小説NO.19 ~地下室の特訓 1日目~ 其の弐
「あたいの格好は子供に見えるかもしれない。
でも実際、生きてる年月は朱音さんより長い。この世界は時間の流れ方が違うからね。
ここは手加減なんかいらない。
まずは好きなようにかかってきて!」
右の耳元で声がする。
(そうなの?!Σ(゚д゚;))
そう思いつつも、朱音は鞘を右に振り回した。
・・・手ごたえは、ない。
「だめだめ。声なんてどこからでも飛ばせるの(・ε・)
声を基準にするんじゃなくて、気配を掴んで。」
サラにだめだしをくらう orz
(気配・・・
こんな真っ暗な中で?
ここは不思議だ。
普通、暗闇のなかでは段々と目が慣れてくる。
なのにここは本当の「闇」。何一つ見えない・・・。)
朱音は不思議に思った。ただし、ひとつ気づいたことも。
(・・・慣れ?
では、気配も集中していれば慣れるのではないだろうか・・・!)
朱音は瞳を閉じた。どうせ見えないならこうして聴覚に集中したほうがいいと判断したのだ。
ドスっ・・・
朱音がもたついているとサラの蹴りが腹に入った。
相当痛い・・・が、蹴りの来る瞬間とその後、確かにサラの風(気配)を感じた。
咳き込みながらも朱音は全身をアンテナにする気持ちで構え続ける。
サラは・・・今どこなのか・・・
其のとき、後頭部にフッと風を感じた。
(いる!)
朱音は身を屈め、鞘ごと剣を突き上げた。
「いたぁいよぅ~・・・(。>0<。)」
サラは腹を押さえて泣いているようだった。
当たった・・・!
当たったには当たったが、声を出してないていられるレベル。
朱音の攻撃よりもサラが急所を避けるスピードの方が勝っていた、というわけだ。
その後もお互い蹴られ・突かれを繰り返した。
朱音の息は上がる(;´Д`)。・・・が、サラの息は聞こえない。
(疲れてないのかしら?)
そう思っていると、サラの声が響いた。
「そろそろあたいはウォーミングアップ終わったよ♪
朱音さん、だいぶ反応良くなったね!でもね、そんなんじゃ狼になってないあたいにも勝てないよ?
朱音さんはあたいの攻撃を交わして突いてくるだけでしょ?
あたいには、今朱音さんがどこにいるのか、目で見るようにわかってる。息もあがってるし(^O^)♪
朱音さんは、まだ、離れたあたいの位置がわかってない。
それが分かるようになるまでは、次のステップには行けないからね。
本気でかかってみるよ?体での攻撃、じゃなくて、短剣を使わせてもらうからね(o^-')b」
一瞬、朱音は恐怖を覚えたが、「自分のためだ、己に負けるな!」と自身に言い聞かせた。
「ええ・・・。お願い!私も負けないからね!」
己に負けるな・・・
朱音が、誰かに昔・・・言われた言葉であった。
小説NO.18 ~地下室の特訓 1日目~ 其の壱
シュリは、朱音の父の話、これから王との決闘が始まるという話、それらを淡々と喋った。
みんな驚きつつも黙ってその話を聞いていた。
話が終わると、朱音が口を開いた。
「変だと思ったわ。母さんや兄さんのことは徐々におもいだしているの。
なのに、父親のことは何一つ思い出せないから・・・。」
「ああ。思い出させないように・・・自分の中の力が思い出を封じているのかもしれないね。」
と、シュリは答える。
そして続けた。
「だから、君は現世に居るべき人なんだ。
しかし、僕の父がこの世界を支配している限り、君を現世に帰すのも不可能に近いし、
帰ったところで・・・追っ手がかかってしまう。
現世での人生を全うした後、君の魂は今度こそ浄化される。ここで王に利用されるわけにはいかない。
君は大切な仲間だ。
だからここで死ぬのではなく、きちんと無事に生きられる現世で、寿命までのときを生き抜いてほしいから・・・。」
シュリの言葉に深くルースも頷いた。そして明るく振舞った。
「大丈夫ってことよ('-^*)/シュリ様も、サラも、俺もついてるし、何よりあんたも強いから!
