



みなさん、クリスマスの夜をいかがお過ごしですか?
今日は、東北の方たちへ心を込めて、
クリスマスプレゼントをお贈りしたいと思います
本当は昨日私のブログで掲載した物語なのですが、
http://ameblo.jp/attamarin/entry-11115847564.html
たんぽぽからの贈り物とさせていただくことになりました

少しでも東北の方たちや、読んでくださったみなさんの心があったかくなればうれしいです。
では、どうそ読んでくださいね

「あったかい雪が降ってきた」
「悔しいのう~。 なんでや、なんで何もできんのんや」
広島の中心部にある平和公園。
原爆ドームの前で、一人の少年がすわりこんで頭を抱えていた。
お腹がデップリと出て白ひげを生やしたおじさんが、その少年に近づいてきた
「ぼく どうしたの?何が悔しいの?
何ができないのか、おじさんに聞かせてくれないかなぁ」
「だって今日はクリスマスイブじゃろ。 じゃけど岩手にいるぼくの従兄弟は、
家族バラバラでクリスマスを過ごさんといけんのんよ。
なんで一年に一度のクリスマスを、みんなで楽しく過ごせんの?
あんなにつらいことがあったのに、なんでみんなみたいに楽しめんの?」
白ひげのおじさんは少し顔を曇らせた。
「ぼく、その従兄弟は震災にあったの?」
「そうだよ。従兄弟のみっちゃんの家は震災で壊れたんだよ。
そしておじさんは仕事もなくなったから、今広島に働きに来とるんじゃ。
じゃけん、みっちゃんはクリスマスでもお父さんと一緒に過ごせんのんよ。
ねぇ、おじさん。みっちゃんがかわいそうだと思わん?」
「そうだね、ぼく……」
少年は少しむっとして話をさえぎった。
「おじさん、ぼくの名前は陽(よう)って言うんだよ」
「おお、そうか。すまなかったね。それで陽くんはどうしてあげたいの?」
少年は、ますますむっとした。
「おじさん、ぼくの言うこと聞いとった?
何もすることができんけん、悔しいって言いよるんじゃないかぁ」
白ひげのおじさんは、腰をかがめて少年をまっすぐに見つめた。
「それじゃあ、陽くん。
今日は陽くんのところにサンタさんからプレゼントが届くだろう。
もう何がいいかお願いしたのかな?」
「うん、ぼく本を読むのが好きじゃけん、
本をいっぱ~いほしいってお願いしたんじゃ」
「陽くん、おじさんのアイディア聞いてほしいんだけど……
そのお願いは来年にお預けして、
今年は“みっちゃんがうれしくなること”をお願いしたらどうかな?」
「え~……」
少年は頭を抱えて、しばらく考え込んだ。
そして一時間は経っただろうか、夕方近くになり
辺りの空気がますます冷たくなってきた。
「おじさん、いいよ。
ぼくのプレゼント“みっちゃんがうれしくなること”でいいよ。
だってぼくはいつもとお父さんとお母さんと一緒にいられるけど、
みっちゃんはお父さんとずっと離れ離れじゃもんね。
絶対寂しいよね……」
少年の返事をじっと待っていた白ひげのおじさんは、ニッコリ笑って言った。
「陽くんは本当に優しいねぇ。
とっても素敵な陽くんのお願いをサンタさんは必ず聞いてくれるから、
今晩楽しみにしててごらん」
少年は頬を赤く染め、すっくと立ち上がった。
「ほんと?おじさん。サンタさんがぼくのお願い聞いてくれるん?
