順平は、しばらく彼女の話を聞いていて、
ある疑念にかられ、
そればかりを考えていました。

車の中で、
柏木という男に、強引に迫られた、
そうした経験を持つ彼女が、
なんでそんな彼女が、
モーテルの一室に
自分といるのかってことです。

しかし、
それを率直に聞くことなんてできません。
いい方にとれば、
柏木と違い、自分ならよいということか、
いや、
今自分は試されている、
軽はずみな男じゃないってことを、

いやいやしかし、
ミクちゃんがそんな深慮をもって、
自分を試すなんて、
なんのために?

とにかく、順平と、
ミクちゃんの話に出てきた柏木の共通点は、
東京出身で、
この群馬で、
一時的に働いているということだけなんです。

かすかに、ミクちゃんの髪からでしょうか、
シャンプーのような香りが流れていました。
順平は首を小さく振ると、
「そういえば、、、その柏木さんって、
東京戻ったのかね」
「知らないよそんなのお、
わたしやめちゃったからね、」

そりゃそうだよな、
戻ったにしても戻らないにしても、
どうせ柏木は、
どこへ行っても、
すかした感じで人と接して、
プライドとともに生きているんだろう、

順平は、
見たことはないのですが、
スーツを着て颯爽と歩く、
切れ長な目をした男の姿を
想像していました。
自分とは、
似ても似つかない、
東京ったって、
まあ、いろんな生き方もあるから、
それで比較したって
仕方がないんだけれど、
そう考えて、

「いろんな人いるからね、東京も」
「でもあの人は、典型的な東京の人」
ミクちゃんのその返しに、
順平は少し笑いを含んで、
「典型的ってなんだよ、
典型的もなにも、いろんな人いんだから、
そんなのないじゃん」
「ううん」
ミクちゃんは首を振ると、
「あるよそういうの、
こっちの人は純朴なんだから」
「そりゃさ、東京に抱いてる、
こっちの人の印象なんでしょ、
人なんてそんな簡単にカテゴライズできないよ」
「かてごらいず?」
「まあ、分類っていうか、分けれないから、
それに、田舎の人が
純朴っていうのもどうかと」
「純朴だよ、みんな田舎もんって思ってるんだから」
「そんなもんかな…」
群馬だって、県でいえば人口は100万を超えるんです。
それで全員が純朴って、
どういう世界なんだろう、
そもそも田舎ってなんだろう、
順平はよくわからなくて、
また、柏木という男と、
自分の境涯を比較していました。

俺なんかより、よほどマシだろう、

彼はそう思いながら、
まっすぐにこっちを見つめている女の顔に
目を凝らしました。
もはや、照れのようなものはありませんでした。

「でも…、」
彼女は少し間をおいてから、
「順平くんって、東京なのに、
全然違う」
さっきまでの話、全部矛盾させるような言葉でした。
「そうかなあ」
田舎っぽいってことだろうか、
順平はそう思いました。

 

プロジェクト588日目。

 

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2020/2/17 588日目

 

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

 

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話はね、とにかくこうなの。
わたしが、柏木さんと付き合ってたとか、
それで、わたしの方がね、
結構しつこく迫ったとか、
あの人が黙ってればいいだけでしょ、
それなのになんで、
そんなふうになってるのか、
もう、理解できなかったよ。

「そんな…、わたし違う、」
優衣ちゃんの言葉に、
わたしは一生懸命
否定すること言ったんだけど、
なんか噂って怖いよね、
彼女はふうん、そうなんだ、
みたいに聞いてて、
本当のこと知ってるわたしの意見よりも、
みんなが話していることの方が、
人数も多いし、
多分、正しいと思ったんじゃないかな。

わたしそれで気づいたんだ。
同僚とか、みんなの態度がね、
少しだけ、冷ややかになったっていうか、
以前よりも、仲良くできなくなっちゃって。

それから、仕事も、
在庫確認とか、
今までは何人かでやってたんだけど、
元々わたしの仕事だったとかで、
誰も手伝ってくれなくなったり、
なんか、柏木さんが、
そう指示出したらしいんだけどね、