びっくりしたぜ?鞘付きの剣で敵倒してんのみたときはさ!」
「満月の晩がいいと思うわ。あたい、満月の晩ならいつもより強くなれる。」
サラも朱音を仲間と認めていた。
二人の言葉を聞き、シュリは自分の考えを述べた。
「うん。満月の晩がいいだろうね。それは間違いない。
ただ、ルースの言っていたこと・・・、それは危険を呼ぶんだ。
朱音はまだ剣をコントロールすることができていないし、力を自分で安定させることができない。
今日はちょうど満月だ。戦いはその次の満月・・・。
それまでここの地下に結界を張って、僕・ルース、そして今晩は狼になるサラ、この3人で、
朱音に戦士になってもらう。いいね?みんな。」
「あたいはいいわ(^∇^)」
と、サラ。
「ああ・・・。朱音ちゃん。怪我することになっちまうだろうが、ここは勘弁してくれよな(´□`。)」
ルースは下を向きつつも、これが朱音のためだと自分に言い聞かせていた。
「わかりました。みんな、よろしくね!
そうと決まれば早速はじめましょう!」
朱音は立ち上がる。
(ありがとう・・・ありがとうね、みんな!私、必ず強くなるから・・・)
静かにシュリも立ち上がり、続いてルース・サラも立ち上がった。
「こっちだ。」
シュリが床に手をかざすと、スッと床が開いた。そこには地下へと続く階段が続いていた。
「真っ暗ね・・・」
朱音はひんやりと冷たい空気にぶるっと震えた。
-闇にお前は怯えるか?
-世界がお前を呼んでいるぞ。
-悪いが頼むぞ・・・私も、ついているから。
階段を降り終える頃、朱音の頭の中で男の声が響いた。
「だれ∑(゚Д゚)?!」
叫ぶ朱音にみんなぎょっとする(・ω・ノ)ノ!
「朱音ちゃん、暗いとこ苦手なの~?」
心配するルースの言葉に、朱音は微笑んで答えた。
「大丈夫よ、ごめんね、気にしないで('-^*)」
シュリにもその声は聞き取れた。
誰であるかもわかっていた。しかし、あえてそれには触れず、床を足で踏みしめたとき、こう言った。
「ついたよ。ここが地下室。もう歩きながら結界は張っておいた。
真っ暗の設定で今日は戦ってもらう。
日によって周りの状況は変えるつもりだ。」
(ほんとに真っ暗・・・こんなので戦えるのかしら??)
朱音は心配になる。
「朱音さん、最初はあたい。まだ狼になってないから弱いけど、
それでも初級にはきついくらいだよ(`∀´)イヒ♪」
最初の相手、サラ(人の子供時)。
「お願いします!」
朱音は剣に手をかけ、声のするほうをさぐりながら、構えた・・・
(みんなは私のためにこんなに協力してくれている・・・
私が足を引っ張るわけには行かないわ!
私、戦士になる!)
小説NO.17 ~目覚め~
朱音が目を開けると、そこには廃墟で会った青年、「真っ白のマントに半分がメカのような容貌」のシュリが
こちらを見つめていた。
義眼出ないほうの目は二重で大きい。
優しげなその瞳はグレーの瞳をしており、髪はショートそしてこちらもグレー。
「おはよう(^ー^)」
シュリは微笑む。
「・・・。私は・・・・・」
むくっと朱音が起き上がると、横でルースも目を開けた。
「私は・・・
何で、あちこちで狙われるわけ?
何で!最近起きているにもかかわらず、夢みたいに母さんや兄さんのことを思い出すわけ?
一体私は何者なわけ?