わぁ、なんかぼく、とってもうれしくなってきた。
だってぼく、みっちゃんに何にもしてあげれんと思っとったけど、
ぼくにもしてあげられることができたんじゃもん。
おじさんありがとう。サンタさんに、本当にお願いかなえてねって
しっかり頼んどってよぉ」
白ひげのおじさんはこぶしで胸を叩いて、慣れない広島弁で言った。
「おじさんにまかせときんさいや」
そのとき遠くのほうから、少年の母親の呼ぶ声がした。
「ほいじゃあね、おじさん。ほんまに頼んだけぇねぇ」
そう言って少年は母親のほうに走って行った。
~そしてクリスマスイブを迎えました~
少年は“みっちゃんがうれしくなること”が何なのか、ワクワクしながら
考えたり、本当にサンタさんが願いを聞いてくれるのか心配になったりして、
頭の中がめまぐるしく動いていた。
そして考え疲れたのか、いつもより早い時間に眠りについた。
コンコン、コンコン……
少年が寝ている部屋の窓から音がした。
少年はいつもするはずのない音がしたので、びっくりして目を覚ました。
そして恐る恐る窓のほうに近づくと、赤い色が窓に映っていた。
その色で、少年は何が起きたかすぐに察して窓を開けた。
「メリークリスマス!陽くん」
「わぁ、サンタさんじゃあ。え~、これ夢かのう?」
「夢なんかじゃないぞ。わしは陽くんの願いをかなえにきたんだよ」
「そうそう。ねぇ、サンタさん“みっちゃんがうれしくなること”って何なん?
ぼくずぅーっと気になってしかたがないんじゃけん」
「よしよし、わかった。それじゃあ、これから教えてあげようねぇ。
あのね、わしは今から東北に雪を降らそうと思っとるんじゃよ」
その言葉を聞いて少年の顔が曇った。
「いくらサンタさんでもそれはひどすぎるよ。
雪なんて降ったって何もめずらしくないし、それに雪が降ったら
みんなまたあの日のことを思い出しちゃうじゃないかぁ」
「陽くん、雪だってあの日降りたくて降ったわけじゃないと思うよ。
本当は雪だって泣きながら降ってたかもしれないしね。
だからわしは、雪にも笑顔になってもらいたいんだ」
「ふ~ん、そう言われたらそうじゃね。
雪だってどうしようもなかったんかぁ。
そう思ったら、なんか雪もかわいそうじゃねぇ」
それからまもなくして雪が降ってきた。
「陽くん、手のひらで落ちてくる雪を受け取ってごらん」
「え~、手が冷たくなるからいやだよ」
「じゃあ、冷たくなかったらいいんじゃろう。さあ、雪に触れてごらん」
少年はしぶしぶ窓の外に手を出し、雪に触れた。
「うわぁ、何これ。なんで雪があったかいんねぇ。
サンタさん、これほんとに雪なん?」
「そうだよ。これは人が幸せになる特別な雪だよ」
「幸せになる雪?」
「そう、みんなが幸せになるんだよ、いいだろう」
「うん、いいけど……。どうしてこの雪でみんなが幸せになるん?」
「そうじゃな、陽くんには何のことかわからないよね
この雪があたたかいのはね、陽くんやみんなの気持ちが
こもってるからなんだよ。
みんなが東北に向けて、頑張れ~って応援する気持ちや
陽くんのように“みっちゃんがうれしくなること”を願う優しい気持ちが、
この雪には込められてるんだよ。だから雪は今夜は東北に降り積もるのを、
心の底からうれしいと思っとるんじゃ。
そしてその雪の気持ちが、またさらに雪自身を温める」
「わぁ、雪もうれしくて降っとるんじゃ。なんかそれ、とってもいいねぇ」
「そうじゃろう。雪も今夜は思いっきり降ろうと思っとるようじゃなぁ。
だが、これで終わりじゃないぞ。
陽くん、降り積もった雪はやがて溶けて大地にしみ込むんじゃ」
「しみ込んだら、そのあとどうなるん?」
「温かい雪が溶けて大地にしみ込み、大地は温かい水で潤うんじゃ。