いやだよね、
わたし、恨まれたみたいで、
怖いなって思った。
東京から来た社員の人って、
結局影響力大きいから、
みんなわたしから距離おくようになったんだよね。


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・

モーテルの一室、
順平のとなりで、
ミクちゃんは
30分以上話し続けていました。

枕元の置時計は、
すでに23時近くになっています。
順平の頭には、
あと4時間もしたら
キャベツ畑にいなきゃならないということが、
まだ少し頭にありましたが、
それはすでにぼんやりしていました。

彼は、ミクちゃんに、
「それで、会社やめちゃったの?」
そう聞いていました。
彼女は相変わらず、こちらを見るでもなく、
ただ横顔を俯かせて、
「そりゃそうだよ、やめるよ、
やってられないじゃない、」
「そんなもん?」
ミクちゃんは頭を振り上げ、
順平をじっと見ると、
「男にはわかんないよ、
こういうの、どうしようもないんだから、
わたしに、何にもできないんだか」

順平には、男とか女とかよりも、
この場合、
権力がある方が
一方的に優位であることが問題であって、
優位な方が、私情を挟んだときに、
それを職場の土俵に乗せてくる人間だったら、
もうどうしようもないんだ、
まだ、アルバイトしかしたことがなかった彼ですが、
そういうことを、
なんとなく思っていました。

 

プロジェクト587日目。

 

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2020/2/16 587日目

 

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

 

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それから、
わたしね、、、

(ミクちゃんは、北軽井沢へと
夜中に歩いた話を終えると、
少し、ためらうように、一度黙りました
多分、ここからが、
もっと辛いことだったんでしょうか、
順平はそう思いながら、
息を押し殺して、
彼女が再び口を開くのを待っていました。)

休み終わってね、
また会社行くようになったら、
柏木さんに、会いたくないな、
て思って、
なんか変だよね、
本当は、会いづらいのって、
あっちの方なんじゃないかな、
わたしじゃなくてね、
柏木さんの方が、気まずいよね、ふつう。

でもね、なんかわたし、
すごい気まずいって思っちゃって、
会社で最初にあったとき、
さっと目をそらしちゃった。

そしたら、みんないるとこでね、
「木下さん、長期休みおつかれさま、
仕事溜まっちゃってるよ、
在庫のチェック、ほっぽらかしていかないでよ」
みんながこっち見て、
わたし顔真っ赤になって、
「すみません、」
って言ったんだけど、
なんかおかしいよね。

それから、
あからさまに、
今まであまり接してなかった女子とね、
柏木さん話してたりしてた。
なんかそれ、
わたしへの当て付けに思えて、
最初は考えすぎかなって
そう考えたんだけど、
あの人、わたしが来ると、
女子と喋りながら、
ちらっとこっち見て、
にやって笑ったりしてたから、
すごく、やだったんだ。

そんな時だった。
わたし鈍感だから、最初は、
全然気づかなかった。
なんか同僚の人たちの態度がね、
ちょっと変なんだよね、
一緒に笑わないっていうのかな、
わたしが来たら、会話とまったり。

それでね、
一番仲良かった優衣ちゃんって子が、
ある時、教えてくれたんだ。
それも、教えてくれたっていうか、
なんか、わたしを探る感じでね、
休憩室で2人だったんだけど、
「ミクちゃん、柏木さんのことなんか知ってる?」
「…」
その頃は、もう柏木さんと話すこともなかったけど、
わたし、少し驚いてた。
「ミクちゃん、仲良かったじゃない、」
「だれと?」
優衣ちゃんは半笑いして、
「やだ、すごい仲良かったよね、」
「そう…」
「別れたの?」
「え?」
いやな予感しかしなかった。
でもわたし、不安になって、
彼女に言い寄ってた。
「どういうことかな?
わたし、あの人と付き合ったことない」