いきなり戦ったりもしたし・・・ヽ(`Д´)ノ」
興奮冷めやまぬ朱音は、ルースに聞いているのか、それとも独り言なのか、
それすらよくわからない雰囲気でひたすら疑問を口にした。
「俺もしりてぇことはあるんすよね・・・。
何で朱音が王に狙われているのか。んで、何でシュリ様は朱音ちゃんを呼んだのか、ね。」
ルースはしっかりとシュリの目を見て言う。
「うん。僕も喋ろうと思っていたところだよ、それはね・・・・・」
ギュルルルルルるるる~~~~~~・・・・・σ(^_^;)
シュリが喋りかけると、二人の腹が思いきり食物を欲した。
「はっはは(=⌒▽⌒=)
まぁ、食べながらにしようか。サラがご飯を用意してくれているよ。」
そこにヒョコッとサラが料理を持って現れた。
Wベッドでルースと寝ていた朱音にぷんぷんしながらも、
二人にまるでシェフが作ったかのような、ステーキと目玉焼き、サラダ、スープ、パンを、
食卓に用意していた。
「あたいの愛のお料理、食べてね
」
サラはそういうと、ルースの目玉焼きの皿に、ケチャップで、でっかいハートマークを絞った。
「あ、ありがとな(^▽^;)」
ルースはそういうと料理にがっつきだした。
「ルースはあたいのダーリンなのよ(`ε´)」
朱音の目玉焼きにはケチャップで『あたいはサラ』と描き、サラはルースの横に座る。
「ありがとう、サラちゃん(*^▽^*)」
(かわいいわねww)
妹を見るような気分でサラを見ると、朱音はルースに負けないくらいの勢いで
ガツガツ料理を食べだした。
30分後・・・・
・・・( ゚ ▽ ゚ ;)!!
既に満腹なルースの横で、朱音は3回目のステーキおかわりをしていた。
(それにしてもよくたべるなぁ・・・)
(このお姉ちゃん・・・底なしかしら・・・)
(朱音ちゃん、おっとこまえだな~;)
周りで見ている3人は、これからの話をするどころか
朱音の食べっぷりに感心・・・というか驚愕していた(・_・;)
結局・・・シュリが、朱音のために
皆の自己紹介 ・ これからの話 ・ そして朱音の力のことについて話し始めたのは、
朱音が6枚のステーキと食パン1斤、目玉焼き3個を・・・
たいらげてからであった・・・(^_^;)
小説NO.16 ~朱音の力~ 其の弐
-現世と死界の狭間の世界-
そう、それは今、シュリの父が王として、支配しているこの世界のことだ。
しかし、シュリの父は3代目の王。
その前にも王は存在した。
そして、初代の王を務めた者、彼は朱音の父親なのである。
元来、世界には現世と死界、この二つしか存在しなかった。
朱音の父は死界の王的存在であった。
彼は権力にさほど興味がないひとであり、周りからの信頼も絶大であった。
そのため死界の番人たちは、死界へやってきた者の魂をを成仏させることに一生懸命取り組んでいた。
しかし、現世で辛い死に方をした者や、悪党であった者ももちろん存在する。
いくら番人が必死に魂の浄化に取り組もうとも、現世へ逃げ出し悪霊化する者は後をたたなかった。
それは魂が巡る順序としてあってはならないこと・・・。
朱音の父親、このときの彼の名は岩砕(ガンサイ)というが、
彼は頭を悩ましていた。
(どうすればこの現状を緩和・そして止められるのか・・・o(_ _*)o)、と。
そこで彼は思いついた。
現世と死界の間に「ワンクッション置ける世界」があれば、
現世での苦しみを抱えた魂や、特殊な型の魂(狼女や竜人はそれにあたる)は
そこでもう一度人生を見直すことができ、死界への抵抗がなくなるのではないか?と。
彼は実にひとりひとりの魂を実に大切にする人であった。
死界を任されている彼には、空間を築く力が備わっていた。
空間を築くこと、それは世界を築くこと・・・。
彼は徐々に準備を整え、自らの力も鍛えた。
そして準備が整ったとき、信頼している番人の長、頭輪(トウリン)に自分の考えを告げたのだった。
頭輪は驚きはしたが、岩砕王の言うことは正しいと感じた。
彼も、死界の荒れ果て様には頭を悩ませていたためである(´・ω・`)。。
それよりも、岩砕への尊敬心、信頼が何より先にたったのかもしれない。
こうして岩砕は、「死界の王権」を頭輪へ引渡し、
彼の持つ力を駆使して、今シュリたちのいる世界を造り上げたのであった。
彼はそこへ流れ込んでくる魂には、働くことの大変さを覚えさせるため、自給自足の生活をさせた。
薬やギャンブルはもちろん禁止(`ヘ´#)。
ただ、週に一回必ず岩砕自身が住民の場所に出向いて、話し合い・相談の場を設け、
