倉庫のすみっこで、
ほんと落ち込むみたいにして、
柏木さんが、
木箱かなんかに座ってたの。

あ、やばいとこ見ちゃったって思って、
わたしすぐ、見てたとこ
ばれないように逃げようと思ったんだけど、
なんか見つかっちゃって、
呼び止められたんだ。

「見てたろ?」
いきなりそう言われた。
わたし首をいっぱい横に振って、
「え、なにがですか?」
「俺が落ちこんでんの、
今そこで見てたろって、」
「え…、落ち込んでるんですか?
どうかしたんですか?」
なんか馬鹿みたい。
でもわたし、
素知らぬ感じでそう答えてた。
彼は、誰かに話
聞いてほしかったんだよね、きっと、
なんかいろいろ話し始めたんだ。
「今日さ、人事会議あったろ、
そこで言われたんだよ、俺さ、
来期もここだってさ、東京戻れないんだ」
「どういう、ことですか?」
わたし、少し圧倒されちゃってたのね、
柏木さんと面と向って
話すの初めてだったし、
なんか、はきはきした感じだしね。
「わかんだろ、またここでやんだよ、
こんなくそ田舎でさ、
見る目ない客ばっかだろ、
売り上げだって大してないしさ、
客質だってわりいのに、
ここじゃスキルなんて上がんないだろう」

それは単純に、
わたしの地元をけなしている言葉だった。
だけどわたし、なんか勘違いしたみたい、
その時はね、
彼が、仕事上手くいかなくて、
自暴自棄になってて、
それがなんだか、
いっつも気丈に見えてた柏木さんからは
全然想像つかなかったから、
なんだろう、どうしてだろう、
なんだか可愛そうにも思えちゃって、

「だいたいさ、ここの連中、
ビジネス全然わかってねえし、
ここにいたら、俺も一緒に落ちぶれるだけだし」

この田舎にいたら、落ちぶれる、
そして、ここの人たちは、落ちぶれている、

それは、
わたしが聞いちゃいけない言葉だったと思う。
それなのに、わたし、
「研修みたいなものじゃないんですか」
「これが?」
彼は箱から立ち上がり、わたしをじっと見つめてた。
わたしは、
「はい、地方で少し量販直接やって、
それで東京戻るって」
「誰が、誰が言ってた?」
「いえ」
わたしは彼が近づいてくるから、
一歩後ろに引きながら、
「え、みんな、そう言ってます。
そういう人、そうやって本社戻った人、
結構いるって聞きましたよ、
だから柏木さんも、きっとそうなんだって、
わたしは、思って」
「ふんっ」

彼は息を強く吐くと、
そのまま背中向けてどっか行っちゃった。

なんだか、
これだからねえ、
東京から来たすごい人、
みたいに思ってた人と、
最初にちゃんと喋ったのが、
これだからね。

 

プロジェクト578日目。

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2020/2/7 578日目
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■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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kindleでは「セノイピープル」「バスストップ」「悲しきウスバカゲロウ」が読めます→
https://www.amazon.co.jp/s/ref=dp_byline_sr_ebooks_1?ie=UTF8&text=%E8%8A%B1%E6%9D%91%E5%81%A5%E4%B8%80&search-alias=digital-text&field-author=%E8%8A%B1%E6%9D%91%E5%81%A5%E4%B8%80&sort=relevancerank

『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

わたしが高崎に出て2年目の春、
柏木さんって人が、
東京から来たんだ。

男の人。
東京ではバリバリ仕事してたんだけど、
突然地方に飛ばされたとか言ってて、
わたしね、会社の上の方のことは、
よくわかんなかったんだけど、
入社して何年かは、
地方で販売に
まわったりするって聞いてたから、
柏木さんも、別に悪いことしたとこじゃなくて、
群馬まで来てたんだと思うんだ。

すっごいかっこいい人だった。
スマートっていうのかなあ、
顔なんかシュッとしてて、
いかにも東京の人って感じ。
わたしは、最初はね、
好意とかもったんじゃないけど、
ま、遠くの人、
みたいに見てただけなんだけど。
あんまり話すこともなかったし、
量販店のね、他の社員とは、
なんかあんまり仲もよくなくって。