 

プロジェクト586日目。

 

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2020/2/15 586日目

 

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

 

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嬬恋にやってきた順平が
ミクちゃんとモーテルの一室にいます。
彼女が話す、
前橋での出来事を聞いているのです。

ミクちゃんは柏木という
東京から来た男とドライブに出かけ、
夜の山道で、1人きりになりました。
彼女は朝方まで歩き、
そこで、乳牛を配達していた
地元のおじいさんに出会いました。
話は、そこからです。


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・


車に乗ってからも、
わたしは、しばらくめそめそしていて、
ひゃっくりまで出ちゃって、
ずっと顔伏せたままだった。

送ってやる、て言ったおじいさんは、
そんなわたしのこと、
あんま気にしてないのか、
車に乗ってからは、
何にも言わなくて、
ただ、黙って前向いて、
ハンドルを握っていたんだ。
朝方に、あんなとこぽつんとしてたわたしに、
なんにも理由なんて聞いてこなかった。

だんだん、あたりは明るくなってきた。
さっきわたしが、車から転がり落ちたとこ、
ちょうど駐車場みたいになってるとこだから、
すぐに気づいて、
そこを通るとき、わたしは目を上げて、
窓の外をじっと見ていたの。
もちろん、柏木さんの車が、
そこにいるわけないんだけどね、

そうしたら、
おじいさんが、
「木下さんとこでいいんだろう?」

わたしの家のことね、
わたしは「うん、、」
て小さく頷いた。
それから、
おじいさんのヒゲだらけの横顔を見て、
「わたし、なんにも、わたしね、
悪いことしてない」
そう言ったんだ。
なんでそんなこと言ったのか、
自分でもよくわかんないんだけどね、
夜が明けたら、
なんだか気分っていうのか、
さっきあったこと、思い出すと、
わたしは、精一杯、
自分なりにやったんだ、て考えちゃったから。

おじいさんは、しばらく黙ってから、
「ああ、わかるよ」って答えた。
「なにが…、なにがわかるんですか?」
そりゃそうだよね、わたし、
おじいさんに何にも話してないのに。
「ははっ、ま…、わからんがな、
俺はぁ、何にも知らないけどな、
でもまあ、わかるよ」
「わかりますか?」
「ああ」
おじいさんは
口数が少ない人なんだよね、
それでまた黙ると、
あとはもう、家まで一言も口をきかなかった。

―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・

熱心な読者で、
すでに『灯台サム』を読んだことがあれば、
もうそろそろお気づきでしょうか?

この老人は、
あのサムの原型のにおいがしていますね。
無骨で、得たいが知れなくて、
どこかに奥深い思慮がありそうで、
そういう、質朴な雰囲気のある老人、
僕の中にあった、
灯台に住み着いた1人の老人の陰影は、
こうした会話の中に浮かび上がっていたのかもしれません。

そして、ミクちゃんのこのエピソードは、
まさに『灯台サム』に登場する
マキのエピソードとそっくりです。

僕が言いたかったのは、
こうして小説は生まれるってことです。
自らの見聞きしたことが、
細流から、
やがて小説という大きな流れに重なって、
そして、さまざまな人々の心情が動いていく、
そういうものな気がしています。

さて、このシーンもだいぶ長く書いてきました。
明日もモーテルの一室が続きます。
 
プロジェクト585日目。

 

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2020/2/14 585日目

 

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

 

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途方にくれちゃうよね、
でも逃げる時、
ちゃんとバッグも持ってたから、
お財布も携帯もあるしね、
なんとかなるよね、
どうしようかな、翌日ね、
会社お休みとってたから、
別にいいんだけど、

足も痛いし、
怪我だけじゃなくて、
疲れちゃって痛いから、

そうしたら、向こうから、
初めて対向車が来たんだ。

まだ朝方で暗いから、
ヘッドライトつけてて、
わたし眩しくて、目閉じて、
その場に立ち竦んだ。
白い軽トラみたいな車だった。
ガシャガシャ音立ててたから、
荷台に、
なんかいっぱい物積んでるみたいだった。