現世での悲しみや仲間との悩みを聞くようにした。
彼の苦労もあり、世界は理想の形で廻りはじめたかのように見えた。
・・・その矢先だ。
死界の王時代の苦労や、世界を築くという莫大なエネルギー消費のツケが岩砕をおそった。
彼の体は知らず知らずの間に蝕まれていたのだ。
彼自身が死界へ旅立つのに、そう時間はかからなかった・・・
それからの狭間の世界は悲惨な状態に陥った。
王権争い・薬・ギャンブル・売春・・・・・
そして王権は「今の王の祖父」が勝ち取り、完全なる「王族支配」の世界が出来上がっていった。
時を重ねるごとに治安は悪くなり、平民の住処は廃墟と化していった・・・。
そして今に至る・・・。
岩砕の魂は死界を経て浄化され、現世に生をうけた。
それが朱音の父親であった。
普通なら、浄化された魂には前世での力や思いは残らない。
しかし岩砕に限っては例外であった。力が強すぎたのだ。
現世で生きる彼の中には、消しきれなかった「岩砕の力」が、わずかながら残っており、
その力が彼の娘、「朱音」が産まれたときに何らかの原因で移行してしまったのだ。
朱音の父はそこでやっと、「普通の人間」となった。
その代わり、朱音は、「一般人」にはなれなかったが・・・
朱音の兄にはその現象が起こらなかった。
いわば朱音の方が「異例」なのである。
(朱音はまだそのことに全く気づいてはいないが、伝えておいたほうがいいのかもしれない・・・。
仲間にも、だ。この戦いには協力・団結が必要だから。)
シュリは朱音の髪をそっと撫でた。
「・・・ん・・・Zzz…(*´ `*)。o○。」
朱音はうっすらと目を開けた。
小説NO.15 ~朱音の力~ 其の壱
「おっと、二人ともお疲れか( ゚ ▽ ゚ ;)」
(訳もない、ありがたいことだ。
僕は仲間に恵まれている・・・。)
シュリは義手を二人にかざすと、瞳を閉じ、気をこめた。
疲れきった体に力を注ぐために。
パーッ・・・と黄色い光がふたりを包む。
二人を回復させると同時に、ルースと朱音の記憶がシュリに流れ込んでいく・・・。
「大変だったな、ルースも朱音も・・・。」
そう呟くとシュリはそっと目を開けた。
後は二人ともよく眠るといい。目覚めたら二人は回復しているから。
「おーい、サラ。何か食べる物を二人に作ってやってくれないか?
僕は二人をベッドに運んでいくよ。」
シュリがそう呼ぶと、身長が140センチあるかないかの童顔の少女が2階からパタパタと降りてきた。
現代でいう10歳くらいの容貌であろうか。
「あー!ルースったらこんな綺麗なお姉さんと一緒に居るー(◎`ε´◎ )!!!
浮気よ、う・わ・き!」
サラとは、ルースを昔助けたあの狼なのだ。
彼女は「狼女」。
あの時サラには親もなく、家もない捨て子であった。
あの晩、満月に照らされた彼女はたまたま狼になっており、彷徨っていた。
そこでルースを発見、ルースに一目惚れ(しかも初恋!)してしまい、何となく彼の後をつけ、
何となーく「お気に入りの人」がやられている様にみえたので助けたのだ(。・ε・。)![]()
ジャガーが結界をはっていたにもかかわらず、サラが戦いに乱入できたのは、
結界が張られたとき、既に結界の範囲内にサラもいたためである。
まぁ、なんとも子供らしいというか・・・何というか( ̄ー ̄;)
実際、ジャガー側からすれば「とんでもない」話だが・・・・・;結果オーライというわけで・・・。
「お前、いつそんな言葉覚えたんだよ~(・・;)
この女の人は朱音。仲間だし、ルースとは何でもないから安心しなさい。」
シュリはこのオテンバでおマセなサラにため息をついた。
娘のように感じている部分もあるので、ちょっと切なくもなりながら・・・(笑)
「そう?ならいいもん(^∇^)♪」
サラは名前にふさわしい、長く美しいさらさらのかみを耳にかけると、
パタパタと調理場へ走っていった。
(これから、父の宮殿に攻撃を仕掛ける準備をしていかなければならない。
父は朱音の力を既に見抜いていたのだな・・・。危険な戦いになりそうだ。。
できるだけ、いや、誰も命に関わるようなことがないようにしたい・・・。)
ベッドに眠る二人を見つめ、調理場でサラが立てる音を聞きながら、シュリはそう思った。
(朱音の体には、特殊な血が流れている。
彼女が利用されたら、世界を転落させてしまうだろう。
なにせ、あの子の父親は、現世と死界の狭間に、もうひとつの世界を築いた
張本人だからだ・・・!)
