■Fire TVとは何か
そもそもFire TV(Fire TV Stick HD、Fire TV Stick 4K、4K Maxを含む。以下同文)は,何に使うものか?
テレビのHDMI入力端子に接続し,Amazonプライムビデオ,Netflix,Hulu、TVerといった動画配信サービスのそれぞれ専用のアプリを用い,テレビの大画面で視聴するのが典型的な使い方である。
また,専用アプリが用意されていない場合でも,Silk Browserというウェブブラウザアプリを利用して,動画配信サービスをテレビの大画面で再生できる。Silk Browserで再生できるかどうかは配信形式による。少なくとも,学研プライムゼミ、スタディサプリの映像再生可能を確認している(東進,四谷大塚は再生できない)。
さらには、AirReceiverアプリの導入により,AirPlayミラーリングにも対応する。パソコンやiPhone/iPadの画面をテレビの大画面に映せる。
当ブログのマニアックな読者のために,強力な裏ワザを3つ紹介する。
多少の設定は必要だが,これまで動画配信サービスのダウンロード・録画(限定記事「ネット授業の保存法Ⅰ総論」「ネット授業の保存法Ⅱ各論〜サービス別保存方法」、公開記事「英語CC字幕付き英語吹替え版日本アニメの大量入手方法」参照),TV番組のTS抜き録画、BD/DVDのリッピング(2012年10月以降は違法[罰則なし]だが)などによってネットワークHDDにコレクションした動画をテレビの大画面で視聴できる。
ファイル形式は、少なくともH.264/AVC(MP4)形式ならFire TVでFTPストリーミング再生できる。H.265/HEVC(MP4)形式は第3世代のFire TVでは再生できるが、Fire TVの第2世代では再生できない(技術仕様のフォーマットに「H.265」とあっても)。MPEG2、WMV9、WMV8、AVCHDなど、動画再生ソフト(nPlayer)の対応しているたいていの形式は再生できる。ただし、DVD ISOイメージは、一応再生できるが画質が悪い。
音声付き早見再生を利用すれば、簡単な授業,話し方がゆっくりな授業,一度視聴した授業の復習時などで時間の節約になる。
視聴の手順は次のとおり。
【NAS側の準備】
- NASは,FTPファイル共有機能があるものにする(絶対的条件ではないが,宅外からのNAS利用を円滑にするためにもぜひともおすすめする(SMBプロトコルによる通信は,たとえばdocomo[ahamoや格安SIMのdocomo回線を含む]のモバイルデータ通信では遮断される。クライアント側のルーターでデフォルトで制限がかけられている場合もよくある)。以下はFTPファイル共有機能の使用を前提に解説する)。QNAPやSynologyといった本格的なNASならば,すべてFTPファイル共有機能がある。しかし,国産の個人向けNASでは仕様をよく確認する必要がある。すなわち,IO DATAのPC向け1ドライブモデルだと,現行品ではHDL-AAシリーズだけにFTPファイル共有機能がある[パッケージによる機能追加で対応]。Buffaloだと,テレビ録画用のLS411DXシリーズ以外にはFTPファイル共有機能がある。
- NASで,FTPファイル共有のための共有フォルダを作成し、そのフォルダへのアクセス権のあるアカウント(ユーザー名、パスワード)を作成する。
【nPlayerの購入&インストール】
nPlayerは、Fire TVのAmazonアプリストアからは直接購入&インストールできない。特別な手順が必要である。
→公開記事「Fire TVにnPlayerをインストールする方法」参照。
【サーバ設定】
- Fire TVでnPlayerを起動し、「ネットワーク」タブ→右上の「+」をクリックする。
- 「新規サーバ」画面で「FTP」をクリックする。
- 「FTP」画面で、「タイトル」にサーバーのわかりやすい名前(たとえば「動画倉庫」)、「ホスト」にNASのローカルIPアドレス(「192.168.XXX.XXX」のような。ただし、※参照)、「ユーザ」には、NASで共有フォルダへのアクセス権を設定したユーザ名、「パスワード」にはそのパスワードを入力し、「セーブ」ボタンをクリックする。
※この「ホスト」に自宅のグローバルアドレスを設定すれば、出先のFire TVから自宅のNASに接続できるようになる。ただし,その場合は,(1)DDNS(ダイナミックDNSサービス。たとえば、MyDNS.JPやDDNS Nowなら無料)を利用するなどして自宅のグローバルアドレスを特定すること(頻繁な変更が生じない環境なら、DDNSを使わずとも確認くんの「あなたのIPアドレス」の値でも実用になる),(2)自宅のルーターでNASのFTPポート(通常21番)を外部にポート開放しておくこと,が条件となる(ただし,IPv6とIPv4の共存技術がDS-Liteの場合はポート開放不可。プロバイダ変更するほかない(auひかり,enひかりv6プラス固定IP,ソフトバンク光がポート開放しやすく,おすすめである)。外部記事「【丁寧に解説】v6プラス環境でのポート開放のやりかた」参照)。上級者向けである。
【視聴】
- Fire TVのnPlayerの「ネットワーク」タブから、NASの共有フォルダをブラウズし,再生したいファイルを選択して開く。
