漢方薬は“無駄”なのか? | 銀幕と緑のピッチとインクの匂い

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映画は洋画、それも古い映画が大好き。本は外国文学。ドラマは洋物。サッカーは海外チームと代表の応援、という思いっきり偏った嗜好で、天の邪鬼に感想を語ります。但し、脱線話題多し。

 事業仕分けのニュースは気にして目にしていたのですが、テレビや新聞にも今までこのような重大な問題が何故取り上げられてこなかったのか、理解に苦しみます。


医療用漢方薬が保険適用外 価格が3倍以上治療に支障?


 事業仕分けにより、漢方薬、湿布薬などの薬が保険外適用されることになりそうだというのです。


 漢方薬といっても縁のない方には、ピンとこないかもしれません。西洋医学が主流になっている今の医療ですが、漢方薬の市場はそれでもかなりのもので、漢方薬の助けで何とか生活を保っておられる方も沢山います。症状によりますが、比較的副作用が少なく、身体への負担が少なかったり、いくつもの症状に効くなど、そのメリットはかなりのものです。


 私も今漢方薬のお世話になっています。いえ、漢方薬にもお世話になっています。事業仕分けで問われるような、飲んだ途端に劇的な効果が表れるのか?という質問を受ければ、多くの場合はノーではないでしょうか。でも、飲み続けてきて、毎年七転八倒するもの凄い痛みに、ええ、はっきり言って死んだ方がましだ、と思わせるような痛みが、今年はまだ表れていないので、漢方薬効果なのではないかと思っていたところでした。こうした薬に保険が適用されずに、薬局で買うということになると、その価格がどれぐらいになるか想像出来ますか?漢方薬はとにかく高いのです。


 この漢方薬が良い、と聞いた頃、薬局に行って試しに購入してみたことがありました。その時、とりあえず試してみるということで3日分買って、1200円以上だったと思います。一日3回、365日飲み続ける薬を、この金額で買い続けるのは、はっきり言って無理です。大変な負担です。おまけに私の場合、他の症状でも病院にかかっており、そこでも高い薬代を払っているので、医療費がいくらになるのか想像もつきません。同じような方は沢山いらっしゃるのではないでしょうか。


 今回の件で調べてみたら、これが導入部となって、薬局で買える薬は保険外適用に、という動きが広まるかもしれない懸念も記されていました。例えば、胃腸薬や鎮痛薬、風邪薬なども該当していくことにならないとも限りません。胃腸薬も鎮痛薬も、私にはこれまたなければ生きていけないほど重要な薬です。こうしたものにまで保険外適用が広がる時が来たら?もう、まともな生活は送れません。


 確かに中には、必要もない薬を沢山集めるのが趣味と化していらっしゃるような方もいるかもしれません。でも、多くの方は好きで薬を飲んでいるわけではないでしょうし、そうした薬が必要だということはそれだけで大きくハンディを負っているわけで、その病気のために、働きたくても思うように働けない方も多いのではないでしょうか。つまり、病気は低収入につながっていく確率が大変大きいと思います。ですから今回の保険対象から外すということは、それこそ弱者を狙い撃ちにする可能性が大変大きいのです。


 無駄を省くための事業仕分け自体は否定しません。確かに、予算には山のように無駄があるようです。でも、病人にとって必需品である薬も無駄ですか?では、その薬が必要な病人も無駄な存在ですか?


 人を大事にする政治を目指していたのではないですか?苦しんでいる病人に鞭打って、困っていない家庭に子供手当を配り、高速道路を無料化することの方が必要ですか?


 本当の無駄って何ですか?8月にはたった2日しか国会議員の身分でなかったのに、歳費はまるまる一カ月分貰い、世の中が不況にあえいでいる中で、多額のボーナスを貰うことは無駄ではないのですか?140人もの民主党議員が、団体で中国旅行をすることは無駄ではないのですか?


 仕分けをしている方々は、つまりそれだけの元気があるのだから、病気のつらさがわからないのではないでしょうか。そして、保険適用を外れても、その金額をどうとも思わないぐらいの収入がある方ばかりなのではないでしょうか。これは、私のように様々な病気に苦しむ者には、絶望的なニュースです。生きていく気力が湧きません。希望もありません。今でも月に数万円近くの医療費がかかっているのに、それがさらに何倍にもなるのですか?政権交代には期待する面もありました。でも、弱者のためと言いながら、全然弱者の気持ちがわかっていません。政府は、国民の命や健康を無駄だと決めつけていることになります。どうか、今からでも考え直してください。マスコミもこうした事実を、しっかり取り上げて世間に知らしめてください。科学もスパコンも学力テストも大事だと思っていたけれど、その比ではありません。


「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」

                       日本国憲法