その車ね、
わたしの前で停まったんだ。

今思ったら、そりゃそうだよね、
変だなって思うよね、
若い女子がさ、ふらふらして、
こんな山道歩いてたんだから、
しかも、まだ早朝でしょ、
ランニングする格好でもないし、

それで、車がよってきて、
にょきって、運転席から、
おじいさんが顔出したの。

「どうした?大丈夫か?」
白髪頭のおじいさん、
どっかで見たことある人。
あっちも気づいて、
わたしをじっと見てた。
わたしね、無意識に顔を俯かせたんだけど、
おじいさんは、
「あんた、木下さんとこの子かね、
どうしたんだい、こんな時間に」
そう言われて、わたし頷いた。

地元の人だったの。
小さな牧場やってる人。
もう結構いい年なんだけど、
子どもとか、いなくて、
東京出ちゃったとかで、
おばあちゃん見たことなかったけど、
1人でね、牛飼ってて、
多分この日も、
軽井沢の方に、
牛乳配りに行ってたんだと思う。

おじいさんは、運転席から出てくると、
うなだれてたわたしの顔を覗き込んで、
「一体どうしたんだ?」

わたし、あんなことあった後でしょ、
じいんと来て、
鼻がむずむずしたと思ったら、
また泣き出しちゃってたんだ。
そうしたら、
もう涙が全然止まんなくって、
なんか言いたいんだけど、
声になんないっていうのかな、
柏木さんのことなんて、
そりゃ言えないけど、
それでも、何かって思ったんだけど、
何も、伝えられなかった。

おじいさん、
最初目真ん丸くして、
驚いた顔してたけど、
すぐに、
「乗りなさい、送ったげるから」
そう言ってくれて、
わたし、軽トラに乗せてもらったんだ。

 

プロジェクト584日目。

 

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2020/2/13 584日目

 

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

 

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わたし車から転がり落ちても、
すぐに立ち上がったのね、
「な…!、おい、」
柏木さんは、
なにかよくわかんない言葉叫んでた。
戻ってこいとか、
そっち行ってどうすんだとか、
だけどわたし、かまわず走り出したんだ。
車進んでた方、帰り道とは、
逆方向にね。

いっぱい、あの人喚いてた気がする。
でも走って遠ざかって、
車のライトが見えなくなったら、
声ももう、聞こえなくなってた。

それでもしばらくね、
走ってたよわたし。
ヒールだったんだけど、
かたっぽの方、
ぐらってして折れちゃったから、
もうかたっぽも
アスファルトにぶつけて折ったんだ、
頭いいでしょわたし?

柏木さんの車は、
追いかけてこなかった。
プライド高そうな人だもんね、
追いかけるとかそういうの、
嫌なんじゃないかな、

きっと今までは、
女の子に言い寄られたりしてきたんじゃないかな、
だってカッコいいからね、
好きになっちゃう子、
いっぱいいたんだろうね。
わたしみたいに逃げた子なんて、
これまでいたのかな、

でもね、だからって
わたしが正しいとか正しくないとか、
そんなことじゃないんだけどね、
こういうの、一番辛いよね、
答えっていうか、自分が悪いとしたら、
何が悪いのか、よくわかんなくって、
頭の中がくしゃくしゃな感じ、
これが、一番、辛いよね。

そんなこと考えながら走ってたら、
わたし、いつの間に泣いてた。
夏でしょ、
でも朝方はちょっと寒いから、
それで、寒くて
涙出てんのかと思ったんだけど、
次から次に、涙止まんなくなって、
鼻水も出ちゃうから、
息苦しくなって、
それで、やっとわたし立ち止まって、
あとは、ただとぼとぼ歩いたんだ。