小説NO.14 ~帰宅~
「悪いが、今は時間がねぇんだ。」
ルースは冷静にそう言った。しかし、実際気になることもあった。
どうして・・・王は朱音をを狙うのか?
シュリからは、「朱音はここにいるべきじゃないんだ、帰ったら説明する。」
としか伝えられていなかったルースには、今の時点では理解できない部分が多かったのだ(・・。)ゞ
なので色々知りたいこともあったが、
(シュリ様に聞けばいずれ分かることだ。)
それがルースの判断だった。
信頼性。王と違い、シュリにはそれがあった。
「き、貴様、逃げる気か!」
ジャガーの怒鳴り声とルースがひとつ呪文を唱えたのはほぼ同時であっただろう。
「始・現・蜃・気・楼!!!」
(蜃気楼よ、現れたまえ。我々を包み救いたまえ・・・)
「な・・・?!」
途端にジャガーの目の前からは、ルースも朱音の姿も消えうせた。
結界ごと自分たちの姿を相手から眩ます、触れられなくする・・・。
ルースが使ったのは、こうした意味合いの、
「護衛の魔術」であった。
「ちくしょ、また逃げられたか・・・もう次はそうはいかねぇぜ・・・!」
そう呟くと、ジャガーは煙のように姿を消した。
彼の絶対なる者、王に報告するために・・・。
ルースは半球型の建物の前にいた。
決して大きくなく、扉も窓も見当たらない。
しかし非常に丈夫そうで、真珠色をした・・・不思議な容貌の建物。
そう、これがシュリの「城」なのだ。
固く滑らかな壁にルースは手をあてた。
すると、彼の肩に担がれた朱音と彼は、スッとその真珠のような城の中へ吸い込まれていった。
「よく連れてきてきてくれたね、ありがとう。」
カチャっという義足独自の音がし、真っ白なマントを着た男が振り返った。
顔の半分は金属だが、微笑んでいるのが分かる。
「シュリ様!只今帰りましたぜぃ・・・ヽ(;´Д`)ノ」
ルースは急ぎつつもそっと朱音をシュリの前に降ろすと、
片道3日飛び続けた疲れと、緊張のほぐれからか、ガクッと膝をついた・・・。
小説NO.13 ~ルースの過去~ 後編
「戦いに来たんじゃないんだ。別れを告げにきた・・・」
ルースは首に突きつけられた刃に気に留めることなく、正直に言った。
「ルース、別れだと?
殺せと王に命じられている者の命を助けた上に、ひょっこり現れやがって、しかも生きて帰る気か!」
ジャガーは剣にやや力をこめた。
しかし、ルースは続ける。
「ジャガー、お前、王の何を尊敬できる?王は俺らを道具にしか思っていない。
すべての世界を操って、人の命を弄ぼうとしている。わからないのか?」
「王は絶対だ。そんな言葉は、聞かないし赤の他人の命なんぞ、興味はない!
お前なんかにユイナを任せたのが間違いだった・・・」
ジャガーの眼は燃えているように真っ赤に充血している。
( 信じられない・・・これが俺の親友なのか?
俺は、俺は・・・これまでジャガーと同じような思想に染まっていたのか?!
ここにいる者みな、そうなのか?!)
