朝日
監督からの誘いメールが来るまでにそう時間はかからなかった。
「飲みに行こうよ。でも俺、金無いから魚民ね」
監督は私の2コ上だったが、そんなセリフを笑いながら言える自然体の彼に愛着が増す。
今回は二人きりだし、私の中でそれなりの展開があると構えていたのだが、
監督はそんな私の気持ちを知ってか知らずか、あの日の様になつっこく話し続けた。
そしてまた、あの日のようにどんどん時間は過ぎていった。
「ねぇ、俺の撮った映画見ない?俺の家こっから近いし。実家だけどねぇ」
「うん。いいねぇー。観たい!観たい!!」
「じゃあ、行こう!!」
そして監督の部屋で、彼の撮った映画を数本見て、映画の話や音楽の話などをしていた。
「ねぇ、○○ちゃん」
初めて監督が私の名前を呼んだ。
「なになに??初めて名前でよんだね~」
「俺さ、チューしたいんだよね」
「どうしたの?急に?すればいいじゃん。彼女とさー」
「いや、○○ちゃんとキスしたいんだよねぇ」
今まで突然のキスには慣れてはいたが、宣戦布告してきたのは初めてだった。
私は柄にも無く、ドキドキしてしまい思ってもいない言葉がこぼれた。
「いや~、私彼氏いるしさぁ~」
「だから?だめ?」
「いや、駄目じゃないよ。全然」
その言葉に重なる様に、監督の唇と重みが私にもたれた。
当然の様に二人はキスをし、私の腕は何の迷いも無く彼の首に巻きついていた。
彼の狭い部屋に冬の朝日が差込み、ただ抱き合い続ける二人を熱くした。