大掛かりな狂気を描いたカルト映画の傑作。
オウム真理教にしろ、旧統一教会にしろ、どこか似たような空気を感じた。
行方不明の少女ローワン・モリソン(ジェラルディン カウパー)を捜すためにサマーアイル島にやってきたハウイー巡査(エドワード ウッドワード)は、住民にその趣旨を伝えるが要領を得ない。
宿泊先はマクレガー(リンゼイ・ケンプ)のパブの2階に決めるが、島の住民は毎夜パブで宴を催し、マクレガーの娘ウィロー(ブリット・エクランド)もどこか様子がおかしい。
何より、島はリンゴの産地で、島民は新鮮なフルーツやごちそうを食べているにも関わらず、よそ者のハウイーに提供される食事は缶詰ばかりで、まともな食事すら与えられない。
そして夜に外に出ると、男女が異様な光景を繰り広げていた。
それでもハウイーはローワンを探しに島を歩き回るが、女性教師のミス・ローズ(ダイアン・シレント)は島の子どもたちに、植物の繁殖に絡めた異様な性教育を教えている。
そして管理している図書館員(イングリッド・ピット)に島の戸籍を見せるように言うが、彼女は領主であるサマーアイル卿(クリストファー・リー)に会うように勧める。
サマーアイル卿に会ったハウイーは島の儀式に参加することでローワンを救えると判断し、島民の衣装を奪い、自ら儀式の行列に紛れ込むが、それこそが罠だった。
島民の異様さから「何かある」は想像できるが、それでもラスト15分までは、正直「なんでこんな映画が面白いん?」と思っていた。
ところが、そこから映画が一気に豹変する。
振り返ってみると、ハウイーが島に着く早々「領主に会ってくれ」、戸籍を見せろと言うと「領主に会え」と、何か異様な雰囲気があったが、あとになって「あれも伏線やったんか!」と気づく。
冒頭すぐに出てくるが、そもそもこの島は領主サマーアイル卿(クリストファー・リー)の私有地なわけで、「領主」という言葉を軽く流していた自分に気づく。
題材はカルト宗教なので、本来なら犯罪のはずが、彼らの教義ではそうではない。
炎に包まれながらも島民に対抗するように、キリストの教えを暗唱するハウイーが、気の毒というより、むしろ哀れに見えてきて、逆に笑顔の島民の狂気が引き立つ。
なんとも言葉にできない思いになる。
サマーアイル卿を演じるクリストファー・リーって、あのドラキュラの人だと後で気づいた。彼は「低予算だが絶対に歴史に残る名作になる」と脚本に惚れ込みノーギャランティーで出たらしい。
この作品はポン・ジュノが「今でも観る作品」と語っていたので、気になって観たけど大正解やった。
そして演じるブリット・エクランドにしろ、ダイアン・シレントにしろ、あの演技そのものが、伏線というより観る側を騙すための罠だったと思う。
ラストを観終えたあと、怖かったのは儀式そのものというより、それを笑顔で受け入れている島民たちだった。
宗教という名の狂気には、常識も倫理も通用しないことを思い知らされる一本だったが、ホラーではなく、サスペンスとして観れて良かった。