「ジャガー・・・もう一度聞かせてくれ。王の考えはお前にとって・・・
本当に、こころから正しいと思っているんだな?」
ルースの声が悲しみでかすれてしまう。
「くどい!当たり前だ!」
ジャガーは怒鳴った。
「・・・わかった。これ以降、お前には何も言わない。ただ、ユイナにはちゃんと別れを・・・」
「ユイナの腹には俺の子がいる。
もうわかっただろ?ユイナは俺のものだ。」
ルースは頭が真っ白になった。
ユイナが、自分の恋人までも、もう救えなかったのかという思いが込み上げた。
気づけばルースは2本の剣でジャガーの剣を払い、ジャガーに切りかかっていた。
一瞬ひるんだジャガーは後ろに飛んだが、ルースの剣は彼をかすめた。
「やっとわかったか!お前は敵だ!」
ジャガーは自分の口元についた深い傷から流れる血を袖でぬぐい、歪んだ笑みを浮かべた。
熱くぶつかる二人。
誰も止められなかっただろう、お互いここで命を落としていたかもしれない。
そこに、ひとりの、いや、一匹の狼が現れなければ。
アオォォーン・・・・
そう響く声とともにその狼は月明かりに照らされた牙で、ジャガーの剣に噛み付き、
彼の腹を後足で蹴り飛ばした。
「ぐはっ・・・」
結界を張っていたため、第三者の介入はないと安心していたのだろう、
ジャガーの剣は噛み砕かれ、ジャガーは倒れこんだ。
(((゜д゜;)))・・・。
ルースは我に返ったと同時に、自分ではなくジャガーに突っかかった狼と、何よりその強さに
圧倒された。
その時だ。ジャガーの張った結界が崩れたのであろう。
「侵入者だ!」
という声が響き、同時にユイナは眠い眼をこすってルースを見、ジャガーの倒れた姿も目にした。
ルースはユイナに駆け寄ろうとしたが、思わず足がすくんだ。
ユイナの腹は膨らんでおり、子供がいるというのがすぐに分かった。
そしてまずユイナがとった行動が、ルースに何をするでもなく、ジャガーを抱き寄せることだったからだ。
「ユイナ・・・」
やっと声になったとにはユイナはルースに短剣を向けていた。
「行って!逃げて!もう私はあなたとは何の縁もない。敵としか見ていない。
でも・・・私にはあなたを殺せない。悔しいけど、敵だけど想いはなくならないのよ!
私をそう思っていても構わない。でも、私とあなたは敵同士なの。」
ユイナは泣いていた。けれど、ルースはそれに従うことしかできないと感じた。
倒れたまま、ジャガーが声を漏らした。
「いつか・・・俺の・・・手で・・・お前を殺す・・・
ユイナは俺が幸せに・・・する・・・。誰にも・・・わた・・・さねぇ・・・・。くそぅ・・・」
塔の兵士が集団でドドドっと駆けてくる音が近づいてくる。
「さようなら。仲間だった頃の、お前たち・・・。」
ルースはシュリの元へ帰ろうと窓に向かった。
しかし・・・
・・・・・Σ(・ω・;|||!!!
