その日の、夕方でした。
いつものように軽トラの荷台に揺られて、
寄宿舎へと帰る途中です。
順平は1日中見ていなかった、
携帯電話を開きました。

メールが着ています。
これは、
予期していなかったと言っていい、
本人はそれを
すごく強調して話していましたが、
本当に、全く、
考えてはいなかったのでしょう、
カラオケの時に
それとなくメルアドを交わしていた、
ミクちゃんからメールが入っていました。

夕暮れ時のキャベツ畑を背にして、
荷台にがたがたと揺れながら、
順平は携帯電話の画面に見入りました。

ミクちゃんからのメールは、
今日遊び行かない?
という簡単なものでした。

1人ってことだろうか?
それとも、また昨晩と同じように、
みなで集まるってことなんだろうか、

動悸が激しくなっていきます。
順平は、
高校時代から交際していた彼女と別れて、
この地に来ているのもあります。
久しぶりの胸の高鳴りに、
1日中続いていた眠気も吹き飛んでいました。

彼は、探るように、
今日も?疲れてない?
と、返信してみたのです。
ミクちゃんからのメールはすぐに返って来ました。

わたし、ぜえんぜん疲れてない、
やだ?

いや、やじゃない、

そして、次の彼女からのメールには、
キャベツ山のとこでしょ?
むかえ行くよ、何時がいい?

1人、なのか?
順平は首を振って、
荷台によりかかる仲間たちをさっと一瞥します。

そんなこと聞けない、
でも、多分1人な気がする、

そう思って、時間を返信したのです。

夏の長い陽が、暮れかけています。
キャベツ山と言われるのは、
キャベツ畑のはしっこにある、
ブロッコリーみたいな形をした小山のことです。
そこが、働いている農業主の
敷地の入り口のあたりでした。

約束の時間の5分前、
単車にまたがり、
順平は道の先を凝視していました。

ヘッドライトの灯りが、
サーっと走り抜けていきます。
軽いエンジン音とともに、
ピンクのスクーターが現れました。
順平は周囲を窺います。
この時間、
出歩いている人はいないみたいです。
スクーターは、たった1台きりです。

彼女は半ヘルをとると、
長い金髪を風になびかせ、
「ごめん、待ったあ?」
順平は、
「いや」
そう、乾いた声で答えました。
 

プロジェクト571日目。

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2020/1/31 571日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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