もうどんだけ歩いたかわかんないくらい、
ずっと暗いんだよ、街灯、ほとんどないからね。
月出てたのね、満月っぽい丸い月。
影ができるくらいの明るい月。
それだけ、その明かりだけで、
人も車も全然通らない山道をね、
ずっと歩いてた。
だんだん下り坂になってきて、
一回、立ち止まって、しゃがんでみた。

それでやっと気づいたんだけど、
膝んとこ、青くなってて、
血も少し出てた。
車から転げ落ちたときにやったんだよね、
それ見たら急に痛く感じちゃって、
結構強く打ったんだよね、
鈍痛っていうの、
なんか中の方が痛いんだよね。

それでまたわたし、
なんだか泣けてきて、
誰もいないから、道端で、
ちょっとだけ声だして泣いてた。

それから、また歩いて、
ずっと高い並木が続いてる道抜けたら、
平坦になってきて、
地元の方じゃなくて、
きたかる(北軽井沢)の方に歩いてたんだけど、
家とか建物見えてきて、
もう、空が黒くなくなってて、
すうっとカーテンが上がってくみたいに、
薄い青色した空になってた。

朝になっちゃったんだ、て、
わたし思った。
 
プロジェクト583日目。

 

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2020/2/12 583日目

 

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

 

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もう気づいた時には無理、
無理だったよ、
わたしが警戒心ないとかじゃなくてね、
咄嗟だったんだから、
逃げられなくなっちゃってた。
あの人、
結構大柄な体格してるから、
助手席に座ってたわたしに、
ぐわってね、
覆いかぶさってきてたんだ。

「今日はなんできたんだよ、
誘ったら断ったらよかったろ」
柏木さんの言葉、すごい低音で、
それね、今でも思い出すと、
鳥肌立っちゃうくらいね、
体の奥から、
震えるように怖かった。

だからね、
最初、わたしは体動かなくなっちゃって、
硬直したみたいになって、
荒い息づかいが、
オデコとか、ほっぺたに
ふうふう当たるの、
目をぎゅっと閉じてみた。
そうしてたら、嵐が過ぎ去るみたいに、
どこかへ行ってしまう、
そんなこと、ないのにね。
馬鹿だよねわたし、
自分で撒いた種なんだよね、
きっとこれ。

でも、多分、
これってほんのちょっとの時間でしょ、
数秒とかでしょ、
なのにわたし、
いろんなこと考えちゃったんだ。

なんで今日、
この人の誘いに乗ったのかなって、

少しは、やっぱ気があったのかな、
それは、気があるっていうのは、
東京から来た、都会っぽくて、
仕事が出来るとか、
シュッとしてて、地元の人と、
なんか違う、いつもおしゃれしてて、

そういう部分なのかな、
でも、、、、
今、この瞬間はね、
わたしの体が、
全身でそれを拒んでるわけでしょ、
だから、これが答え、

ごつごつした手が、
わたしのTシャツの上から、
胸のあたりね、

(ミクちゃんは、
自分の胸に両手をあてた気がしました。
しかし、順平に背を向けているので、
それはよくわからなかったんですが)

その力、強くなって、
わたし、小さな声、
だけど一生懸命、
「いたい…」
て、声出して、
左手を伸ばして、
ドアの鍵をあけたの、
それで、勢いよく握手をひっぱった。

ドアがバアンってひらいた。
わたし、もがくようにして、
男の体の下から這い出すと、
そのまま、地面に転がり落ちたんだ。
 
プロジェクト582日目。

 

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2020/2/11 582日目

 

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

 

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人類は社会性の中に
獣性を宿しているというのは、
まあ、普通の話です。

しかし、そもそも獣性はあって、
それは自然界で生きながらえてきた、
ごく当たり前のことで、
その上に、
集団生活や生産性、
それから科学を生み出すために
社会性を身につけて行った、
というのがタチの悪い話なわけで。
獣性は、社会性に包まれている、
というような感じでしょうか。