いつも東京じゃこんなやり方しない、
みたいなこと言ってたりしたから、
地元採用のみんなからは、
よく見られてなかったんじゃないかな。

毎週、東京帰ってたと思う。
東京に彼女残してきてるとか、
そんなふうに聞いてたけど、
まあ、こっちじゃ売ってないような、
高そうなスーツ着てたし、
美容院もね、毎週行くって。
東京の、青山とか言ってたかな、
そこの美容院ね、
そこで髪切ってもらうんだって。

ほんとにわたしね、
最初は、、、

(ここで、ミクちゃんは、
少しためらうように言葉を選んで、)

最初、ていうか、
結局別に好意とか、
そんなもの、わたし、なかった。

ただ、東京から来て、
東京をそのまんま持ってきたような
そんな人だったからね、
ここ、田舎でしょ、

(ミクちゃんはモーテルの
薄暗い室内を見渡すようにしました。
ここはあくまで室内なんですが、
彼女は一面の高原野菜畑に囲まれた、
この嬬恋を言いたいのです)

だからこんなど田舎で
生まれ育ったわたしからしたら、
そりゃあまあ、
すごい人みたいに見えちゃってただけだろうね。

でね、
1年経った頃だったかな、
わたしね、見ちゃったんだ。
バックヤードってわかる?
量販店の倉庫ね、
そこのすみっこで、
柏木さんが、
うなだれるみたいにして座ってたんだ。
 

プロジェクト577日目。

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2020/2/6 577日目
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

「高崎、2年くらいいたかなあ、
続けてたら、そのうちね、
東京も行こうかなって思ったりしてたんだ」
ミクちゃんは、
心なしかまた距離を縮めて、
順平のそばでそう口を開きました。

彼は、吸い続けていた煙草にも飽きて、
それを灰皿でもみけすと、
腕を枕にそのままベッドに
仰向けになりました。

なんだか座っていると、
緊張感ばかりが続く気がしたからです。

それで、
ミクちゃんのほっそりとした背中を見ながら、
話を聞いていたのです。
肩甲骨がくっきり見えるほど、
彼女はひどくやせていると思いながら。

「わたしね、
高校まで成績良かったんだよ、
ほんとだよ、だからね、
大学なんてことも考えたりしたんだけどね、
家、あんまりお金ないから、
それで就職にしたんだけど、
それもすぐ決まって、
高崎のけっこう大きな量販店で、
そこの営業事務みたいな仕事。
最初は結構よかったんだよ、
仕事覚えて、
しかも都会(高崎のことです)だし、
実家もそう遠くないから、
土日は帰ってたりして、
それもなくなって、
大分生活も慣れてたんだけどね。
なんか狂ったなあ、て思うことがあって、」

順平は相変わらずベッドにあおむけになりながら、
彼女の後姿を見続けていました。

「狂うって」
順平は、そう言葉を挟んでいました。
なんとなく、この場に、
あまり似つかわしくないというか、
すぐには受け入れられない感覚が
あったからです。
「でも…、」
ミクちゃんは静かな笑い声をたてて、
「だって、それでわたし、」
少しの沈黙、
順平は唾をごくりと飲み込みました。
「わたし…、それでなあんか、
ちょっと人生変わっちゃったからさ」
「そうなんだ」

まだ、なにも聞いていません。
しかし、20代の若い美空に、
人生を狂わせる何かがあるとして、
なぜ彼女は、
今こうしてモーテルの一室で、
まだ会って間もない自分と
2人きりでいるのか、
そう考えると、
順平は背筋にぞくっとしたものを感じて、
ベッドから上半身を起しました。

「わたし、その職場でね、
けっこう頑張って働いてたし、
そこ、東京に本店のある支店だから、
いずれはさあ、
東京にも行きたいなって思ったりして、
なんか希望聞くみたいのあったのね、
絶対叶うとかじゃないんだけど、
でも、そういうこと、考えたんだあ」
順平は、
もう時計を見なくなっていました。
ただ彼女の声が、
途絶えないように、
息をする音も抑える気分で、
じっとしていました。
 

プロジェクト576日目。

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2020/2/5 576日目
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

 
 
国道沿いのモーテルの一室、
3曲立て続けに唄ったミクちゃんは、
「あ~、つかれたあ」
と言って、
ようやく唄うのをやめにしました。
ふいに静かになった部屋、
はるか遠くに、
峠道を行く
トラックのタイヤが擦れる音が聞こえました。