くぅん![]()
さっきの狼が甘えた声でルースの足にスリスリしている。
「何モンなのか分かんねぇけど・・・連れてくかA=´、`=)ゞ」
そういうとルースは背中に狼を乗っけて飛び立った。
シュリが後から驚いたのは、言うまでもない。。。・・・が、この話はまた近いうちにするとしよう。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
「結局な、ユイナは見られてたのさ。あんたを逃がすところを。
で、集団で集まってきた兵士たちに即効ころされたぜ。腹の子も一緒に、な。」
ジャガーはそう言うと、口を覆っている赤い布を下げた。
深く・・・深く、そのときルースがつけた傷跡が残っていた。
「そうだったのか・・・。」
ルースは昔を思い出し、ユイナの死の事情まで聞いて、ショックを隠しきれなかったが、
今やらなければならないことはわかっていた。
今は朱音をシュリの元へ無事に連れて行かねばならない。
そして王の野望から世界の魂を救わなければならないのだ。
小説NO.12 ~ルースの過去~ 中編
「人生、つらいことは山ほどある。
俺たちは強くなる。魂の大切さを信じて・・・ただ行こう。」
シュリの言葉に、ルースは笑顔で答えた。
そして言った。
「俺、もう決めたっす。もう、悔いない。進むさ(´▽`)もう、過った方向へ人々の魂を行かせないためにさ!」
ルースが落とした涙は、シュリの剣の鞘に触れた。
その瞬間、ばあちゃんは聞いたことのない呪文を唱えた。
「集・仲・斬・悪・炎・火・支・配・解・界!!!!」
(~仲間よ集まりたまえ、悪のみを斬りたまえ、炎よ宿れ!支配されよ!世界よ開きたまえ!~)
炎が剣とシュリを包み込んだ。
あわてるルース。
「ば、ば、ばーちゃん、殺す気かよ!水、み・・・ず・・・(°Д°;≡°Д°;)」
「黙ってみておれ。竜の涙には特別な力があるのじゃよ。
これで彼の剣の、魂が目覚めた。火の鳥。これが彼の剣の名じゃ。
使いこなせるようになるまで、がんばってもらわねばならんだろう・・・が、
シュリにはできる。これだけ生きてりゃアホみたいにわかる。
よいか、お主は竜人。それと同じように、2つの魂をひとりで持っている者がまだ数名おる。
見つけ、気づかせておやり。
そいつらならば、お主と同じく、救う・・・義務・・・が、こなせる・・・から・・・・・のぅ。」
そういうと、ばあちゃんはスッと灰になった。砂のようにさらさらとしていた。
残された生命力をシュリとルースに注ぎ、やっと死界へと旅立てた証の灰・・・。
「ばあちゃん・・・ありがとうございます・・・!」
炎の収まったシュリとルースは、あえて悲しい言葉は発さなかった。
お辞儀をし、その灰を天空に向かって撒いた。
-また、いつか、会えるさ。
2人には、そんな声が聞こえた気がした。
先に進まねば。
ルースは竜になると、シュリを乗せてユイナとジャガーのいる方へ飛び立った。
「ねぇ、ルース?」
「何でしょう、シュリ様(・∀・)?」
「今回僕は護衛以外手を出さない。君の手で、別れをつげてくるんだ、後悔しないために。」
「もちろんっす。」
こんな会話を交わしながら・・・
約1日飛んだだろうか?
深夜、満月の日であった。
ユイナとジャガー、そして昔ルースもいた塔の部屋に着くことができた。
王の手下はこの塔に住んでいる。細く、先が見えないほど高い塔。
王自身はここにはおらず、部下の中でもNO.1~NO.5とされるものは、王のいる城に住み、万一に備える
というシステムになっている。
人に戻ったルースは、窓からそっと侵入することにした。
「シュリ様は、塔に入るには危険すぎる゛(`ヘ´#)」というルースの判断で、シュリは塔の傍の木に待機m(u_u)m
ジャガーの姿を探していたそのとき、
ルースの首に刃物が突きつけられた・・・。
「深夜に何の用だ?この、裏切り者。」
ジャガーはルースの気配に目覚め、身を潜めていたのだ。
ジャガーがユイナに催眠をかけ、そして誰にも分からないよういつの間にか部屋に結界を張っていたのは
ひとりの男として戦う覚悟を決めてのことだったのだろう。
結界はこの塔に住む戦士レベルであれば誰にだってできる、というわけではない。
ジャガーも今日という日のために、稽古を積んでいたのだ・・・
~ルースの過去~ 後編へつづく・・・
小説NO.11 ~ルースの過去~ 前編
ルースの前には、ひとりの長身の男が立っていた。
口を赤い布で覆い、あとは黒ずくめのマントスタイル。
「ジャガー・・・」
ルースは少し目を伏せた。
「おう、ルース。貴様はぶっ殺してやりたいとこなんだが、今は王がその娘を必要としているんだ。
だから喧嘩はしてらんねぇ。
貴様はそのあと殺しにくる。」
殺意に満ちた男の目には涙が滲んでいた。そして、続けた。
「俺はわすれねぇ。ユイナがどれだけお前を愛していたか。
そのユイナを・・・ついでに幼馴染の俺も捨てて、王を裏切ったことを!
