ホテル
口数の少なくなった彼の歩数に合わせて、二人はホテルに辿り着いた。
部屋に入るなり、彼はバスルームへと向かった。
子供の様に洋服を脱ぎ捨て、無邪気に私の名前を呼んだ。
初めて二人は裸で抱き合い、彼は包む様に私に触れた。
そのまま二人はベッドまでキスを続け、
私は最高に美味しく見えるように彼の腕に沈んでいった。
それは、覚えたての様に少しづつゆっくりと時間をかけたmake loveだった。
しかし、酔い過ぎた彼は私の口の中で果ててしまった。
「わー悪りぃ。俺だめだ。。。」
笑顔で彼が謝った。
「うん。いいよ。じゃあ、一緒に寝ようか」
また、繋がる事は出来なかったが、私は満足だった。
しばらくすると、彼は寝息えをたて始めた。
起こさない様に、そっと彼の胸元へ口を運び、小さな反抗を残した。
新宿
仕事が終わってから、私は直ぐに電車に飛び乗っていた。
携帯を見て時間を確認する。 PM18:00
監督に会えるまであと2時間。
電車はあっという間に時間を越え、新宿に私を降ろした。
改札で携帯を握る監督を見つけた。
「あ、ひさしぶり・・・」
なぜかぎこちなく声を交わした会話は、二人の関係を物語る様だった。
「とりあえず、飯食うか?」
監督は私をお勧めだという焼き鳥屋に連れて行った。
周りは歌舞伎町が広がり賑やかだか、
その焼き鳥屋は私の存在が浮く位、年配のお客が多い店だった。
そこで監督は、いつもの様に美味しそうにお酒をどんどんと飲み、
自分の夢や思いを語った。
適当に焼かれた焼き鳥と、驚く程濃いサワー、監督が目の前で笑っているおかげで
私はいつになく酔っ払っていた。
時間も程よく過ぎ、二人も程よく気持ち良くなった。
「んじゃ、行こうか。」
その言葉を合図に彼は私の手を引いて店をでた。
今まで監督と手を繋いで歩いた事は無かったが、
今日、彼は自然と私の手を引き、冬の風から守る様に私のジャケットのファスナーを閉めた。
私は、監督の半歩後ろから彼の横顔を眺めながら歩いた。
光の眩い歌舞伎町を通り抜け、細い路地に入った。
留守電
私は友人にも、もちろん彼氏にも何も言わず、彼との時間を楽しんでいた。
その後も何度か二人でお酒を飲んでは抱き合った。
抱き合うだけでSEXはしない監督に焦らされながら、はまっていった。
何ヶ月か過ぎ、彼が引越しをすることを伝えてきた。
もう逢えない予感のした私は自ら彼を誘っていた。
滅多に自分からしない電話を彼にかけ、留守電に声を残した。
そしてしばらくすると、あのなつっこい声が私の携帯に刻まれていた。
「あの~、小島ですけど。えっと、その日は物件見に新宿に行くので、
えっと、その日新宿で夜なら遊べるんで、連絡ください。」
私はすぐ彼にcall backした。
「新宿行くけど、足無いから始発まで遊んでくれる?」
「あ、うん。
それか、その日もともと友達の家に泊めてもらおうと思ったから一緒に来ればいいよ。」
どうしても最後になるなら監督に抱かれたいと思った私は
「う…ん。でも二人がいいし、友達にも悪いから…どこかに泊まろうよ。」
「・・・・・・。俺はいいけど・・・。金無いよっっ。」
こういう時でも私を緊張の 糸から解いてくれる彼は、私をどう見ているのだろう。
朝日
監督からの誘いメールが来るまでにそう時間はかからなかった。
「飲みに行こうよ。でも俺、金無いから魚民ね」
監督は私の2コ上だったが、そんなセリフを笑いながら言える自然体の彼に愛着が増す。
今回は二人きりだし、私の中でそれなりの展開があると構えていたのだが、