そしてその温かい水を草や木や花などが吸い込む。
そして春になり、その温かい水をいっぱいに吸い込んだ草木が芽吹き、
たくさんの花が生き生きと咲き始めるんじゃ。
その水を吸いこんだ植物はいつもの年以上に生き生きとするんじゃ。
そしてその生き生きと咲いた花や芽吹いた草木を見て
そこに住む人たちは元気が出てくるんじゃよ」
「なんで元気になるん?」
「それはね、雪の温かさに秘密があるんじゃ。
雪が温かいのはみんなの気持ちが込められてるからだと言ったじゃろう。
みんなの応援する気持ちや優しい気持ち、人を思いやる気持ちはすべて愛か
ら生まれとる。そう、すべて人を愛する気持ちから生まれとるんじゃよ。
だから、この雪の温かさは愛そのものの温かさなんじゃ」
「へぇ~、やっぱり愛ってあったかいんじゃねぇ」
「そうじゃ、愛は温かいんじゃ。
陽くん、この温かさをよく覚えておくんじゃよ。
陽くんもこの先、いろんなことを経験するじゃろう。
そしてすごく落ち込むこともあると思う。
心が冷たく感じることもあると思う。
そんなとき、陽くんが優しさや思いやりをずっと忘れてなければ
自分の心の温もりで自分の心を温めることができるんだ。
もちろん、人の心も温めることができるんだ。
愛で心を温めたらどうなると思う?
愛で心を温めたら、その心には希望が芽吹くんだ。
愛で心を温めたら、その心は生き生きと輝くんだ。
だから優しさを忘れてはいけないよ。
だから思いやりを忘れてはいけないよ。
どんなことがあっても、愛する心を忘れてはいけないよ」
「うん、ぼく絶対に忘れんけん」
「わしはこれからも毎年、クリスマスイブに
この温かい雪を降らそうと思っとる。
そしてこの雪は、陽くんや他のみんなの優しさや思いやりの気持ちが
強くなればなるほど温かくなるんじゃ。
雪が温かくなればなるほど、人の心をもっともっと温めることができる。
人の心を温めれば温めるほど、たくさんの希望が芽吹き、
東北の人たちは生き生きと暮らせるんじゃ」
「じゃあぼく、もっともっと優しくなるよ。
でもなんでかな? サンタさんの言うこと聞いっとったら、
本気で優しくなろうって思ったんじゃ。
なんかすっごいやる気が出てきた」
「ほ~、それはいいことじゃな。陽くん。
それはな、陽くんが自分だけのために優しくなろうとしてないからじゃよ。
わしの話を聞いて、みっちゃんや東北の人たちのためになるから、
もっと優しくなろうと思ったんじゃろう。
陽くん。人はな、自分だけのためだと力が湧いてこないことでも
みんなのためならって思うと、心のあちこちから
どんどん力や勇気が湧いてくるんじゃよ。
みんなのことを思う人は、結局いろんな素晴らしい力が湧いてきて
その人自身の心を潤おすんじゃ。温かい雪が大地を潤すようにな。
そして人のことを思い、人の幸せのために何かをしようとする人は
結局、自分の愛で自分の心を温めることができるようになる。
結局、自分自身も幸せになるんじゃ。
優しい気持ちも
思いやる気持ちも
愛する気持ちも
幸せも
すべて循環するようになっとる。
決して一カ所に留まってはいけない大切なものなんだ。
だから今こそ、みんなが
優しい気持ち
思いやる気持ち
愛する気持ち
幸せになってほしいという気持ちを
東北の人たちに送り続けないといけないんだ。
わかったかい、陽くん」
「うん、ぼく やるよ」
「そうかい、陽くんは本当に優しいねぇ。
じゃあ、わしはまた来年も来るからな。ぐっすりとお休み」
「うん、サンタさん ありがとう。また来年ね」
~そしてクリスマスの日の朝~
「え~なんで? お母さん、ぼくの大好きな本がベッドの横に置いてあったよ」