「わたしね、順平くん、
ちょっと気になってて」
多分、ミクちゃんは、
そう言ったんです。
だけれど順平は、
その言葉がよく聞き取れず、
「え?なに?」
そう聞きなおしていました。
「やだあ」
ミクちゃんは照れて俯くと、
そのこと、
それきり口にせず、
「お酒好き?」
順平が、一気にグラスを干したからです。
こんな薄いお酒じゃ、
酔いようもないんですが、
「別に、そんな好きじゃない」
「そう…、ね、いつまでこっちいるの?」
順平はまたちらっと時計を見ました。
このままここで寝て、
3時近くに出て行けば、間に合うだろう、
そんなこと思いながら、
「一応、夏の終わりまでなんだ、」
「へえ、東京?」
「ふっ、そうだよ」
なんで軽く笑ったかといえば、
散々東京から来たって、
言っていた気がしたからです。
「東京、家あるの?」
「そりゃまあね…、」
順平の実家は、駒込です。
それから彼は、
僕やサトちゃんとのシェアルーム生活について、
かいつまんで話をしました。

「へえ、でもなんでえ?
3人とも東京にお家あるんでしょ?」
「そりゃさ、二十歳過ぎたら、
家にずっといんのもさ、もう大人なんだし、
いつまでも親のすねかじってたって」
順平がそう言いかけてる途中で、
ミクちゃんは、
「わたし、実家だよ」
「あ、ごめん…、」
「でも、わたしも、一回出たことあるけど」
「そうなんだ」

2人はベッドに並んで座ったまま、
静かで、薄暗い部屋で話し続けていました。

「わたしね、東京じゃないけどね、
東京は、もっとすごそうだけど…、」
「どこ?」
「うん、高崎だけどね、」
嬬恋から高崎は、
だいたい30キロくらいでしょうか、
群馬県最大の都市です。
「一応ね、高校出てから、
一回まともに就職してんだあわたし、」
彼女はこの時は、
パートタイムで、
ファミレスの店員をやっていました。
「そうなんだ、会社員?」
「ううん」
ミクちゃんは長い髪を揺らして首を振ると、
「なんか、量販店?みたいなとこ、
そこの事務」
言いたくなさそうな、
そんな口ぶりでしたが、
どうしたわけか、
そこから彼女は、
高崎に出ていたときのことを
話し始めていました。
 
プロジェクト575日目。

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2020/2/4 575日目
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html
峠道にさしかかる前に、
ガソリンスタンドと並んで、
ど派手なネオン看板のモーテルはありました。
そこに、2人は入っていったんです。

ミクちゃんは、
カラオケ2人きりでできるとこ行こう、
そう言っていました。
たしかにここでは、
カラオケの設備もあって、
ベッドに座って、
歌唄うことだってできます。

ミクちゃんは、
こないだみんなでいた時は、
一曲だって唄ってなかったんですが、
今、気持ち良さそうに、
目の前で最近の楽曲を歌っています。

それを順平は見ながら、
彼女の思惑を
推し量れずにいました。
一体なにが、
彼女と彼をここに導いたのか、

それは多分にミクちゃんからの
誘導であった気もするし、
順平に、その気がなかったわけでもない、
しかし、
世の中には、
少なくとも人間の世界では、
ある年齢に達すると、
社会性を身につけた上で
享楽するルールがある、
つまり、
彼に残された時間は、、、

そこで順平は、ベッドにある
センスのない
うす緑色した時計に目をやりました。
もう、22時を過ぎていました。

つまり、だから、
彼に課せられた社会性は、
この夜が明ける頃には、
キャベツ畑に土まみれになることであって、
それを遵守しないことは、
社会から、
少しだけ脱輪することになるのです。

「ねえ、唄わないの~?」
店員が一度だけやってきて、
薄いサワーを置いていきました。
順平はそれに口をつけ、
ぐいっと飲んでから、
「俺はいいや」
「え~、それじゃなにしにきたの」
「なにしにって…」

彼はご機嫌にマイクを握る、
1人の女性を見つめていました。
暗いオレンジ色した照明が、
彼女の艶やかな金髪に、
いくつもの光の線を与えていました。
すうっとした顔の輪郭、
切れ長で、
どちらかといえば細い目つき、
その瞳をのぞきこんで、
「わかんないや」
順平は、やっと、そう答えました。
その時、
距離のあった彼女が、
ベッドのふちをすべるようにして、
近づいてきました。
ミクちゃんは上目づかいになって、
「つまんない?」
順平は口をへの字に曲げながら、
小刻みに首を横に振りました。
 

