリアルに続く。
そしてラニヨンがとにかくいやらしい。
この映画が面白いのは単純な「レインを失脚させたい反対派の政治家たち」ではなく、対立の根底に宗教的価値観まで踏み込んで描いているところ。
中絶問題を巡る価値観の対立を見ると、現在のアメリカ政治におけるトランプ政権と福音派の関係にも通じるものがあり、政治的主張にも聞こえ、そうしたテーマが、エンドロールの「我々の娘たちに捧げる」に着地する。
公聴会で中絶に対する考え方の違いと、政治に宗教が絡むと厄介だということをしっかり描いていて、このシーンが本作のハイライトだと思う。
日本でも統一教会と自民党とのつながりや、日本会議のことは憚れることなく語られているので、エンタメとして昇華させてもいいと思うが、その界隈では何処かタブー視されてる印象がある。
そしてラストで大統領エヴァンズが「彼女(レイン)は沈黙を貫くことで、個人の尊厳を守った」と議会で熱弁し、現代を生きる女性たちへの力強いエールとして物語を締めくくる。
イデオロギーっぽい社会的左派の映画のようにも見えるけど、私は気にならなかった。