つまり、
人は本気では、
獣性を否定できない、

なぜなら、
誰もがそれをもっていて、
もしかしたら、
今着ている服を全部ひっぺがして、
未開のジャングルか山奥に放り出して、
それで、
何年も行き続けてみたら、
人間は太古の昔のように、
言葉を忘れた、
ただ獣性しか持たない、
ただの生き物に戻るかもしれない。

僕はなにも、
力でまさる男の性というものが、
それで女の性を屈服させることを
肯定しているわけじゃありません。

さすがに社会性を身につけて、
これだけの時間を過ごした人類は、
理性という名の制御心や、
心情を持っていて、
それは板についていて、
いろんなことを抑制したり、
コントロールできるはずだからです。

世に見る性犯罪や暴力といった事件は、
その一端を破ってしまった、
それでも、人、
に過ぎないのですが…。

さて、話を戻しましょう、
順平はミクちゃんとモーテルの一室にいて、
ベッドに座りながら、
彼女の話を聞いているのです。

ミクちゃんは何度か
横にいる順平に振り返りながらも、
あいかわらず、
ただ部屋の隅の暗がりを見つめるようにして、
話を続けました。

―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・

もう外は真っ暗だからね、
街灯もあんまりないでしょ、
ずっと木がわきに続いている一本道で、
ふいにね、柏木さんが、車を停めたのね。
ちょっとへこんだ、駐車場みたいなとこだった。

わたし、怖くなって、
「どうしたんですか?」
サイドブレーキをギギッて引き音、
エンジンが止まった。
「俺とは、もうあんま行きたくないかな?」
「いえ、そんなつもりじゃないんです」
「じゃあ、どういうつもり?」
「なにがですか?」
わたし、シートベルトを
意識してはずしてたのね、
そしたら、もう、
彼の顔がすごい近くにあって、
「なにがじゃないだろ?
あんま乗り気じゃないみたいなこと言ってさ」
「乗り気?ですか?」
わたしは精一杯窓側に体を寄せたんだけど、
彼の体がぐいっと近づいてくるの。
「だったら最初から誘いのんなよ、なあ」
柏木さんの言葉、
乾いた空虚な声色だった。

 

プロジェクト581日目。

 

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2020/2/10 581日目

 

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

 

https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html
 

 

ドライブ行ったのね、
まあ…、どうってことない、
ふつうのね、軽井沢の方、
行っただけで…、

(ミクちゃんはここで少し話すのをとめて、
じっと天井というか、
部屋の壁の方を見つめていました。
なにかを、思い出していたんでしょうか
彼女は柏木とのドライブを
初夏のことだと言っていました。
新緑が萌えるいい季節だったと思うのです。
でも、彼女にとって、
そんなことどうでもよくて、
おそらく、
そのドライブの光景なんでしょうか、
それを思い出していたんです。
彼女は細かな過程については、
特になにも語りはしませんでしたが、
きっとそうなんでしょう、
そうして、夜になるまでの間、
どういうふうに心が流れていったのか、
ただ自分の中だけで、
噛み締めていたに違いありません)

夜になったのね、
きたかる(北軽井沢周辺のことです)からの帰り道、
もう暗くなってて、
山ろくの山道抜けて、
あとは嬬恋の方向へ
まっすぐな道になったんだけど、
対向車も、ほとんど来ないくらいのとこね。

「家、送ってくよ、」
柏木さんはそう言ってくれて、
でもなんかちょっと、
口数が少なくなってて、
なんか車って、すっごい密室でしょ、
息する音も聞こえるくらい、
ラジオとか、日中はかけてたんだけど、
この時はなんにもなくて、
なんか、重苦しいなって、
わたし、少し思ったりしてた。