プロジェクト574日目。

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2020/2/3 574日目
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

それから、2人は、
ごく楽しく会話をしながら、
安っぽい寿司をほおばりました。
無論、寿司の味なんて
わからないでしょうから、
順平にとっては、久しぶりに、
ずいぶんご馳走だったようです。

店を出て、またバイクにまたがると、
そこで煙草を吹かし始めました。
ミクちゃんは煙草は吸わないようで、
となりに立って、
順平をただじっと見つめていました。

「ねえ、どこ行く?」
「え?」
順平がなぜ聞き返したかというと、
もう、9時をまわっていたからです。
そろそろ帰らないと、まずいでしょう。
明日はまた、
日の出とともにキャベツ畑に
向わなきゃならないのです。
「次…」
「次?」
順平はなぜか広々とした
回転寿司屋さんの駐車場を見渡しました。
次もなにも、こんな田舎には、
それほど遊ぶとこなんて
ありそうもないでしょう。
「そういえば、今日って、富田くんたち…、」
順平が言いかけると、
ミクちゃんは、
「知らないよお」
それで、順平は彼女をじっと見ました。
彼女はちょっと黙ってから、
「あたしさ、いっつもあの人たちと
つるんでんじゃないからあ」

あの人たち、て言葉、
なにか疎遠な感じ、
それは、彼らとセットじゃない私、
1人の女、

そういうこと、順平は連想するのです。

「ねえ、いつまでこっちいるの?」
ミクちゃんの声が、
妙に艶っぽく聞こえます。
「こっちって…」
「こっちだよお、つまごい、
キャベツんとこ、
そのうち東京帰っちゃうんでしょ」
「ああ…、まあ、そうだよね」

まだ、夏の真っ盛り、
あと30日はここにいる予定でした。
だけれど、順平は、
なにも答えませんでした。
ふとした視線で、
彼女のラフなTシャツの上の、
こんもりとした胸の膨らみに
目がとまりました。

それかた1時間後です。
田舎の国道沿いによくあるモーテルは、
駐車場が併設されていて、
車を停めると、
そのまま部屋へ入れるようになっています。
その駐車場に、
車ではなく、
バンディッドとピンクのスクーターが、
仲良く並んで停められていました。
 

プロジェクト573日目。

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2020/2/2 573日目
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

「どこ行く?」
順平はバイクに跨ったまま、
前面に現れた
ピンクのスクーターのミクちゃんに言いました。
陽はすっかり暮れています。
遠くの街灯にぼんやりと、
彼女の姿が見えています。
こないだカラオケで会った時と、
化粧が少し違うな、そう思いましたが、
どこがどうとかは、
彼にはよくわかりませんでした。
ただなんとなく、
大勢でいた時と、
雰囲気まで違って見えました。

ミクちゃんは、
「回転寿司する?」
「回転寿司?」
「おすしきらい?
こないだね、新しいとこ出来たんだよ、
少し遠いけど、」
「うん、」
寄宿舎の夕食は食べていないし、
お腹が空いていました。

田舎の夜道は、
あまり街灯がありません。
特に国道に出るまでは、
ほとんど真っ暗で、
自分達のバイクが放つ光だけが便りです。

順平は、ミクちゃんのスクーターの、
小さな赤いテールランプを追って
単車を走らせます。

スクーターはあんまりスピードは出ません。
せいぜい50から60キロくらいでしょうか、
順平はアクセルを
微調整するように握って、
彼女の後についていきました。

5キロくらい走って、
みなで行った市街地も抜け、
国道をひたすら行くと、
ようやくミクちゃんの言う
回転寿司店にたどり着きました。

向かい合いに座って、
ここでようやく、2人は顔を合わせた感じでした。
やっぱり、カラオケの時とは少し雰囲気が違う、
順平は再認識するみたいに、
彼女を見ていました。

彼女のこと、
背が高くて、金髪のロングヘアーで、
膝小僧に蚊にさされた跡があること以外、
まだ何も知らないのです。
それでも、瞬時に恋愛が生まれるとしたら、
こういう時なんでしょうか、