USBメモリやUSB外付けHDD(※)等のUSBストレージデバイス内の動画をFire TVで視聴したい場合は,OTGケーブルを使用するのが簡潔である。私が使用し、正常動作を確認したOTGケーブルはこちらである。
※USBバスパワーのみで動作するタイプは電力供給不足で認識しない場合がある。Buffalo製2TBポータブルHDDで報告がある。
また、以下のものも正常動作した。こちらは上の製品のように中継するのではなく、Fire TV付属USBケーブルと置き換えて使用するタイプである。
手順は以下のとおり。
【準備】
- USBストレージデバイスをFAT32形式でフォーマットする。ただし,フォーマットしたら中身は消去される。すでに動画ファイル等が入っている場合、別の場所に中身をバックアップして、フォーマット後に戻すこと。
※1 未フォーマットのUSBストレージデバイスをFire TVが認識すると,フォーマットを促す画面が現れる場合がある(常に出るわけではない。出なかったら次注以降のとおり,パソコンでフォーマットするほかない)。そこから「外部ストレージ」を選択すれば,FAT32形式でフォーマットされる。ここでは決して「デバイスストレージ」を選択してはいけない。Fire TV以外で認識できない形式となり,動画ファイルをFire TV外部とやりとりする今回の目的には適さない。
※2 Windows 10や11の標準のツールでは,FAT32形式でのフォーマットができない(NTFS形式とexFAT形式でのフォーマットが可能だが,いずれもFire TVでは認識できない)。FAT32形式でのフォーマットには,(1)AOMEI Partition Assistant Standard(無料),(2)I-O DATA ハードディスクフォーマッタ(無料),(3)MiniTool Partition Wizard 無料版のいずれかを利用するとよい。
※3 Macは標準のディスクユーティリティでFAT32形式でのフォーマットが可能である。
※4 2TBを超える容量のHDDは,そのままではFAT32形式でフォーマットできない。パーティーション分割して(※2の(3)なら無料で可能)1パーティーションの容量を2TB以下にすれば,FAT32形式でフォーマットでき,Fire TVからも利用できる。
※5 USBストレージデバイス付属のソフトでFAT32形式でフォーマットしても,Fire TVに認識されない場合がある(Buffalo製ストレージデバイスで報告あり)。その場合でも※2の(1)AOMEI Partition Assistant Standard(無料)でフォーマットしたら認識されたとの報告が複数ある。
※6 利用するうちに,USBストレージデバイスの認識不良,動画ファイルの認識不良などの不具合が発生したら,USBストレージデバイスの再フォーマットで改善する可能性がある。 - Fire TV本体、OTGケーブル、USBストレージデバイス、Fire TV付属USBケーブルを下図のように接続したうえ、TVにHDMI出力を、コンセントに電源アダプタを接続する(置き換えるタイプのケーブルの場合はFire TV付属USBケーブルは不要)。
- Fire TVがUSBストレージデバイスを認識できたかは,次のようにして確認できる。
↓
バージョン情報の下に「USBドライブ」という項目が現れたら,認識できている。この項目がない場合はUSBストレージデバイスを認識できていない。Fire TV本体の再起動でも認識しないなら,FAT32形式でフォーマットされているかを確認しよう。
- Fire TVにnPlayerアプリ(※)をインストールする。
※USBストレージデバイスからの動画視聴は,VLC for FireやMX Playerでも可能である。それらはFire TV内蔵のAmazonアプリストアからインストールできるので手間がない。
しかし,以下では,日英同時字幕視聴を可能とするためにnPlayerの使用を前提とする。
nPlayerは、Fire TVのAmazonアプリストアからは直接購入&インストールできない。特別な手順が必要である。
→ 公開記事「Fire TVにnPlayerをインストールする方法」参照。
※旧ファームウェアのFire TVでは,USBストレージデバイス内の動画を認識できる動画再生アプリがnPlayerぐらいしかなかった(それも下記の設定が必要だった)。現行最新ファームウェアでは,とくに限定なく,一般的な動画再生アプリを使用できる。nPlayerは二字幕同時表示やNASやクラウドの動画の再生に便利だが,それらの機能が不要な場合は,VLC for Fireなどを使用するのでもよい。
【視聴】
- nPlayerの「ローカル」タブをクリックする。すると,一番下にUSBストレージデバイスが表示される(デバイス名はデバイス情報から自動生成される)。それをクリックする。
※旧ファームウェアのFire TVでは(上記のメディア探索フォルダ設定をした上で)「動画」フォルダ内にUSBストレージデバイスが表示される。
- 視聴したい動画のタイトルをクリックする。
【USBドライブの取り外し】