ユイナは貴様が殺したようなものだ!
情のないこの世界で俺たちは唯一信じあえていると信じてたのにな。」
「ユイナが・・・死んだ?!馬鹿な!
あの戦いのとき・・・俺と別れ際にお前言ったじゃないか、
『ユイナは渡さない。幸せにする』と!!」
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
ルースはかつて王の元にいた。もちろん、その頃はシュリも。
しかし33年前、
「現世と死界との境界であるこの世界の王族が人の生死をコントロールさせる」
という王の意見に反発したシュリは殺される対象となったのだ。
シュリは殺し合いなどしたくはなかった。
それを伝えても、父である王は聞く耳持たずだったのだ。
自分が必要な者は生かし、気にくわなければ死界へ・・・、という考えをすべての部下に伝え、
反発するシュリを皆でこぞって殺すよう命じたのだ。
そう、自分の実の息子を・・・。
ルースもジャガーもユイナも、もちろん王の手下であり、王の命令は絶対だった。
王の言葉に「疑問」など抱いてはいけないのだ。
むしろ「抱かない」。
この世界の人間は、すべてマインドコントロールされているから。
マインドコントロールにシュリがかからなかったのは、唯一王の血を持った者だったからだろう。
それを知った王は、それ以降子をもたなくなった。王の兄弟はそれを理由に既に殺されていた。
ルースとジャガー、そしてユイナ。
この3人は同時期にこの世界で生を受けた幼馴染。
物心つくころ、ユイナとルースは恋仲になっていた。
ジャガーはそれに気がついていたし、実際ユイナが好きだったが、幸せそうなユイナが見ていられるだけで
それでよかったのだ。
そしてその3人も「シュリ殺し」の命を受け、動きにでた。
最初に動いたのはルース。
自分がすべて終わらせれば、あとの2人は無傷ですむと考えての行動。
しかし、彼は竜神という特殊な生き物で、竜と人間の魂をひとつの体でコントロールしている。
それだからなのか、既に誰かに悲惨なまでの姿で殺されかけたシュリを目の前にしたとき、
気づいててしまったのだ。
王の残酷さに。
シュリをこんなにした相手は分からないままだが、気づいたらルースは竜になり、
廃墟のなかで身を潜めて暮らしている治療専門の魔術師のばぁちゃんを訪れ、
シュリを治してもらうことにした。
魔法でも限界があったので彼の体は義足や義眼、義肢も使われたが、
何とか命を取り留めた。
「なんてこった。この子ったらここ(廃墟)に魂が来たときも現世でバラバラにされたとかで
大変だったんだよ・・・。
やっとこさ魂が復活したから、魂にからだを与える場所、「天空」に送ったらさ、王様の息子として5体満足に生まれたって噂だったから、母親みたいな心境にあったのにのぅ。」
それから1年、身を隠しながら、シュリが治るまで、ルースは魔術師のばあちゃんから修行を受けた。
ばあちゃんは今は治療しかやっていないが、1000年前までは剣術・魔術すべてを使いこなす王族NO.1を争うような人だったのだΣ(゚д゚;)。
その頃は今の王も生まれておらず、王族は自由に引退もできた。
だから腕が落ちたのを感じた頃、ばあちゃんは廃墟の見張りもかねて、そっと引退したのだという。
1年後、ルースは強い竜神になり、シュリも自分の体を使いこなせるようにまでなった。
ばあちゃんもシュリの回復力と修行に参加する態度には驚いていたが、嬉しそうでもあった( ´ー`)。
「ルース、僕と一緒に父の野望を止めにきてくれないか?」
シュリからのお願いに、頷きつつも、こういった。
「勿論です。だけど、どうしても俺は、お別れを言わなきゃいけねぇ相手が2人いるんです。」
「わかった。こうして僕を助けた今、君は父の敵だ。狙われる。一緒に行こう。」
「すまねぇ、シュリ様・・・」
ルースはユイナとジャガーを思うと涙が止まらなかった。
~ルースの過去~ つづく・・・