監督はそんな私の気持ちを知ってか知らずか、あの日の様になつっこく話し続けた。
そしてまた、あの日のようにどんどん時間は過ぎていった。
「ねぇ、俺の撮った映画見ない?俺の家こっから近いし。実家だけどねぇ」
「うん。いいねぇー。観たい!観たい!!」
「じゃあ、行こう!!」
そして監督の部屋で、彼の撮った映画を数本見て、映画の話や音楽の話などをしていた。
「ねぇ、○○ちゃん」
初めて監督が私の名前を呼んだ。
「なになに??初めて名前でよんだね~」
「俺さ、チューしたいんだよね」
「どうしたの?急に?すればいいじゃん。彼女とさー」
「いや、○○ちゃんとキスしたいんだよねぇ」
今まで突然のキスには慣れてはいたが、宣戦布告してきたのは初めてだった。
私は柄にも無く、ドキドキしてしまい思ってもいない言葉がこぼれた。
「いや~、私彼氏いるしさぁ~」
「だから?だめ?」
「いや、駄目じゃないよ。全然」
その言葉に重なる様に、監督の唇と重みが私にもたれた。
当然の様に二人はキスをし、私の腕は何の迷いも無く彼の首に巻きついていた。
彼の狭い部屋に冬の朝日が差込み、ただ抱き合い続ける二人を熱くした。
お酒
2、3時間後、仕事を終えた彼が
店のカウンターに座り、まかないをもらっていた。
少し酔っていた私は
「お仕事終わりですか? 良かったらコレ飲みません?もう酔っ払っちゃって。。。」
自分の頼んだばかりのグラスを差し出しつつ、彼に話かけた。
「あ、いいんすか?すいません。」
髭で隠れてはいるが、少し鼻の下が長い彼の笑顔に愛着を感じた。
彼もお酒を口に運び、気分が良くなったのか沢山私達に話しかけてくる。
彼はおもむろに自分のリュックから分厚い紙の束を私達に差し出した。
「これ読んでくれません?俺、監督目指しててコレは俺が書いた脚本なんで。」
その束を受けとりつつ、彼のバイト着にぶら下がる
「監督」と書かれた名札の意味が理解できた。
「なるほどねぇ~。だから監督って呼ばれてるんだ??」
「そうそう。」
お酒の力が功をそうしたのか、私達の会話が終わる事は無かった。
気が付くと、時計は5時を回ろうとしていた。
監督に抱かれたいと思いながらも、今日だけの関係には仲良くなり過ぎた。
それに、友達を家まで送らなくてはいけない事もあって、今日は素直に帰ることにした。
「じゃあ、そろそろ私達帰るわ」
「あ、まじ?じゃあ、携帯教えといて。俺の映画を上映する時、誘うから!!」
「うん。 じゃあ、またね」
帰りの運転中にさっそく監督からメールが届いた。
文章だけのシンプルなメール。
それがまた私を熱くさせた。
監督の子供みたいな瞳を思い出しながら、すぐに返信した。
「今日は楽しかったよ。
今度はどこか飲みにいこうね。今日のメンバーでも、二人でもいいし。」
始まり
また、三年前と同じ沈黙が流れようとしてる。
コロコロと転がり続ける。
三年前、「カッコいい店員がいるよ★」と
女友達に連れて行かれた居酒屋。
そこには確かに私好みの髭・髪・肉体の持ち主がいた。
私は、初対面の男性と会った時、見たとき、
無意識に男性を2通りのグループに分ける。
一つは、sexをしたくないグループ
もう一つは、sexをしたいグループ
その分け方は直感的なモノで、必ずしもタイプの男性ばかりが後者になるわけではない。
そして、間違いなく彼は後者であった。
「この彼に抱かれてみたいなぁぁ~」とお酒を飲みながら、友達と話をしながら彼を視ていた。