USBドライブは,いきなり取り外してもたいがいは平気だが(Fire TVの以前のファームウェアではそうするしかなかった),安全性を重視するなら,次のようにするとよい。
- ホーム画面右側歯車からマイFire TVをクリックする。
- 「USBドライブ」をクリックする。
- 「USBドライブを取り出す」をクリックする。
- 右下に「USBストレージ取り外し完了」と表示されたら,USBドライブを物理的に取り外す。
Fire TV Stickは小型・軽量のため気軽に持ち歩きやすい。出張先や旅行先のホテルで利用できたら便利である(それでテレビばかり見て閉じこもってしまっては本末転倒だが)。ところが,ホテルの部屋に設置されたテレビでは,ホテルモードといって外部入力が機能的に無効にされている場合が少なくない。しかし,それぐらいであきらめるようでは,当ブログの読者失格である。
外部入力が一般的には無効とされていても,一方でVODサービス(「ビデオオンデマンド」の略。昔,旅行先のホテルのテレビで2chや5chにチャンネルを合わせるとえっちなビデオが流れてドキドキしたものの現代版)が提供されている場合が多い。それならば,VOD配信に使用されているHDMI入力端子は有効だから,そのHDMIケーブルを引き抜いて,代わりにFire TVを接続すればよいのである。テレビリモコンのVOD視聴用ボタンを押せば,Fire TVの画面に切り替わる。あとはFire TVのリモコンで操作し放題である。
もちろん,ここでも無線LAN環境は必要である(有線LANしか提供されていない場合は前述Amazon イーサネットアダプタまたは,ポータブル無線LANルーターを使用すればよい)。ホテルの提供している無線LANが低速だとFire TVも使えない。その場合は,スマホのテザリング,モバイルルーター(WIMAXがおすすめ),公衆無線LANのいずれかが必要となる。
Fire TVにも電源が必要だが、TVの近くでは電源をとれない場合も多い。その際は、モバイルバッテリーのUSBポートから電源を供給するのが便利である。Fire TVの消費電力はごくわずか(スマホの半分以下)なので、バッテリーのもちを心配する必要はほとんどない。
以下の機種はLEDランプも内蔵なのでテレビ裏の配線確認にまで重宝する。
ホテル退出時には、必ず配線を元に戻しておくこと。
現在は多くのホテルにVOD配信があるおかげで,この裏技がほとんど通用するが,HDMI端子側が壁に近いせいで,直接目視できずに手探りになる場合はしばしばある。そうなると慣れが必要になる。
少なくともアパホテルではほぼ通用する(アパ川柳に「アパホテル Fire TV 大画面」と応募しようか一瞬考えたが,愚直に許可を求めたら断られるに決まっている非公式裏技なので採用されるわけがない)。アパホテルの場合,Wi-FiのIDとパスワードがVOD画面で表示されるので,Fire TVを配線する前にVOD画面をスクショしておくと作業が円滑になる。
なお,「有線ミラーリング(HDMI)」対応の一部のアパホテル(新しめに多い。対応有無は,各アパホテルの「客室設備」などの案内で確認できる)では,このような裏技なしに,枕元集中コントローラーのHDMI端子とUSB電源から正規にFire TVを使用できる。
▼有線ミラーリング対応の枕元集中コントローラー
更新履歴
2018年7月17日
- 初公開
2019年4月22日
- 「Fire TVからNAS(ネットワークHDD)の動画を見る方法」をVLC for Fire+ES File Explorerではなく、nPlayerを使用する方法に変更。
- これにより、外部字幕ファイルの使用、日英同時字幕が可能となった。
- 電源をとるのが困難な場合にモバイルバッテリーを使用する選択肢を追加した。
2019年5月18日
- USBストレージデバイス内の動画を視聴する方法を、無線LANアダプタを使用する方式から、OTGケーブルを使用する方式に変更。
- 「Amazon Prime Video(米国)をFire TVで視聴する方法」を追加。
2020年6月19日
- Fire TVにnPlayerが直接インストールできなくなったので、別のインストール方法に差し替え。
- ES File Explorer使用上の注意を記載。
2020年6月27日
- USBストレージデバイス内の動画を視聴する方法を、従来のES File Explorerから受け渡す方式(字幕ファイル非対応)から、nPlayerのみで完結する目から鱗のシンプルな方式(字幕ファイルにも対応)に変更。
2020年9月16日
- nPlayerの購入&インストール方法を別記事として独立させ(説明も改訂)、そこへリンクする形式にした。
2021年8月17日
- LEDライト付きモバイルバッテリーを紹介した。
2023年3月23日
- 最新ファームウェアにあわせて表示を更新。
- USBドライブの取り外し方を追加。
2023年10月18日
- Fire TV Stick 4K Max (第2世代)で、nPlayerの設定画面で漢字入力ができない事実を補足。→その後,ファームウェアアップデートで可能となったので削除。
2025年6月9日
- Windows PCの共有フォルダへのアクセス方法の説明を精緻化。