「今日はありがとね、」
彼は、ちょっと声色が違ってた。
そう言うと、ハンドル握りながら、
わたしの方、ちらっと見た。

もう暗いからね、
表情とかはわかんなかったけど、
わたしを、見てた。
なんかね、
いつもキンキンした声した人なの。
はきはきしてるっていうか、
ちょっと意地悪な感じなんだけど、
この時全然声違うんだよね、
優しいっていうか、
おっとりしたふうになってて、
わたしね、
柏木さんでも
こんな声でしゃべることあるんだなって思っちゃった。

「何時まで大丈夫なの?」
送ってくれるって言ってたのに、
彼、またそんなこと言った。
車の時計みたら、
もう8時くらいだったかな、
晩御飯くらいには家帰るって、
お母さんには言ってたから、
だからわたし、
「もうそろそろ帰る時間です」
そう答えたんだよね、
そしたら柏木さん、
「今日楽しかった?」
「はい、やっぱきたかるの方って、
おしゃれだし、楽しいですね」
「そうだね…、」
それで、柏木さんは、
また少し黙ったあとで、
「きたかるも、いいんだけど、
俺と、楽しかった?」
どういう意味だろう、
わたしちょっとだけ考えてから、
「はい、」
「また行く?今度はさ、
もっと遠くの方とかね」
「遠く、ですか?」
「長野の方、蓼科とか、松本とかさ、
夏なったら、すごいよさそうじゃん」
それは、行ってみたいとは、
わたし言ったんだけど、
でも、
「そうですねえ…」
とだけ答えたの。
「あんま行きたくない?」
「あ、そうじゃないです」
「俺と、また行きたくない?」
その言葉の語尾、
いつもの柏木さんの、
キンキンした感じが戻ってた。

 

プロジェクト580日目。

 

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2020/2/9 580日目

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

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柏木さんを、意識したんだ。
それは、恋とかじゃなくてね

(順平の話では、
ミクちゃんはやけに
これを強調したらしいのですが、
ほんとのところ、恋愛なんて、
始まる前はひどく曖昧で、
どちらでもよいのかもしれませんが)

とにかくさ、ちょっと気にしちゃったから
それが行けなかったのかな、
あと、倉庫であんなとこ見て、
話したりしちゃったから。

柏木さんね、なんかあると、
他の人に話さないような、
要は、会社の愚痴とか、
田舎馬鹿にしたような話を、
わたしによくするようになったんだ。

わたし、自分の地元のこと、
馬鹿にされてるのわかってて、
ほのかに嫌な感じしてたんだけど、
それでも、彼が話す時は、
ただ黙って聞いて頷いたりしてた。
なんでだろう…、
嫌な気持ちしてたんだけどなあ、
なにも、言えないっていうか、
なんだか、柏木さん、
孤独で独りよがりで、
だからわざと言ってんじゃないのかな、
とか思ったりしちゃって、
否定とかしないで、
ただ聞いてなくちゃいけない、
そう思うようになってた。

あの倉庫でのことあってから、
もう2ヶ月くらい経ってたかなあ、
誘われたのね、
そう、デート、なのかな、
気晴らしに
休みの日ドライブ行かないかって、言われて、

わたしの勤めてたとこ、
量販店だから、土日とか休みじゃないのね、
シフトでみんな休むんだけど、
わたし、柏木さんに合わせて、
お休みとったんだ。

それで、どこ行くってなって、
浅間山の方か、
軽井沢行くことになったんだ。
わたしのほんと地元、嬬恋から、
浅間山のふもとのとこ通ってって、
北軽井沢の方まで、
彼の運転で出かけたんだ。

行ったの、馬鹿だったって思う?

(ここで、
ずっと背中を向けて話していたミクちゃんは、
ベッドのわきに座る順平に振り返りました。
順平は、何も口にはせず、
ただ、わかんない、みないなこと答えました)

わたし、すごいね、馬鹿だったなって、
今では思ってんだ。
あれがなかったら、
また他に、なんかよくわかんないけど、
なかったらね、
人生変わってたんだろうなって思うから。
 

プロジェクト579日目。

 

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2020/2/8 579日目

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

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