「ここねえ、まぐろ美味しいよ」
ミクちゃんは、
順平のそんな気分とはまるで異なり、
いたって平静な感じで、
さっそくベルトコンベアを流れてくる皿を
いくつかとっていました。
「食べないの?」
「食べるよ」
「お魚きらい?」
順平は首を振って、
「好き、な方、」
「ふふっ」
それで、彼女は手を口にあてて笑うと、
「なんか言い方へん」
「へんかな」
ミクちゃんは、大げさに順平を真似て、
「すき、なほお…、だって」
「そうかな」
順平は口元を曲げ、
「ミクちゃん、いくつ?」
「え~」
なぜか、彼女はテレながら、
「にじゅうに」
「そう…」
2つ下か、そう思いながら、
順平も皿に手を出しました。
 

プロジェクト572日目。

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2020/2/1 572日目
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

その日の、夕方でした。
いつものように軽トラの荷台に揺られて、
寄宿舎へと帰る途中です。
順平は1日中見ていなかった、
携帯電話を開きました。

メールが着ています。
これは、
予期していなかったと言っていい、
本人はそれを
すごく強調して話していましたが、
本当に、全く、
考えてはいなかったのでしょう、
カラオケの時に
それとなくメルアドを交わしていた、
ミクちゃんからメールが入っていました。

夕暮れ時のキャベツ畑を背にして、
荷台にがたがたと揺れながら、
順平は携帯電話の画面に見入りました。

ミクちゃんからのメールは、
今日遊び行かない?
という簡単なものでした。

1人ってことだろうか?
それとも、また昨晩と同じように、
みなで集まるってことなんだろうか、

動悸が激しくなっていきます。
順平は、
高校時代から交際していた彼女と別れて、
この地に来ているのもあります。
久しぶりの胸の高鳴りに、
1日中続いていた眠気も吹き飛んでいました。

彼は、探るように、
今日も?疲れてない?
と、返信してみたのです。
ミクちゃんからのメールはすぐに返って来ました。

わたし、ぜえんぜん疲れてない、
やだ?

いや、やじゃない、

そして、次の彼女からのメールには、
キャベツ山のとこでしょ?
むかえ行くよ、何時がいい?

1人、なのか?
順平は首を振って、
荷台によりかかる仲間たちをさっと一瞥します。

そんなこと聞けない、
でも、多分1人な気がする、

そう思って、時間を返信したのです。

夏の長い陽が、暮れかけています。
キャベツ山と言われるのは、
キャベツ畑のはしっこにある、
ブロッコリーみたいな形をした小山のことです。
そこが、働いている農業主の
敷地の入り口のあたりでした。

約束の時間の5分前、
単車にまたがり、
順平は道の先を凝視していました。

ヘッドライトの灯りが、
サーっと走り抜けていきます。
軽いエンジン音とともに、
ピンクのスクーターが現れました。
順平は周囲を窺います。
この時間、
出歩いている人はいないみたいです。
スクーターは、たった1台きりです。

彼女は半ヘルをとると、
長い金髪を風になびかせ、
「ごめん、待ったあ?」
順平は、
「いや」
そう、乾いた声で答えました。
 

プロジェクト571日目。

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2020/1/31 571日目
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

キャベツ畑が広がっています。
しめった軍手をして、
額の汗を拭いながら、
順平は晴れた空を見上げました。
「なんか腰悪くしそうじゃね」
となりの畝でかがんで働いていた同僚が、
立ち上がって伸びをする順平に言いました。

今さらだろう、
毎日こんな格好してたら、
腰おかしくするに決まってる、

順平はそう思いましたが、
「まあ、腰だけじゃないけどね」
同僚も立ち上がり、
一緒に伸びをして、
「どこよ」
「どこって、」
順平は彼を見ながら、
「全部じゃね」
「ははっ、そりゃそうだ」

2人で、力ない笑いを交わして、
また、作業に戻りました。

順平は、
ふとこのアルバイトの、
雑誌に出ていた
募集広告を思い出していました。

自然を満喫、充実した時間を過ごしてください、
みたいなこと、
書かれていました。

たしかにここには、
自然はそこら中にある、
だけれど、都会人というのは、
自然から逃げてきて、
土面をコンクリートで覆って、
なるべく自然に曝されない住居を作って、
人間だけで生きるような
そういう遠大な思想の元に、
生息しているじゃないでしょうか、

そんな環境で育った僕らが、
たまに聞きかじるように自然を堪能して、
おいしい空気だね、て、
そんな刹那的な、
キャンプみたいな、
それだけで済むことなのに、

ここは、
そんなものじゃない、
少なくとも、
このキャベツ畑は、
僕らに自然を伝え、
原始時代に、
ただ生きるために生きた人類のように、
人間が無為でも生きられるように、
そう馴らそうとしている、
馴らされたものだけが、
ここでは生き残る、

順平は何だか腹立たしさを覚えながら、
また、黙々と軍手をした手で
キャベツをつかみにかかります。

ふと、ミクちゃんの白い足の、
虫刺されの跡をまた思い出しました。
あれも、自然の一部、
いや、
都会にだって蚊くらいいる、
彼はそう思って、
また作業に没頭し始めていました。

ほとんど寝ずに仕事しているのです。
目を閉じると、
すぐにでも眠ってしまいそうでした。
 

プロジェクト570日目。

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2020/1/30 570日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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kindleでは「セノイピープル」「バスストップ」「悲しきウスバカゲロウ」が読めます→
https://www.amazon.co.jp/s/ref=dp_byline_sr_ebooks_1?ie=UTF8&text=%E8%8A%B1%E6%9D%91%E5%81%A5%E4%B8%80&search-alias=digital-text&field-author=%E8%8A%B1%E6%9D%91%E5%81%A5%E4%B8%80&sort=relevancerank

『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

寄宿舎に戻ったのは、
午前2時くらいでした。
順平は薄手のふとんに潜り込んで、
まんじりともせず
天井を見上げていました。
ミクちゃんの膝小僧の、赤い点々が、
頭の中にちらついていました。

そのうち、ようやくうとうとしてきて、
眠りについた、と思ったら、
もう目覚ましのベルが
鳴り始めていました。
朝、4時です。

目を擦りながら起き上がります。
部屋は3畳半の1人部屋、
となりの部屋から、
起き出して着替える
ざわつきが聞こえています。
順平は起した上半身は、
もう1度、ふとんにあずけようとして、
手をついて、やめました。
このままもう1度寝たら、
もう2度と起きれない気がしたからです。

カーテンのない窓の外は、
まだ暗がりでした。
彼は眠い目を瞬きしながら、
外に鳴っている、
おそらくみなを乗せるために待機している
軽トラのエンジン音を聞き取り、
1つ舌打ちして、
作業着に着替えました。

監獄だ、
順平は帰ってから、
その生活をそう言っていました。

本当に、監獄でしょうか、
今の日本に、
監獄以外に監獄なんて、
なかなか現出できるもんじゃない、
僕はそう思うんですが、
ただ黙って
彼の話を聞いていたものです。

現代でもインドでは、
手作業で糞尿を回収する
カーストの底辺の人々がいます。
それに比べたら
夜明けから日暮れまで
キャベツ畑で土まみれになるくらい、
どれほどのことだと言うんでしょうか、
ただ、疑問に思わずにはいられません。

なぜインドでは、
彼らは、その仕事に不満を抱かないのか、
身分制度が、精神まで抑制し、磨耗させ、
もはや抵抗という
概念すらなくさせているとすれば、
人類の築いた社会機構というのは、
人を馴らすためにあるともいえそうです。

だけれど、
この自由主義の日本では、
異を唱えることも、
そして、
簡単に逃げることもできるわけで、
本人によって、ほとんどのことは、
選択される、
それは、贅沢を言わず、
適度な生活を送るというほどでですが。


彼は寝不足のふらついた足取りで歩くと、
いつものように外に出て、
軽トラに手をかけます。
誰もかれも、
夢遊病者のようにゆらゆらやってきて、
次々にトラックの荷台に乗り込んでいきます。

運転手が一度後部にやってきて、
名前を呼んで行きます。
点呼です。
順平は名を呼ばれると、
乾いた声で返事をして、
へりに背中をもたれさせました。
これで、今日一日もしのげそうです。
 

プロジェクト569日目。

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2020/1/29 569日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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kindleでは「セノイピープル」「バスストップ」「悲しきウスバカゲロウ」が読めます→
https://www.amazon.co.jp/s/ref=dp_byline_sr_ebooks_1?ie=UTF8&text=%E8%8A%B1%E6%9D%91%E5%81%A5%E4%B8%80&search-alias=digital-text&field-author=%E8%8A%B1%E6%9D%91%E5%81%A5%E4%B8%80&sort=relevancerank

『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html